※ イメージ図(©photoAC)
さくらのレンタルサーバーは、2022年2月16日にSSDの新サーバをリリースしました。前報「さくらのレンタルサーバSSD化の効果」でお知らせしましたが、静的サイトに関する限り新サーバに移行しても速度改善は見込めないようです。
そればかりか、新サーバ移行後に、htmlファイルが消失するという現象が起きています。新サーバに移行した7月23日から10月13日までの間に、2回、同じ現象が発生していますので、新サーバが原因である可能性が高いものと考えます。
また、これはサーバ移行が原因かどうかは不明ですが、サーバー移行後にファイルの一部が消失したファイルが発見されています。
これは、かなり致命的な状況ですので、事実関係のみをレポートします。
【2023年3月追記】なお、2023年1月に、当サイトをエックスサーバーに移転しましたが、同様な問題が発生しています。さくらのレンタルサーバー固有の問題ではないようです。
- 1.レンタルサーバの SSD 化
- (1)さくらのレンタルサーバーのSSD化
- (2)移行の直後に発覚した不具合
- 2.新サーバ移行後の不具合(htmlファイルの消失)
- (1)1回目の事故
- (2)2回目の事故
- 3.最後に
- 4.後日談(さくらのメールサポート)
- 5.追記(再度の事故発生と他社サーバーへの移行)
- 6.追記(エックスサーバで同種問題の発生)
1.レンタルサーバの SSD 化
執筆日時:
一部追記:
(1)さくらのレンタルサーバーのSSD化
※ イメージ図(©photoAC)
さくらのレンタルサーバーは、老舗のレンタルサーバー会社である。歴史があるため技術が古いことは否めず、安価だが遅いというイメージがあった。
旧来の技術を用いた WEB サイトに縛られて新しい技術を取り入れることができなかったのである。他のレンタルサーバー企業が SSD を採用していたにもかかわらず、HDD を用いていた。
ところが、2022年2月16日に SSD の新サーバーをリリースしたのである。しかも、それ以前に契約した場合も、価格を維持したまま新サーバーに移行することができる(※)のだ。
※ さくらのレンタルサーバーは、2018 年4月にも新サーバーを導入しているが、このときは、それ以前に契約した場合は新サーバーに移行できなかった。このようなことは、他のレンタルサーバーにはあまり例がない。これが不満で新サーバーを解約するという事例もあったようだ。
なお、移行のためのツールは、当初、6月初旬に提供されるとされていたが 7月13日に延期され、7月13日になると、翌日には不具合(たぶん申し込みが殺到したため)が発生して 17 日まで使用できなくなり、その後も平日の昼は申し込みが混んでいてなかなか移行できない状況だった。
(2)移行の直後に発覚した不具合
筆者も、早速、申し込んだ。手続きは簡単で、とくに難しいことはない。しかし、移行の直後に不具合が見つかったのだ。
移行のためかどうかは不明だが、移行した直後に、コンテンツの後半がなくなっているページを発見した(※)。ローカルにバックアップデータがあるので、その直後に、すべてのファイルを再アップした。
※ 前報「さくらのレンタルサーバSSD化の効果」でも事実関係のみをお知らせしたが、新サーバの不具合という証拠はない。しかし、サーバー移転の直後に発見されており、その可能性は高いと考えるのが自然である。
2.新サーバ移行後の不具合(htmlファイルの消失)
(1)1回目の事故
※ イメージ図(©photoAC)
最初の事故は、読者の方からの情報で知ることとなった。9月29日に、お2人の読者の方から、メールフォームからのメールと掲示板への投稿で、表示できないページがあるとのご指摘をいただいたのである。
そのとき、ただちにFileZillaで確認したところ、該当するhtmlファイルの容量がゼロになっていた。私のサイトは、掲示板システムを除き、すべてのファイルがローカル HDD にもあるので、ただちにローカルにあるファイルを再びアップ(パブリッシュ)したところ解決した。
その後は、そのようなご指摘をいただくことはなかった。気にはなったが、そのときはレンタルサーバ側の不具合なのか、私の側に原因があるのかは分からなかった。とりあえず様子を見ることとし、さくらのレンタルサーバに連絡することはしなかった。
(2)2回目の事故
※ イメージ図(©photoAC)
ところが、10月13日になって、今度は、私が過去の記事を確認していて、表示できないページを発見したのである。出張先のことなので、ただちに対応することはできず、1日程度、そのままにせざるを得ない状況となった。
筆者がさくらのレンタルサーバと契約したのは 2016 年6月であり、新サーバに移行するまでの6年間、このような事故は経験していない。新サーバに問題があるとしか考えられないのである。
2回の事故のいずれの場合も、ローカルの HDD の html ファイルには不具合はない。したがって、筆者が問題のあるファイルをアップしたとは考えにくい。
なお、私のサイトは、WordPress などの CMS ではなく、htmlファイルとCSSファイルを編集して作成しているいわゆる静的サイトである。このため、すべてのページに新しいアイコンを設定したりプルダウンメニューを修正したりするような場合、すべてのhtmlファイルを同時変換ソフトで修正して、すべてのファイルをアップすることになる。
※ ページ数は、正確に数えたわけではないが、数千ページはあると思う。
そして、2度目の事故の直前に、すべてのページを修正、再アップしていた。1度目の事故の直前にそうしたかどうかは覚えていないが、その頃、すべてのファイルを修正・再アップしたことは事実である。
このことから、さくらのレンタルサーバーの新サーバは、多くのファイルをアップすると、一部のファイルが破損する可能性があると思われるのである。
3.最後に
さくらのレンタルサーバーの新サーバにファイルをアップしたときにファイルが破損する事故は、私のサイトでは、可能性としては3回、確実に2回発生している。
その原因がさくらのレンタルサーバーの新サーバだという証拠がないことは、公平のためにお断りしておく。しかし、状況証拠からは新サーバに問題があるとしか思えないのである(※)。
※ 理論上は、パブリッシュに用いている FilleZilla の不具合の可能性も否定はできない。しかし、筆者はFFFTP が更新を中止した直後に、パブリッシュソフトを FileZilla に切り替えて、その後、数年間 FileZilla を用いている。そして、これまでもすべてのファイルをアップしたことは何度もあるが、このような事故は経験したことがない。
しかも FileZilla は、広範に使用されているソフトだが、不具合を起こしたという話は聞いたことがない。従って、FileZillaに問題があるとは思えないのである。
今回の事故は、さくらのレンタルサーバーに問い合わせをしたいと考えているが、その経緯は、このページでお知らせしたい。
また、当サイトの重要なコンテンツであるコンサルタント試験が落ち着いたら、私のサイトをエックスサーバーに移行したいと思う。
4.後日談(さくらのメールサポート)
さくらのレンタルサーバに10月14日に問合せをしたところ、10月20日にご回答を頂いた。かなり詳細な調査を頂いているので、迅速に回答を頂けたとと思う。
その回答の一部は次のようなもの(引用者において箇条書きとした)である。
【さくらのレンタルサーバーからの回答(抄)】
- 原因(概要)
- FTPでのアップロード中に何らかの原因で通信が途切れ、データの転送が中止されました。これにより、空ファイルのみが残置されたものと考えられます。
- 時系列(2例目のファイル消失)
- (以下、詳細な調査結果があるが省略する)
- 補足
- 明確なデータがあるわけではありませんが、経験上、大量のファイルをFTPでアップロードするといくつかのファイルはアップロードに失敗する場合がございます。
- これは通信環境等の要因が考えられますが、その他にも様々な原因が考えられるため特定は困難です。
- 一般に、大量のファイルをアップロードする際には予めZIP等で圧縮し、1つのファイルとしてサーバにFTPで転送し、サーバ上で展開処理を行う方法が知られています。
- この場合はファイルサイズが小さくなる場合も多いですし、ファイルは1個のため失敗に気づきやすくなりますのでおすすめいたします。
- 今回に関しましては少なくとも、移行後の新サーバのみで発生する問題ではございません。
要は、大量のファイルをアップすると、この種の事故は起こり得るが、原因は新サーバのみにあるわけではないということである。
レンタルサーバーのエンジニアの側に立てば、この回答内容は理解できないわけではない。しかし、顧客である私の立場からは、結果的に、今後も同種の事故の発生は続く(状況は変わらない)ということを宣言されたわけである(※)。
※ 結果的に、本サイトはエックスサーバーに移行した。ただ、「6追記」に示したようにエックスサーバーでも同様な問題が発生したので、これはさくらのレンタルサーバーの問題ではないようである。そのため「予めZIP等で圧縮し、1つのファイルとしてサーバにFTPで転送し、サーバ上で展開処理を行う方法」を採用するのが解決策だろう。詳細は「WEBサイトのhtmlファイルの内容消失」に示してある。
5.追記(再度の事故発生と他社サーバーへの移行)
※ イメージ図(©photoAC)
ところが、その後は多くのファイルをアップしないようにしていたにもかかわらず、再び破損したファイルが発見されたのである。これでは、さすがにさくらのレンタルサーバーをこれ以上使い続けるという気にはならなかった。
その後、サーバー移転の方法について調査し、2023年1月にエックスサーバーに移行した。現時点で、このサイトはエックスサーバー上で動作している。
なお、サーバーを移転した後、さくらのレンタルサーバーに残したサイトのすべてのページにサーバー移転のお知らせを追記した。このため、すべてのページを再びサーバーにアップしたのだが、皮肉なことにこのときはエラーは起きなかったようである。
いずれにせよ、小規模な企業や個人経営の事業者が、あまり更新しない小規模なサイトをアップするのであれば、さくらのレンタルサーバーのコストパフォーマンスが優れていることは否定できない(※1)。小規模で更新頻度が少ないサイトを掲示するのであれば、さくらのレンタルサーバーは十分な性能を有していると思うと最後に追記しておく。
※ もっとも、ドメインを無償にするサーバーもあり、無償対象のドメイン(.com は対象になることが多い)を用いているのなら、さくらのレンタルサーバーよりそれほどコストパフォーマンスは違わないケースもある。
これは、さくらのレンタルサーバーもそう考えているようで、さくらインターネット(株)の谷口氏(※)も、個人で収益化をねらうなら1,500 円/月程度のサーバーの方がお勧めであるとしている。そもそもさくらのレンタルサーバーのスタンダードは、PV 数の多いサイトを運営するには力不足なのだ。
※ 谷口元紀「Webサイト管理のきほん」(技術評論社 2022年)によれば、個人で収益化を行いたい場合は 1,500 円/月程度のサーバーがお勧めだとされている。一方、更新頻度が少なくアクセス数もそこまで多くない中小企業などのサイトなら 100~500 円/月程度のサーバーで十分だという。
6.追記(エックスサーバで同種問題の発生)
2023年3月、新しく移行したエックスサーバで、htmlファイルの内容が消失しているのを、2回、確認した。詳細な事実関係と具体的な解決方法をWEBサイトのhtmlファイルの内容消失に示した。
この不具合はさくらのレンタルサーバー独自のものというわけではなく、SSD のサーバー全般で発生するようだ。いずれにせよ、さくらのレンタルサーバーの HDD の旧サーバーでは発生していなかった問題なので SSD 固有の問題なのか、サーバーの速度改善が産み出した問題なのかもしれない。
近年では、多数の html ファイルをサーバーに同時にアップするということは、ほとんどされなくなっているので問題が顕在化していないのかもしれない。
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