※ イメージ図(©photoAC)
個人や小規模な企業・事務所などで WEB サイトの作成を、外部の制作会社に委託せずに自ら行うことは、実はそれほど難しいことではありません。
自ら WEB サイトを作成すれば、容易に更新ができます。そのため、不特定の顧客へ周知を図りたいことが、突然できたときなどにも WEBで周知できるようになります。また、内容が古くなった情報や画像なども容易に差し替えることができます。このように自らWEBサイトを作成することには大きなメリットがあります。
WEB サイトの作成方法には、さまざまなものがあります。しかし、html や css ファイルを直接入力する方法と、WordPress を用いる方法のどちらかが現実的な選択となります。
このサイトは html ファイルなどを入力する方法で製作しており、結果的には最も良い選択だったと思っています。しかし、実際のサイトは WordPress を用いて作成されているものの方が圧倒的に多いのが現実です。
本稿では、WEB サイトの作成方法のメリットとデメリットを解説しています。
- 1.個人や小規模事業所のWEBサイトの作り方
- (1)html の入力、WordPress 専用ソフト等
- (2)html の入力とWordPressのメリットとデメリット概説
- 2.html の入力
- (1)html の入力のメリット
- (2)html の入力のデメリット
- 3.WordPress
- (1)WordPressのメリット
- (2)WordPressのデメリット
- 4.結局、どちらがお勧めか
1.個人や小規模事業所のWEBサイトの作り方
執筆日時:
(1)html の入力、WordPressの利用、専用ソフトの利用等
ア インターネットにおける情報発信の方法
※ イメージ図(©無料の写真素材「ぱくたそ」 )
現在、個人がインターネットで情報を発信しようと思えば、SNS や各種のブログ提供サービスを利用するなど、様ざまな方法がある。それらは、特に知識がなくてもすぐに利用できるというメリットがあり、それぞれの特性を活かすことにより、有効な情報発信手段として用いることができる。
しかし、それらにアップした情報は、あくまでもSNSの提供業者やブログ提供業者の管理下で発信されるものである(※)。また、苦労して執筆した情報も、時間が経つと他の情報に埋もれて利用しにくくなる。その一方で、完全に消滅するわけではないため、本人も忘れていた情報で、突然、炎上の対象となることもある。
※ SNS では管理者の判断によって情報が削除されたりアカウントそのものが停止されることがある。ブログ提供業者ではそのリスクは低いが、ブログ提供業者が業務を停止してしまうと、情報を事前にエクスポートできない限り情報がなくなってしまう。
個人や企業が自由に情報を発信し、その情報を自分のものとして管理するためには、自ら管理できるサーバに WEB サイトを公開しなければならない。サーバは、自ら設置することもできないわけではないが、現実にはレンタルサーバを借りることが一般的である(※)。
※ 大企業であれば、VPS やクラウドコンピューティング、専用サーバを借りるという方法もあるが、個人や小規模な企業では現実的ではない。
イ レンタルサーバで WEB サイトを構築する方法
(ア)静的サイトと動的サイト
WEB サイトは基本的に html ファイルで構成されている。この html ファイルを人がそのままの形でレンタルサーバに書き込むか、 システムが閲覧者の要求があるたびにサーバにファイルを書き込むかで、WEB サイトは、静的サイトと動的サイトに分類できる。この違いを、厳密さを無視してごく簡単に説明すれば、次のようになる。
サイト種類 | html の作成方法 | 具体的な例 |
---|---|---|
静的サイト |
|
|
動的サイト |
|
|
以下、動的サイトと静的サイトについて概説した後に、html ファイル等の直接入力と WordPress のメリットデメリットを解説する。
(イ)静的サイト
① 静的サイトとは動きのないサイトという意味ではない
※ イメージ図(©videoAC)
静的サイトとは「動きのないサイト」という意味ではない。当サイトも静的サイトであるが、現在の html の標準である HTML Living Standard と css level3 の機能だけでも、サイトに動きを持たせることは可能である。
さらに、JavaScript を用いることで、多様な動きを実現することが可能である。また、本項のイメージ図として動画ファイルを使用しているが、gif ファイルや動画ファイルを埋め込めば動きが生じることは当然である。
② 静的サイトの作成方法
静的サイトを作成するための html ファイルを作成する方法には、Visual Studio Code などの適当なエディタで html ファイルをそのまま書き込む方法と、Dreamweaver などのホームページ作成ソフトで Word のような間隔で作成する方法がある。
html ファイルをエディタで記述するには html の仕組みを知らないとできない。一方、ホームページ作成ソフトでは html の知識がなくても html ファイルを感覚的に作成できるが、ファイルの中はホームページ作成ソフトが勝手に作ってしまうので、コードがきわめて見づらくなる。
少なくともプロはホームページ作成ソフトなどは使わないし、ホームページ作成ソフトを使うくらいなら、動的サイトにする方がよい。ホームページ作成ソフトの使用は、学習する時間が取れない場合には便利ではあるが、筆者としてはお勧めしない。
なお、近年では、クラウドベースのノーコードツールによる WEB サイト作成の方法もあるが、一般にランニングコストがかさむことと、デザインの自由度も低く、大規模なサイトの作成には向かないものもある。小規模なサイトの構築には便利ではあるが、これもお勧めはしない。
(ウ)動的サイト
動的サイトの代表的なものに WordPressがある。多くのサイトで採用されており、ほとんどのレンタルサーバも WordPress を用いてブログを作成することを前提に様ざまなサービスを提供している(※)。
※ 極端に安価なサーバでは、WordPress に対応していないものもある。
また、無償で使え、解説書やネット上の解説サイトも多いこともあり、個人や小規模な事務所等で新たに WEB サイトを製作するならお勧めの方法である。
なお、ホームページ製作会社に依頼する場合でも、WordPress での作成を勧めてくる場合があるが、せっかく専門会社に依頼するのであれば WordPress は避けるべきだと思う。自分で製作するのでない限りメリットはない。
また、動的サイトとしてもうひとつの選択肢は MovableType である。このシステムは、閲覧者からリクエストがあってから html ファイルをサーバに作成するのではなく、あらかじめ html ファイルをサーバに作成しておく(※)。そのため、WordPress に比して閲覧速度が速いというメリットがある。
※ 当サイトの掲示板も Perl という言語を用いて CMS のような動作をするが、一部の掲示板を除き、予め html をサーバに作成しておくので閲覧速度が速い。
ただ、有償であり、また情報も少ないというデメリットがあり、WordPress に比較するとシェアは少ない。わが国では、大規模な企業を中心に採用されている印象がある。
(2)html の入力と WordPress のメリットとデメリット概説
html の入力による方法と WordPress を用いる方法のメリットとデメリットをまとめると、次表のようになる。
製作方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
html 直打 |
|
|
WordPress |
|
|
以下、これらについて詳細に解説する。
2.html の入力
(1)html の入力のメリット
ア 一般に表示速度が速い
※ イメージ図(©photoAC)
WordPressは、CMS(Content Management System)と呼ばれるシステムで、すでに述べたように閲覧者から閲覧のリクエストがあるとデータベースのデータからhtmlファイルをその都度作成して表示する。
これに対して、静的サイトでは最初からhtmlファイルなどがサーバに書き込まれているため、表示速度が通常の CMS に比較すると速い。表示速度が遅ければユーザビリティは低下する。多くのユーザーは表示時間が長くなると、そのサイトから離れてしまうと言われているので、速さは重要である(※)。
※ 3秒ルールと呼ばれるが、WEB サイトは、少なくとも3秒(できれば2秒)で表示したいところである。
しかし、現在ではレンタルサーバの性能が上がっており、静的サイトでも動的サイトでも、それほどの差異は感じられないのが実際のところである。
静的サイトでも、画像やスクリプトを多数導入すれば表示速度は遅くなる。むしろ、サイトの作り方の方が表示速度には影響を与えることが多い。
イ 一般にセキュリティレベルが高い
※ イメージ図(©photoAC)
動的サイトは、PHP というプログラム言語で記述されており、オープンソースなのでセキュリティホールを攻撃される危険性は否定できない。とくに WordPress は世界中で広範に使用されているので、標的にされやすいという面はある。
これに対し、静的サイトは PHP や Perl(CGI) などのプログラム言語を用いない限り、セキュリティホールのねらいようがない。従って、より安全と言える。
しかし、WordPress も開発に携わっている技術者の数は多い。そのため、セキュリティホールが発見されると、それに対する対策もかなりの短期間でとられる。従って、バージョンアップを確実に行うなど基本的な対策を行っていれば、深刻な問題が発生する可能性は低いと言ってよい。
むしろ、サイトがハッカーの攻撃を受けて被害に遭うかどうかは、動的サイトか静的サイトかということより、パスワードが単純で予測可能なケースなど基本的な対策を取っているかどうかの方が大きな要因である。基本的な対策を怠っていれば、WordPress でも静的サイトでも危険は同じである(※)。
※ WordPress は、WEB に関する知識がほとんどなくても使用することができるため、セキュリティの意識の低いユーザが多くなる傾向は否めない。そのため、結果的に WordPress が被害に遭うことが多いという面はあるかもしれない。
静的サイトであっても、サーバの管理画面へログインするパスワードに単純なものを用いていれば、アカウントを乗っ取られるおそれがある。そして、DNS の情報を書き換えられれば、簡単に偽サイトを作成されてしまう。
ウ デザインが自由にできる
WordPress は、テーマ(複数のテンプレートを集めたWEBサイトのデザイン)を購入することで、素人でも美しいデザインのサイトを簡単に作成できる。
また、WordPress のテーマの多くはレスポンシブ(モバイル対応デザイン)となっているため、デザインの作成に時間をとられずにコンテンツの作成に専念できるというメリットがある。
しかし、自由にデザインを変更したいと思っても、カスタマイズは容易ではなく、他のサイトとの同じようなデザインとなってしまい、差別化が図りにくいという面がある。
これに対し、html ファイルと css ファイルを直接打ち込めば、ほとんどどのようなデザインでも実現することが可能である。
当サイトの、労働安全衛生コンサルタント試験と衛生管理者試験の試験問題の解説のページは、タブ切り替えとポップアップ(モーダル)ウインドウの組合せだが、WordPress のテーマだけで実現することは困難だと思う。
もちろん、WordPress のテンプレートを改良すれば可能だろうが、それをするには、html や css の知識が必要となる。それなら、最初から静的サイトにしてしまえばよいことである。
エ サーバ移転が簡単
静的サイトのサーバ移転は、WordPress に比べると、とても簡単である。ファイルをそのまま新サーバにコピーして、独自ドメインを設定し、DNS を書き換えるだけで済んでしまう(※)。
※ Perl や PHP ファイルを用いていると、若干の設定変更が必要になることがある。ただ、Perl や PHP の設定は、多くのサーバで共通なので、そのままで正常に動作することが多い。
これは、サーバの移転をしないのであれば、メリットとはならない。しかし、個人のサイトの場合、長年にわたって運営していると、アクセス数が当初の予想をはるかに上回る時期が来る。そのときに、より性能の高いサイトに移転したくなるものである。
当サイトも、さくらのレンタルサーバーからエックスサーバーに移転したが、サーバ移転のやりやすさは静的サイトの大きな利点だと思う。
オ html の構造が理解しやすい
html ファイルは、後で見たときに分かりやすい形で書かれている方が、改造もしやすいし、SEO 上も好ましい。
何よりも、直接、人間が打ち込むことで、ファイルの構造を分かりやすくすることができるのである。この点、WordPress はプログラムによる自動コーディングなので、どうしても人間がみて分かりやすいコードになりにくいのである。
もちろん、WordPress だけを用いてコードを改修することがないのであれば、問題とはならないのかもしれない。しかし、WordPress を用いていても細かな修正を行いたくなるものである。そのような場合には、コードが分かりにくいことは、WordPress の大きなデメリットとなる。
カ 作成や修正・更新に時間がかからない
私自身は、WordPress に比して、html ファイル等の入力の最大のメリットは、作成や修正・更新に時間がかからないことだと思っている。
WordPress の場合、ちょっとした修正でも管理画面にログインし、いくつかのボタンを選択する必要がある。また、リンクを張ったり装飾したりするのにも、いちいち機能のボタンを押す必要がある。
これが、htmlファイルの入力なら、普段使っているエディタを立ち上げればすぐに使えるようになる。リンクを張ったり装飾したりするのもタグを書き込めば簡単にできる。
アップロードするのも、パブリッシュソフトを使えば、一瞬でできる。
キ 専門知識が身に付く
また、WordPress はいくら使用に慣れて使いこなせるようになったとしても、あくまでも WordPress というシステムの使い方を覚えたに過ぎない。
これに対し、html ファイルや css ファイルの書き方を覚えれば、それはひとつの汎用的な専門知識を習得することになるのである。
もちろん、WordPress も広範に使われていることから、それはそれでひとつのスキルになると考えられるが、汎用性という意味では、html や css の知識の方が利便性があろう。
ク バックアップが簡単
html ファイル等を入力する場合、まずローカルの HDD に打ち込んでからサーバにアップすることが多い。すなわち、同じデータがローカルとサーバにあるので、片方が破損してももう一方がバックアップになるのである。
改めてバックアップを取る場合でも、ファイルをそのままコピーすればよい。時間はかかるにしても、バックアップの作業は簡単にできる。
WordPress の場合でもサーバのバックアップサービスを利用すればよい。また、バックアップをするプラグインもある。しかし、サーバのバックアップ機能を用いて復元するのは手間がかかるし、プラグインの利用もつい面倒になって怠りがちになる。
やはり、常に、ローカルとサーバに同じデータがある静的サイトのバックアップのやりやすさとは比較にならない。
(2)html の入力のデメリット
ア ある程度の知識が必要
※ イメージ図(©photoAC)
html ファイルの入力のデメリットとしてよく指摘されるのが、html と css の知識がないとできないということである。
確かに、企業の場合、これは致命的なものである。通常の中小規模の企業の場合、html と css の知識がある職員などまずいない。また、WEB サイトのためだけに知識のある職員を雇用するというのも現実的ではないし、職員を教育するというのも難しいだろう。
しかし、個人の場合は、趣味だと考えれば=私もそう考えた=よい。また、実を言えばそれほど大変な学習が必要となるわけではない。
筆者(柳川)も 60 歳を過ぎて、まったくのゼロの状態から html と css を独学で習得したが、このサイトくらいのものは作れるようになるのである。
正直に言えば、今でも、タグは基本的なものしか知らないが、後は、何かをしたくなった時に、その都度、ネットや書籍で調べればよい。
css ファイルは、初期のころに書いた部分は、今になって思えば、やや効率の悪い書き方になっているが、それによって極端に読み込み速度が遅くならないのが静的サイトの良いところである。
イ すべてのページの同時修正が大変
すべてのページについて改修を行おうとすると、静的サイトではすべてのページを書き換えなければならなくなる。確かに、これは静的サイトの大きなデメリットである。
このサイトでも、例えば、ほぼすべてのページにあるグローバルメニューを修しようとすると、グローバルメニューを設置しているすべてのファイルを修正しなければならないので、かなり大がかりな作業が必要となる。筆者の場合、次のように行っている。
グローバルメニューの修正の手順
- ローカルにある html ファイルをTextSS.netを用いて一斉変換する。
- 次に、ローカルにあるすべてのファイルを圧縮して、ひとつの lzh ファイルにする(※1)。
- lzh ファイルから、掲示板のデータなど、ローカルとサーバで内容の異なるファイルを削除する(※2)。
- 圧縮したファイルと、解凍用の PHP ファイルを(※3)サーバのルートディレクトリにアップする。
- サーバ上の圧縮したファイルを解凍して、サーバ上の既存のファイルを上書きする。
- 圧縮したファイルと、解凍用の PHP ファイルを削除する。
※1 本来、グローバルメニューのある html ファイルだけを圧縮したいのだが、それではかなりの手間になるので、すべてのファイルを圧縮してしまう。
※2 実際には当サイトの掲示板システムには、グローバルメニューはないので掲示板システム全体を削除してしまう。
※3 わざわざすべてのファイルを圧縮するのは、多数のファイルをアップすると、いくつかのファイルの内容が失われるエラーが発生することがあるからである。なお、解凍用 PHP ファイルの内容は「WEBサイトのhtmlファイルの内容消失」に示した。
しかし、変換前のすべてのページで、グローバルメニューが同じ形になってるとは限らないので、TextSS.net の一斉変換にかからないファイルも出てくるのである。
また、当サイトは、途中でレスポンシブデザインを採用した(※)が、そのときもすべてのページを修正する必要があり、このときは2022年の2月から4月まで、ほぼ2ケ月ほどかけて手作業で行った。
※ 詳細は「本サイトのレスポンシブ化の記録」を参照して頂きたい。
やはり、html ファイルの入力でサイトを作成した場合、後ですべてのページを同時に修正しようとしたときに大変になるというのが、かなりのデメリットになる。
なお、Google アナリティクスを適用したり Google アドセンスを利用したりするときには、すべてのページにタグを書き込む必要がある。しかし、タグの書き込みは、タグマネージャーを採用すれば、かなりの省力化が可能である。
ウ デザインが素人的になりやすい
また、WordPress の場合、テーマを用いることで、美しいデザインのサイトを構築することが可能である。しかし、html の入力で作成するのであれば、デザインも自ら考えなければならない。
デザインのプロでもない限り、どうしても、配色、配置、余白の使い方などが素人的になってしまうことは否めない。
自由にデザインができるということは、逆から言えば、ゼロからデザインを作る必要があるということである。プロのデザイナーでない限り、ここはある程度のデメリットになると言えよう。
そして、デザインが素人的だと、閲覧者から、内容も信頼感が低いのではないかと感じられるというリスクは否定できない。html ファイルの入力でサイトを作るのであれば、WEBサイトのデザインに関する参考書や、他の優れたサイトの配色や配置を参考に、自らのサイトのデザインの改善を図ってゆくべきである。
エ プラグインが使えない
また、他の項目とも重複するが、WordPress では豊富に提供されているプラグインが、html ファイルの入力の場合には使用できないのも、デメリットとなる。
WordPress では、画像の軽量化、スパム対策、アボセンス対策(いたずら目的のクリック対策)、リンク切れチェック、人気記事ランキングなどの様々なプラグインが存在している。
html の入力をする場合であっても、perl や PHP による様ざまなライブラリが公開されている。しかし、WordPress のプラグインのような多様な機能が実現できるわけではない。
これも html の入力をする場合のデメリットのひとつであろう。
オ 動的サイトの実現が大変
html ファイルを入力してサーバにおいて公開する場合、閲覧者ごとに html ファイルを変更することはできない。そのため静的サイトといわれるわけである。
静的サイトでは、メールフォーム、ブログ、掲示板、EC サイト(ネットで売買等の取引を行うサイト)などの構築はできない。
そのため、メールフォーム、ブログ、掲示板、EC サイトなどを実現しようとすれば、Perl や PHP などのプログラム言語を用いて書き起こすか、公開されているライブラリを使用するしかないこととなる。
当サイトでは、メールフォームと掲示板を設置しているが、これはKent Webに公開されているものを利用させて頂いている。
3.WordPress
(1)WordPress のメリット
ア 特別な知識が不要
※ イメージ図(©photoAC)
WordPress は、html や css に関する特別な知識がなくても、ブログやホームページを作成することができる。これは、他に本業を持つ忙しいビジネスマンにとって、html ファイルや css ファイルを入力する場合に比して大きなメリットとなる。
筆者は、知り合いから WEB サイトを自分で作りたいという相談を受けることがあるが、ほとんどの場合は WordPress の使用をお勧めする。その最大の理由は、特別の知識がなくても可能だからである。
ただし、WordPress の入力が簡単だとは言っても、ブログ提供業者のブログのように、日本語入力ができれば、それだけで誰でも作成できるというわけではない。一定の知識とノウハウは必要になる。
また、多少、慣れてくると細かな修正をしたくなるものである。そうなると html と css が分かっていないと難しい。そのため、結局は html と css の学習が必要になってしまうのも事実である。
イ テーマを使えば美しいデザインとなる
WordPress の最大のメリットは、テーマを使えば美しいサイトが作成できるということである。閲覧者の目から見てもデザインが優れていれば、それだけでも信頼できそうという印象を受ける。デザインは重要である。
また、UX(User Experience)/UI(User Interface)デザインは、WEBサイトを作成する場合に必須となる。UX/UI の理論に沿ったサイトでないと、ユーザビリティが悪くなり(※)、閲覧者がサイトから離脱する原因となる。
※ 細かい文字がびっしりと書かれていたり、背景と文字のコントラストが低かったり、リンクのあるところがリンクと分からなかったりすれば、閲覧者は読もうという意欲をなくしてしまう。
WordPress のUX/UI の理論に沿ったテーマを用いることで、ユーザにとって使いやすいサイトになるのであるから、これは大きなメリットになる。
ただ、UX/UI の理論を適切に理解していれば、html ファイルの入力の方法によっても、ユーザビリティの良いサイトは実現できる。WordPress のメリットは、学習しなくてもある程度のユーザビリティのよいサイトができるということに過ぎない。
ウ プラグインの利用で各種機能が利用可能
すでに、html ファイルの入力の項で説明しているが、WordPressのメリットにプラグインが利用できるということがある。
html ファイルを入力する方法でも、各種のライブラリを用いることはできるが、WordPressのプラグインほど種類は豊富ではない。
ただ、プラグインも万能ではなく、ものによっては他のプラグインと干渉して動作がおかしくなるものもあるし、あまりに多くのプラグインを用いれば表示速度が遅くなる。
また、プラグインもバージョンアップを繰り返すので、そのたびに更改する必要があり、そのときに動作不良になるケースがまれにある。
エ ある程度の SEO は自動で実施
WordPress のメリットとしてよく指摘されることに、SEO を自動で行ってくれるというのがある。
ただ、WordPress の SEO の機能にそれほどの性能があるとは思えない。これは、html ファイルの入力を行っている場合に、手作業で行う方がよほど SEO 効果はあるだろう。
WordPress の SEO の機能は、SEO に関する知識がなくてもできるが、多少の知識のある人間が html ファイルの入力方法で作成したサイトにはかなわないと思った方がよい。
(2)WordPressのデメリット
ア 一般に表示速度が遅くなる
すでに述べたことではあるが、WordPress の最大のデメリットが表示速度が遅くなることだと指摘するサイトは多い。しかし、現実には、レンタルサーバの速度の向上によってそれほど変わらないというのが現実である。
イ バージョンアップへの対応が必要
※ イメージ図(©photoAC)
WordPress はセキュリティやバグの改良のため、バージョンアップを繰り返している。サイトで使用している WordPress は自動で更新されるわけではないため、サイト管理者が更新する必要がある。
この更新をするときに、プラグインの一部が動かなくなったり、サイトの一部が動作不良を起こすことがまれにある。そのような場合、最悪ケースでは、プラグインを削除したり、不良動作を起こしたページを削除するしか、解決の方法はないということも起こり得るのが現状である。
ただ、html ファイルを入力している場合であっても、jQuery を用いていれば、そのバージョンアップを行う必要がある。その作業は難しくはないが、それまで動いていたモジュールが作動しなくなることはある。そのような場合、モジュールそのものを差し替える必要がある。
バージョンアップは、純粋に html ファイルと css ファイルだけで WEB サイトを作成しているのでない限り、必ず必要となるものである。その意味では、WordPress に固有のデメリットとまではいえないかもしれない。
ウ セキュリティにやや不安がある
これもすでに述べたことであるが、WordPress は PHP で作成されたプログラムであり、セキュリティ上の弱点(セキュリティホール)がないとは言い切れない。これに対し html を直接入力する方法は、このような心配がないため安全である。
しかし、二段階認証や複雑なパスワードの使用、バージョンアップへの速やかな対応など、一定のセキュリティ対策を取っていれば、セキュリティホールを突かれるリスクを十分に低くすることが可能である。
現実に、世界中で優良な企業を含めて多くのサイトで採用されているシステムである。それらの企業が WordPress を採用しているということは、セキュリティの問題が、深刻なデメリットではないと考えられる。
エ サーバの移転が大変
WordPressに限らず、CMS を利用したサイトのサーバの移転は、html ファイルを直接入力した場合に比してやや複雑である。もちろん、サーバの移転をしないのであればデメリットとはなり得ないが、長年、WEB サイトの運営をしているとサーバを移転したくなることがあることがほとんどであろう。
これは、WordPress を用いる場合には、意外に大きなデメリットになるというべきである。
オ 作成や修正・更新に時間がかかる
私自身は、現時点での WordPress などの CMS の最大のデメリットはデザインが完全には自由にならないことと、作成や修正・更新に時間がかかることの2つだと思っている。
WordPress では、サイトの修正・更新のたびに管理画面へログインして修正をかけなければならない。これは、修正・更新の回数が増えてくると、かなり煩雑に感じられるのである。
4.結局、どちらがお勧めか
(1)当サイトを html の入力方式とした経緯
当サイトは、CMS は使用しておらず、html ファイルと css ファイルを直接入力して行っている。そのようになった最大の理由は、2016 年に私が WEB サイトを作成しようと思い立ったとき、WordPress の存在を知らなかったからである。
当時の WEB サイト作成に関する私の知識は、WEB サイトは html という言語で作成されているということと、ホームページを作成するためのソフトがあるということくらいであった。本屋へ行って、関係書籍を探して、WordPress や、ジンドゥー(Jimdo)の解説書を見つけて、パラパラと立ち読みをしてみたが、当時の知識では意味が理解できず、ホームページ作成ソフトの一種だと思い込んでしまったのである。
結果的に、Microsoft 社の "Microsoft Expression Web 4" が、たまたま無償化された時期だったため、解説サイトを参考にサイトを作り始めたのである。ただ、 "Microsoft Expression Web 4" は更新をされなかったため内容が古くなっており、後に使用を中止した。html と css の解説書を数冊購入して、専用のエディタ(※)を用いてサイトを大幅に改修し、現在はエディタによる直接入力で作成している。
※ 当時は Adobe 社の Brackets というソフトを用いたが、その後サポートが停止されたので、Microsoft 社の Visual Studio Code に切り換えた。
(2)筆者としては html の入力方式がベストだと考える
当サイトを html の直接入力方式としたことは、WordPress にするかどうかを考えてしたわけではない。しかし、結果としてこれでよかったと思っている。
※ イメージ図(©無料の写真素材「ぱくたそ」)
いってみれば、html の直接入力方式は「自動化されていない一眼レフカメラ」、WordPressは「手軽な全自動カメラ」といった印象である。
手軽な全自動カメラも性能が上がっており、プロでもない限り、一眼レフカメラを使っても全自動カメラのレベル以上の写真は撮れない。そのため、今では、プロでも手軽な自動カメラを用いるケースが増えてきている。
一方、自動化されていない一眼レフカメラは、素人が扱うとピントがぼけたり、手振れが起きたりと、美しい写真は撮れないのである。自動化されていない一眼レフカメラで美しい写真を撮るには、一定の学習が必要である。
だからといって、やはり自動化されていない一眼レフカメラを使いたいという需要はある。それと同じで、私も、html の入力方式に愛着を持っているのである。
自由にデザインや機能を決めることができる html 入力方式の魅力は、学習に時間をかけるだけのものがある。
なお、他の解説サイトを見ると、html の入力方式は、ページ数が少なくて更新頻度も少ないサイトに適していると書かれている。しかし、このサイトはページ数は数千ページあり、頻繁に更新・修正しているが、とくに問題なく運営している。
(3)ただ、これからサイトを作る方には WordPress をお勧めする
※ イメージ図(©photoAC)
しかし、誰かから「これから自分で WEB サイトを作りたいがどうすればよいか」と尋ねられれば、WordPress をお勧めする。
やはり、html と css について新たに学習することはかなりの負担であるし、コンテンツの作成に力を傾注するには、WordPress が有利だからである。また、各種のプラグインが利用できることも魅力である。
当サイトには、掲示板やメールフォームが設置されている。その設置やバージョンアップには、仕組みの理解にそれなりの時間を要する。しかし、WordPress なら、掲示板の機能やメールフォームなど簡単に設置することができるのである。
一方、WordPress の最大のデメリットとされた 表示速度の問題は、レンタルサーバの性能の向上で、ほぼ気にならない程度になっている。
WordPress では、サイトの入力や更新・修正には時間がかかるが、慣れてくればそれほどでもないだろう。デザインがやや定型的になりやすく、完全には自由にならないことも、特殊なことをしない限り気にはならないだろう。
やはり、個人や小規模な事務所等で、業者に頼らず自らサイトを運営したいのであれば、WordPress 一択だろうと思う。
他の解説サイトを見ると、WordPress は、ページ数が多くて更新頻度も多いサイトに適していると書かれている。しかし、ページ数が少なくて更新頻度も少ないサイトで、WordPress で作成されているサイトはいくらでもある。
ページ数や更新頻度と WordPress を採用するかどうかとは関係がない。その最大のメリットは、テーマを用いれば htm や css を知らなくても美しいサイトが作成できることと、メールフォームなどが簡単に作れることである。このメリットは、ページ数と更新頻度とは関係がない。
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