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このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。
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| 2025年度(令和7年度) | 問 3 | 健康診断に関する基本的な考え方を問うもの。方法論ではないのでやや難問だったか。 |
|---|---|---|
| 健康診断 |
問3 職場における医師による健康診断に関する以下の設問に答えよ。なお、この設問において、労働安全衛生法第 66 条第1項に基づき、労働安全衛生規則第 43 条、同第 44 条、同第 45 条に規定する健康診断をそれぞれ「雇入時健康診断」、「一般定期健康診断」、「特定業務従事者の健康診断」と、同第 577 条の2第3項及び第4項に規定する健康診断を「リスクアセスメント対象物健康診断」といい、また、労働安全衛生法第 66 条第2項に規定する健康診断を「特殊健康診断」というものとする。
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(1)事業者に対して、一般定期健康診断の実施を義務付けている理由・目的を簡潔に述べよ。
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【解説】
これは、ここ数年、口述試験で繰り返し問われてきた問題である。今年はこれが記述式試験で問われた。このようなことはよくあることなので、筆記試験の学習のためには過去の口述試験についても調べておいた方がよい。一般の定期健康診断の目的については、労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会の報告書に端的に述べられている。【一般の健康診断を実施する目的】Ⅰ.はじめに1 労働安全衛生法に基づく定期健康診断(一般健康診断)は、常時使用する労働者について、その健康状態を把握し、労働時間の短縮、作業転換等の事後措置を行い、脳・心臓疾患の発症の防止、生活習慣病等の増悪防止を図ることなどを目的として事業者により実施されている。2 一方、労働者の高齢化の進展、ストレスチェック制度の創設など、労働者の健康管理を取巻く状況も変化している。また、脳・心臓疾患による労災支給決定件数も高水準にあるなどの状況にあり、定期健康診断についても、これらの状況に的確に対応したものとすることが必要である。※ 厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会 報告書」(平成 25 年6月 18 日基発 0618 第1号)なお、安衛法施行時の事務次官通達(昭和 47 年9月 18 日発基第 91 号)には、一般の健康診断を義務付ける理由については記されていない。【一般の健康診断を実施する目的】第三 概要七 健康管理(第七章関係)(二)健康診断イ この法律においては、健康管理の徹底をはかるため、一般の健康診断のほか、一定の有害業務に従事する労働者について行なうべき特別の健康診断についてもその根拠を明らかにしたこと。また、一定の有害業務から配置転換を受けた後、当該事業者に使用されている間において行なわれるべき特別の健康診断についても法律上の制度としたものであること。ロ 臨時の健康診断実施指示制度労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、定期の健康診断の機会を待たずに、ただちに健康診断を実施する必要が生ずる場合があるので、そのような事態に対処するため、この法律では都道府県労働基準局長の臨時の健康診断実施指示権を創設したこと。※ 厚生労働省「労働安全衛生法の施行について」(昭和 47 年9月 18 日発基第 91 号)また、一般健康診断について、森(※)は、それを事業者に義務付けている理由を、事業者が負う「
職場の特有の有害要因にもとづかない個別的な労働者に対して、労働負荷と労働者の健康状態の関係を評価し、その調整を図る義務
」に求めている。言葉を換えれば、とくに有害な業務に従事しない個々の労働者に対する、安全配慮義務としての事後措置に根拠を求めているわけである。※ 森晃爾「健康診断制度の現状と課題」(法学的視点からみた社会経済情勢の変化に対応する労働安全衛生法体形に係る調査研究)【一般の健康診断の根拠】C.研究結果Ⅰ 一般健康診断の実施1.一般健康診断とは【概要と趣旨】使用者の労働者に対する健康管理義務には、職場に特別の健康障害要因のある場合にその障害要因に起因する疾病、すなわち職業病を防止する義務と、職場の特有の有害要因にもとづかない個別的な労働者に対して、労働負荷と労働者の健康状態の関係を評価し、その調整を図る義務がある。前者は特定の有害要因の標的臓器(要因ごとに、もっとも小さなばく露で影響が出現する感受性の高い臓器)と関連した検査と、労働者個人ごとにばく露の推定を行い、健康障害発生リスクの評価と健康障害の早期発見を行うための特殊健康診断が相当しており、後者は労働者の健康状態をもとに職務適性を評価し、職務適性に応じて就業上の配慮を行うことを目的とした一般健康診断が関連する。(図1)※ 森晃爾「健康診断制度の現状と課題」(法学的視点からみた社会経済情勢の変化に対応する労働安全衛生法体形に係る調査研究)また、安衛法は健康診断の結果に基づいて、事後措置等を行うことを義務付けているのであるから、これが一般の健康診断の実施を義務付けている「理由」ということになろう。 閉じる【労働安全衛生法】(健康診断)第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。2~5 (略)(健康診断の結果についての医師等からの意見聴)第66条の4 事業者は、第66条第1項から第4項まで若しくは第5項ただし書又は第66条の2の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。(健康診断実施後の措置)第66条の5 事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)第7条に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への報告その他の適切な措置を講じなければならない。2及び3 (略)(健康診断の結果の通知)第66条の6 事業者は、第66条第1項から第4項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。(保健指導等)第66条の7 事業者は、第66条第1項から第4項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。2 (略) -
【解答例】
労働安全衛生法に基づく定期健康診断(一般健康診断)は、常時使用する労働者について、その健康状態を把握し、労働時間の短縮、作業転換等の事後措置を行い、脳・心臓疾患の発症の防止、生活習慣病等の増悪防止を図ることなどを目的として事業者により実施されている。また、労働者に対してその結果を通知し、必要な場合には保健指導を行うなどにより、労働者が自らその健康状況を改善することにもつなげることを目的としている。閉じる
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【解説】
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(2)事業者が雇入時健康診断を実施しなければならない場合とは、どのような事業場においてどのような労働者を雇い入れたときか。①事業場の規模、②労働者の年齢、③労働契約の期間、④1週間の労働時問数について、それぞれ簡潔に述べよ。また、労働者が健康診断結果を証明する書面を提出した場合でも事業者が雇入時健康診断を実施しなければならないのはどのようなときか述べよ。
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【解説】
1 雇入時健康診断を実施しなければならない場合これは、純粋な法律の条文及び行政解釈(通達)の問題である(1)①事業場の規模、②労働者の年齢雇入時の健康診断については、安衛法第 66 条(及び安衛則第 43 条)によって義務付けられている。この条文には事業場の規模や労働者の年齢による制限はないため、すべての規模の事業場について、すべての年齢の労働者に対して実施が義務付けられている。【労働安全衛生法】(健康診断)第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。2~5 (略)【労働安全衛生規則】(雇入時の健康診断)第43条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。一~十一条 (略)(2)③労働契約の期間、④1週間の労働時問数一方、労働契約の期間、1週間の労働時問数については、安衛則第 43 条に「常時使用する労働者」とあることから、「常時使用」しない労働者は除かれることになる。この「常時」がどの程度を意味するのかについては、安衛法が施行された 1972 年(昭和 42 年)の基本通達で、「
日雇労働者、パートタイマー等の臨時的労働者の数を含めて、常態として使用する労働者
」を含むとされていた。しかし、具体的な基準は定められなかったため、長年にわたって謎とされてきたのである。【常時雇用するとは】Ⅱ 施行令関係2 第二条関係(1)本条で「常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する」とは、日雇労働者、パートタイマー等の臨時的労働者の数を含めて、常態として使用する労働者の数が本条各号に掲げる数以上であることをいうものであること。(2)及び(3)(略)※ 厚生労働省「労働安全衛生法および同法施行令の施行について」(昭和 47 年9月 18 日基発第 602 号)その後、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(平成5年法律第 76 号/現「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)が公布された 1993 年に、一般の健康診断について「常時性」についての行政解釈が示された。そのため、少なくとも一般の健康診断についての「常時性の謎」は解消されたのである。この解釈が示された通達は、その後、2度にわたって廃止・新規制定が繰り返された。現在、この常時性についての解釈は、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」(平成 26 年7月 24 日基発 0724 第2号他)によって示されている。【平成5年通達(現時点では廃止)による常時性の解釈】8 指針(法第8条関係)(2)指針の各項についてニ 短時間労働者の適正な労働条件の確保(指針第3の1関係)(リ)健康診断(指針第3の1の(9)関係)健康診断については、短時間労働者に対し、労働安全衛生法第66条に基づき、健康診断を実施する必要がある旨確認的に明記し、また、その実施すべき健康診断及びその実施時期等について具体的に示したものであること。この場合において、事業主が同法の一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって 当該契約の契約期間が1年(労働安全衛生規則第45条において引用する同規則第13条第1項第2号に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては6月。①において同じ。)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいこと。なお、①の括弧書中の「引き続き使用」の意義については、上記(ニ)のなお書の趣旨に留意すること。※ ここに法とは(改正前の)「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(現在は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)をいい、指針とは「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針(平成5年労働省告示第118号/事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針(平成 19 年厚生労働省告示第 326 号)により廃止)」をいうこと。※ 厚生労働省「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」(平成5年 12 月1日発基第 663 号他)(次に示す平成 19 年 10 月1発基第 100101 号他により廃止)【平成 19 年通達(現時点では廃止)による常時性の解釈】第3 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)10 指針(法第 14 条関係)(4) (3)イにおける労働者保護法令の主な内容は、以下のとおりであること。ト 健康診断事業主は、健康診断については、短時間労働者に対し、労働安全衛生法第66条に基づき、次に掲げる健康診断を実施する必要があること。(イ)常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断(ロ)~(ニ)(略)この場合において、事業主が同法の一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年(労働安全衛生規則(昭和 47 年労働省令第 32 号)第45条において引用する同規則第13条第1項第2号に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては6月。以下この項において同じ。)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいこと。①の括弧書中の「引き続き使用」の意義については、上記ハのなお書の趣旨に留意すること。※ ここに法とは「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(現在は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)をいい、指針とは事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針(平成 19 年厚生労働省告示第 326 号)」をいうこと。※ 厚生労働省「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」(平成 19 年 10 月1基発第 1001016 号他)(平成 26 年7月 24 日基発 0724 第2号により廃止)【現行通達による常時性の解釈】第3 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)11 指針(法第 15 条関係)(4) (3)イにおける労働者保護法令の主な内容は、以下のとおりであること。ト 健康診断事業主は、健康診断については、短時間労働者に対し、労働安全衛生法第66条に基づき、次に掲げる健康診断を実施する必要があること。(イ)常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断(ロ)~(ニ)(略)この場合において、事業主が同法の一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年(労働安全衛生規則(昭和 47 年労働省令第 32 号)第45条において引用する同規則第13条第1項第2号に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては6月。以下この項において同じ。)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいこと。①の括弧書中の「引き続き使用」の意義については、上記ハのなお書の趣旨に留意すること。※ ここに法とは「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(現在は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)をいい、指針とは事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針(平成 19 年厚生労働省告示第 326 号/改正平成 26 年7月 24 日厚生労働省告示第 293 号)」をいうこと。※ 厚生労働省「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」(平成 26 年7月 24 日基発 0724 第2号他)2 健康診断結果を証明する書面と事業者の雇入時健康診断の実施義務また、本小問の後段の、労働者が健康診断結果を証明する書面を提出した場合でも事業者が雇入時健康診断を実施しなければならないのは、安衛則第 43 条の但し書きに該当しない場合である。条文が「医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない」となっているのであるから、健康診断を受信してから3か月以上経過している場合、又は、提出された証明書の検診の項目が法定の項目に満たない場合である。閉じる -
【解答例】
1 事業者が雇入時健康診断を実施しなければならない場合① 事業場の規模同居する親族以外に常時使用する労働者の数が、(雇い入れた労働者の数を含めて)1人以上の場合である。② 労働者の年齢すべての年齢である。③ 労働契約の期間期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年(短時間労働者にあっては6月)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。④ 1週間の労働時問数その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。2 労働者が健康診断結果を証明する書面を提出した場合の雇入れ健康診断の実施の義務労働者が健康診断結果を証明する書面を提出した場合でも事業者が雇入時健康診断を実施しなければならないのは、健康診断を受信してから3か月以上経過している場合、又は、提出された証明書の検診の項目が法定の項目に満たない場合である。閉じる
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【解説】
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(3)特定業務従事者の健康診断と特殊健康診断はどのように異なるか。鉛を取り扱う作業に常時従事する労働者を例に、①対象者、②実施時期、③健康診断項目の違いについて、それぞれ簡潔に述べよ。
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【解説】
1 特定業務従事者への健康診断の性格特定業務従事者の健康診断は、一定の有害業務に従事する労働者に対する健康診断なので、事業者の方の中には一般の健康診断よりも特殊健康診断に近いと思われる方がおられるようだ。しかし、法的には安衛法第 66 条第1項を根拠としており、法律的な位置づけとしては一般健康診断に近いのである。省令の規定も特別則ではなく安衛則におかれていて、検査項目も一般の健康診断と同じである。2 特定業務従事者への健康診断の関連規定本小問の鉛関連の業務に従事する労働者に対する健康診断関連の規定には、次のようなものがある。なお、本小問とは関係はないが、実施報告も50人以上を雇用する事業者のみに義務付けられている。【労働安全衛生法】(健康診断)第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。2事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。3~5 (略)【労働安全衛生規則】(産業医の選任等)第13条 (柱書 略)一及び二 (略)三 (柱書 略)イ~ル (略)ヲ 鉛(中略)その他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務ワ及びカ (略)2~4 (略)(定期健康診断)第44条 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。一 既往歴及び業務歴の調査二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査四 胸部エックス線検査及び喀痰検査五 血圧の測定六 貧血検査七 肝機能検査八 血中脂質検査九 血糖検査十 尿検査十一 心電図検査2~4 (略)(特定業務従事者の健康診断)第45条 事業者は、第13条第1項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、第44条第1項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。この場合において、同項第四号の項目については、1年以内ごとに1回、定期に、行えば足りるものとする。2~4 (略)3 鉛取扱い業務従事労働者への特殊健康診断に関する規定一方、特殊健康診断の法律上の根拠は、安衛法第 66 条第2項にあり、省令の規定も特別則におかれており、検診項目もその有害業務によって発生する疾病の早期発見を目的とするものや、生物学的モニタリングに関するものとなっている。
閉じる【労働安全衛生法】(健康診断)第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。2事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。3~5 (略)【労働安全衛生法施行令】(健康診断を行うべき有害な業務)第22条 法第六十六条第二項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。一~三 (略)四 別表第四に掲げる鉛業務(遠隔操作によつて行う隔離室におけるものを除く。)五及び六 (略)2及び3 (略)【鉛中毒予防規則】(健康診断)第53条 事業者は、令第22条第1項第四号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後6月(令別表第四第十七号及び第1条第五号リからルまでに掲げる鉛業務又はこれらの業務を行う作業場所における清掃の業務に従事する労働者に対しては、1年)以内ごとに1回、定期に、次の項目について、医師による健康診断を行わなければならない。一 業務の経歴の調査二 作業条件の簡易な調査三 鉛による自覚症状及び他覚症状の既往歴の有無の検査並びに第五号及び第六号に掲げる項目についての既往の検査結果の調査四 鉛による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査五 血液中の鉛の量の検査六 尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査2~4 (略) -
【解答例】
特定業務従事労働者に対する健康診断と特殊健康診断の違いは、鉛を取り扱う作業に常時従事する労働者を例にとると以下の通りである。① 対象者(1)特定業務従事者の健康診断鉛の蒸気又は粉じんを発散する場所における業務(2)特殊健康診断鉛の製錬を行なう工程における焙焼、焼結、溶鉱などの鉛等を取扱う業務など、鉛業務に従事する労働者② 実施時期(1)特定業務従事者の健康診断その業務への配置替えの際及びその後原則として6月以内ごとに1回(胸部エックス線検査及び喀痰検査は1年以内ごとに1回)(2)特殊健康診断雇入れ時やその業務への配置替えの際及びその後原則として6月以内ごとに1回(一定の業務については1年以内ごとに1回)③ 健康診断項目(1)特定業務従事者の健康診断定期健康診断と同じ項目(既往歴及び業務歴の調査、自覚症状及び他覚症状の有無の検査、身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査、胸部エックス線検査及び喀痰かくたん検査、血圧の測定、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、尿検査および心電図検査)を実施する。(2)特殊健康診断鉛による職業性疾病の早期発見のための項目又は生物学的モニタリングのための検査項目を実施する。具体的には、次の項目一 業務の経歴の調査二 作業条件の簡易な調査三 鉛による自覚症状及び他覚症状の既往歴の有無の検査並びに第五号及び第六号に掲げる項目についての既往の検査結果の調査四 鉛による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査五 血液中の鉛の量の検査六 尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査※ 具体的な検査項目は省略するか、例を2,3個挙げるだけでよいと思われる。閉じる
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【解説】
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(4)一般定期健康診断の際に、全ての労働者を対象に健康診断項目を追加しようとするときには、どのような要件や着眼点に関して検討することが適切と考えるか、五つ挙げよ。
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【解説】
1 解答する上での留意事項本小問で問われているのは、健康診断に法定外の検査項目を追加するときに検討するべき事項であって、追加するべき健診項目を選定するときに検討するべきことではない。少なくとも行政は、一般の定期健康診断において法定外の検査を実施することは純粋に民事的な事項であると考えており、積極的に解釈を示すようなことは避けている(※)。※ もちろん、行政は、一定の有害な業務を行う労働者に対する「指導勧奨による特殊健康診断」の実施を、事業者に対して指導している。しかし、これは本小問の「全ての労働者を対象に健康診断項目を追加」するようなものとは、まったく性格が異なっている。この2つを、混同してはならない。従って、出題者が何を正答であると考えているのかについては、予想することは困難であるが、次のように考えれば大きく外れるようなことはないだろう。(1)事業者が法定外検診を行うことに関する行政解釈個人の健康に関する情報は機微な内容であるといえる(個人情報保護法施行令第2条第二号参照)。このため、会社側が、すべての労働者に対して法定項目以外の健康診断を一律に実施することが許されるかについては、法的に議論のあるところである。※ 合理的な理由があれば、法定外の健診を、事業者は労働者に命じることができるとするのが判例である。これは、就業規則に根拠がない場合でも認められている。しかし、これらは特定の労働者に対する法定外の健診の命令の有効性についての判断であって、「全ての労働者を対象に健康診断項目を追加」する事例に対するものではない。ところが、現実には、事業場において行われる健康診断で、法定された項目だけを実施しているという事業場はほとんどないというのが実態である(※)。※ 例えば血液検査では、検査項目がセットになっていることが多く、安衛法の検査項目のみを行っている例は、むしろ少ないといってよい。本小問は、企業において全労働者に対する法定外検診を行うことが許されるということを前提にして、それを実施する場合の要件や着眼点を問うものである。先述したように、行政が公式文書でこのことに言及している例はほとんどない。これに近い例としては、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(令和2年3月 16 日基安発 0316 第1号)で、「
主に高年齢労働者を対象とした体力チェックを継続的に行うことが望ましい
」としているものがある(※)。※ この場合も、高齢者を中心に行うものとされており、定期健康診断ですべての労働者に対して体力チェックを行うことを推奨しているわけではない。なお、この他に関連しそうなものとしては、新型肝炎の検査について事業者団体に対して個別の要請(令和5年3月 22 日基発0322第1号等「職域におけるウイルス性肝炎対策に関する協力の要請について」)が行われたケースがある。ただし、その検査を事業者が行うべきとしているわけではなく、いわゆる法定外健診とは無関係である。また、採用の諾否のための健康診断で血液検査を行うことについて、事務連絡(「採用選考時の健康診断について」(平成5年5月10日事務連絡))によって中止を求めた例がある。ただし、これも雇入れ前の話であり、労働安全衛生法の健康診断とは無関係である。(2)法定外検診項目とその位置づけまず、本小問を解答するに当たって、企業が法定外検診を行う目的について整理しておこう。企業が労働者に対して法定外の健康診断を行う目的は、おそらく次のようなものであろう。【法定外検診の目的】① 安全配慮義務の一環。例えば発がん性物質を扱っている業務で、がんの早期発見のための検診を行うような場合や、病気休暇からの職場復帰に際して医師の診断を求める場合など。② 事故防止対策の一環。航空機パイロットやバスの運転手に対して、精神疾患や意識障害についての検診を行うような場合など。③ 社会的責任対応の一環。行政の指導勧奨による特殊健康診断を実施する場合など。④ 健康経営の一環。突発的に労働力が疾病によって失われることがないように、疾病の検診を行うような場合など。⑤ 純粋な福利厚生の一環。高年齢労働者を中心に、一定年齢ごとに福利厚生費で人間ドックを受診させるような場合など。本小問は、問題文では、法定外検診の目的は明示されていない。しかし、「全ての労働者を対象に健康診断項目を追加」するというのであるから、①~③ではなく、④か⑤であることが前提である。まず、ここを混同してはならない。また、企業が労働者に対して健康診断を行う場合であっても、次のようなことが問題となりうる。次のそれぞれの項目がいずれなのかによって、その健診を行うことが許されるかどうかは異なるであろう。【法定外検診の対応】① 受診は任意なのか(受診義務が課せられるのか)② 受診しなかった場合に不利益があるのか③ 医師選択の自由(安衛法第 66 条第5項但書参照)を認めるのか④ 事業者が検診の結果を知るのか否か(※)※ 純粋に、労働者への福利厚生の一環として人間ドックなどを受信させ、その結果は安衛法の法定項目だけを事業者が受け取るということもあり得る。なお、純粋に労働者の任意で行う検診として、「職域でのがん検診」で想定されているような例がある。これは、職場で発がん性のある化学物質や機器などを用いていないことが前提である。本小問は、これらの点についても明示していない。しかし、「全ての労働者を対象に健康診断項目を追加」するというのであるから、法定検診と同様な扱いがされるというのが前提であろう。すなわち、労働者に対して受診を義務付けるが、医師選択の自由は認める。また、検診の結果は事業者側が知り得るということが前提であろう(※)。※ この前提が違っているとすれば、本問の正解は全く異なったものとなってしまう。すなわち、これらの項目そのものが、検討するべき事項となるからである。2 本小問について以上のことを前提とする場合、法定外検診の実施に当たって検討するべき要件や着眼点には以下のものがあると考えられる。(1)本人の同意健康診断の結果は、個人情報保護法により「要配慮個人情報」と位置付けられている。従って、その取得にあたっては、労働者に対してその利用目的を明確にした上で、同意を得る必要がある。【個人情報の保護に関する法律】(定義)第2条 (第1項及び第2項 略)3 この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。4~11 (略)(適正な取得)第20条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。2 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。一~八 (略)(取得に際しての利用目的の通知等)第21条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。2~4 (略)【個人情報の保護に関する法律施行令】(要配慮個人情報)第2条 法第2条第3項の政令で定める記述等は、次に掲げる事項のいずれかを内容とする記述等(本人の病歴又は犯罪の経歴に該当するものを除く。)とする。一 (略)二 本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者(次号において「医師等」という。)により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査(同号において「健康診断等」という。)の結果三~五 (略)この同意については、次のようなことが問題となり得る。【法定外検診の同意の在り方】① 個々の労働者ごとに同意を得る必要があるか、それとも過半数の労働組合等の同意で足りるか。② 同意は個別の検診ごとに取る必要があるか、それとも入社時等に包括的にとることで足りるか。③ 同意は明示に取る必要があるか、それとも黙示の同意で足りるか。まず、①については、個人情報保護法第 20 条第2項により、過半数組合の同意では足りず、個々の労働者の同意が必要であると考える。②及び③については、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月7日「労働者の心身の状態に関する情報の適切な取扱い指針公示第1号」)が、「例えば、健康診断の事業者等からの受診案内等にあらかじめ記載する等の方法により労働者に通知することが考えられる
」としており、個別かつ明示に得ることが前提となっていると考えられる。【事前同意の在り方】2 心身の状態の情報の取扱いに関する原則(6)心身の状態の情報の収集に際しての本人同意の取得(9)の表の①及び②に分類される、労働安全衛生法令において労働者本人の同意を得なくても収集することのできる心身の状態の情報であっても、取り扱う目的及び取扱方法等について、労働者に周知した上で収集することが必要である。また、(9)の表の②に分類される心身の状態の情報を事業者等が収集する際には、取り扱う目的及び取扱方法等について労働者の十分な理解を得ることが望ましく、取扱規程に定めた上で、例えば、健康診断の事業者等からの受診案内等にあらかじめ記載する等の方法により労働者に通知することが考えられる。さらに、(9)の表の③に分類される心身の状態の情報を事業者等が収集する際には、個人情報の保護に関する法律第 20 条第2項に基づき、労働者本人の同意を得なければならない。(9)心身の状態の情報の取扱いの原則(情報の性質による分類)心身の状態の情報の取扱いを担当する者及びその権限並びに取り扱う心身の状態の情報の範囲等の、事業場における取扱いの原則について、労働安全衛生法令及び心身の状態の情報の取扱いに関する規定がある関係法令の整理を踏まえて分類すると、次の表のとおりとなる。※ 厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月7日「労働者の心身の状態に関する情報の適切な取扱い指針公示第1号」)心身の状態の情報の分類 左欄の分類に該当する心身の状態の情報の例 心身の状態の情報の取扱いの原則 (略) (略) (略) ③ 労働安全衛生法令において事業者が直接取り扱うことについて規定されていないため、あらかじめ労働者本人の同意を得ることが必要であり、事業場ごとの取扱規程により事業者等の内部における適正な取扱いを定めて運用することが必要である心身の状態の情報(a)健康診断の結果(法定外項目)(b)~(i)(略)個人情報の保護に関する法律に基づく適切な取扱いを確保するため、事業場ごとの取扱規程に則った対応を講じる必要がある。 (2)検項目の社会的相当性自由主義国家においては、「契約は自由」というのが原則である。この原則を徹底すれば、理屈の上では労働者が同意すれば、どのような法定外検診を行っても自由ということになるかもしれない。しかし、先述したように健康情報は機微なものである。その一方で、労働者は働き続けたければ事業主の要求を断りにくいという面もある。従って、法定外健診を行うのであれば、その検診を企業が行うことについての社会的な相当性が必要であろう。例えば、HIV や B 型肝炎の検査については、事業者がその結果を知る必要性のないものであり、事業者がその結果を知る形での検診を行うべきではない。また、(ストレスチェック以外の)精神的な健康に関する検査、認知症の検査なども行うべきではないであろう(※)。※ 運転の業務や危険な職務を行っていたり、精神的な症状を発症するおそれのある化学物質を取り扱っていたりするような労働者の場合は、法定外検診として精神的な健康や認知症の検査を行うことが必要な場合はある。過去に旅客バス運転者の意識消失事例や、てんかん患者とみられる労働者による自動車暴走事故なども発生しており、このような労働者への精神的な領域に関する法定外検診も、社会的な妥当性を有することとなろう。しかし、本小問は、すべての労働者に対して行う検診であるから、危険有害な業務や運転の業務などに従事する労働者についての問題は考慮する必要はない。一般の労働者については、仮に個々の労働者の行動に(精神疾患と思われるような)問題があったとしても、職場としては、疾病性ではなく事例性として対応すればよく、健康診断を行う必要はないであろう。要は、事業者が労働者の健康情報を収集することが、社会通念上相当なのかが問題となるのである。なお、法定外検診項目ではあっても、行政の通達によって指導されている検診(指導勧奨による特殊健康診断)については、社会的妥当性が認められる。しかし、前述したように本小問の場合は、すべての労働者に対して行う検診であるから、そのことを気にする必要はない。(3)検診の項目のメリット法定外検診には、一定のコストがかかるのであるから、その検診の結果をどのように活かすのかが問題となろう。事業者(又は労働者)にとって、必要のない検診は行うべきではないのである(※)。※ 繰り返すが、安全配慮義務の履行、事故の防止のための健康診断は行う必要がある。また、指導勧奨による特殊健康診断も実施するべきであるが、本小問ではそのことは考慮する必要はない。また、その検査項目の侵襲性と、検査から得られるメリットのバランスも検討することが必要であろう。(4)就業規則の定め及び情報の取扱い方法(セキュリティ等)本問の場合、(仮に医師選択の自由を認めるにせよ)全労働者に対する健康診断項目の追加であるから、受診を義務付けるのであろう。そうであれば、労働者の同意を得ることが前提となっているとしても、就業規則に根拠を置くべきである。個人情報を取得して、それを取り扱うのであるから、通常の定期健康診断の情報と同様な扱いをするべきであろう。例えば、生データは医療職のもとにとどめ、上司や人事労務管理者には必要な範囲で加工したデータを提供する、個人情報を取り扱うシステムには十分なセキュリティ対策を行うなどである。(5)不利益取り扱いまた、労働者が健康診断の受診を同意しなかった場合に、不利益取り扱いをするべきではないと考える(※)。※ 安全配慮義務の履行、事故の防止のための健康診断等について、受診に同意しない場合は、一定の不利益取り扱いはやむを得ない。例えば、意識障害についての検診を拒否する労働者は、運転等の業務から外すなどの措置をとることは必要であろう。ただし、その場合でも就業規則上の根拠は必要である。
閉じる【不利益取扱いの禁止】2 心身の状態の情報の取扱いに関する原則(8)労働者に対する不利益な取扱いの防止事業者は、心身の状態の情報の取扱いに労働者が同意しないことを理由として、又は、労働者の健康確保措置及び民事上の安全配慮義務の履行に必要な範囲を超えて、当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことはあってはならない。以下に掲げる不利益な取扱いを行うことは、一般的に合理的なものとはいえないので、事業者は、原則としてこれを行ってはならない。なお、不利益な取扱いの理由が以下に掲げるもの以外のものであったとしても、実質的に以下に掲げるものに該当する場合には、当該不利益な取扱いについても、行ってはならない。① 心身の状態の情報に基づく就業上の措置の実施に当たり、例えば、健康診断後に医師の意見を聴取する等の労働安全衛生法令上求められる適切な手順に従わないなど、不利益な取扱いを行うこと。② 心身の状態の情報に基づく就業上の措置の実施に当たり、当該措置の内容・程度が聴取した医師の意見と著しく異なる等、医師の意見を勘案し必要と認められる範囲内となっていないもの又は労働者の実情が考慮されていないもの等の労働安全衛生法令上求められる要件を満たさない内容の不利益な取扱いを行うこと。③ 心身の状態の情報の取扱いに労働者が同意しないことや心身の状態の情報の内容を理由として、以下の措置を行うこと。(a)解雇すること(b)期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと(c)退職勧奨を行うこと(d)不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命じること(e)その他労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること※ 厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月7日「労働者の心身の状態に関する情報の適切な取扱い指針公示第1号」) -
【解答例】
本小問では、一般定期健康診断について、全ての労働者を対象に健康診断項目を追加するのであるから、受診を(医師選択の自由を前提に)労働者に対して義務付けるとともに、その結果は事業主の側が知ることになるのが前提である。この場合、以下のような要件や着眼点に関して検討するべきであると考える。1 本人の同意健康診断の結果は、個人情報保護法によるよう配慮個人情報であるから、健康診断の実施時に、本人にその結果の使用目的を伝えた上で、個別かつ明示に本人の同意を得るべきである。この場合、過半数労働組合等の同意を得るのみでは足りないと考える。2 検診の項目の社会的相当性法定健診項目に追加する健診項目は、社会通念上、妥当なものであることを要すると考える。例えば、HIV 検査や精神的健康に関する検査を、全労働者に対して行ってその結果を事業者が知るべきではないと考える。3 検診の項目を事業者が行うメリット事業者(又は労働者)にとって、必要のない検診は行うべきではない。また、その検査項目の侵襲性と、検査から得られるメリットのバランスも検討することが必要であろう。4 就業規則の定め及びセキュリティ本小問では、定期健康診断に法定外の検査項目を追加するのであるから、就業規則にその根拠を明記しておく必要がある。また、通常の健康診断の結果と同様、その取扱いには慎重を要し、セキュリティには十分に注意し、生データは医療職が管理し、上司などには加工された必要な情報のみを提供するべきであろう。5 不利益取り扱いの禁止労働者が健康診断の受診を同意しなかった場合に、不利益取り扱いをするようにしないようにする必要がある。閉じる
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【解説】
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(5)リスクアセスメント対象物健康診断はどのような場合にどのような方法で実施すべきか、①対象者、②健康診断項目について、それぞれ簡潔に述べよ。
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【解説】
リスクアセスメント健康診断も、昨年度の口述試験で繰り返し問われている。口述試験の試験官と本小問を作成した試験官が同じなのかもしれない(※)。※ 口述試験の試験官が筆記試験の試験作成に当たる試験官を兼ねることは多いので、筆記試験の全免除を受ける場合でも、口述試験を受ける前に筆記試験の解説に目を通しておくべきである。さて、リスクアセスメント健康診断とは、問題文にもあるように、安衛則第 577 条の2第3項及び第4項に規定する健康診断である。すなわち、本小問は法条文の通り解答すればよい。【労働安全衛生規則】(ばく露の程度の低減等)第577条の2 (第1項及び第2項 略)3 事業者は、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者に対し、法第66条の規定による健康診断のほか、リスクアセスメント対象物に係るリスクアセスメントの結果に基づき、関係労働者の意見を聴き、必要があると認めるときは、医師又は歯科医師が必要と認める項目について、医師又は歯科医師による健康診断を行わなければならない。4 事業者は、第2項の業務に従事する労働者が、同項の厚生労働大臣が定める濃度の基準を超えてリスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるときは、速やかに、当該労働者に対し、医師又は歯科医師が必要と認める項目について、医師又は歯科医師による健康診断を行わなければならない。5~12 (略)なお、本小問の解答には必要はないが、リスクアセスメント対象物健康診断に関する基本通達の関係部分を参考までに以下に掲げておく。【リスクアセスメント健康診断について】第1 改正の趣旨及び概要等2 改正省令の概要(3)リスクアセスメントに基づく自律的な化学物質管理の強化ウ リスクアセスメント対象物に係るばく露低減措置等の事業者の義務(安衛則第 577 条の2、第 577 条の3関係)③ リスクアセスメントの結果に基づき事業者が行う健康診断、健康診断の結果に基づく必要な措置の実施等(安衛則第 577 条の2第3項から第5項まで、第8項及び第9項関係)事業者は、リスクアセスメント対象物による健康障害の防止のため、リスクアセスメントの結果に基づき、関係労働者の意見を聴き、必要があると認めるときは、医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)が必要と認める項目について、医師等による健康診断を行い、その結果に基づき必要な措置を講じなければならないこと。また、事業者は、安衛則第 577 条の2第2項の業務に従事する労働者が、濃度基準値を超えてリスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるときは、速やかに、医師等が必要と認める項目について、医師等による健康診断を行い、その結果に基づき必要な措置を講じなければならないこと。(以下略)第4 細部事項(令和6年4月1日施行)7 リスクアセスメント対象物に係る事業者の義務関係(2)安衛則第 577 条の2第3項関係ア 本規定は、リスクアセスメント対象物について、一律に健康診断の実施を求めるのではなく、リスクアセスメントの結果に基づき、関係労働者の意見を聴き、リスクの程度に応じて健康診断の実施を事業者が判断する仕組みとしたものであること。イ 本規定の「必要があると認めるとき」に係る判断方法及び「医師又は歯科医師が必要と認める項目」は、別途示すところに留意する必要があること。(3)安衛則第 577 条の2第4項関係ア 本規定は、事業者によるばく露防止措置が適切に講じられなかったこと等により、結果として労働者が濃度基準値を超えてリスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるときに、健康障害を防止する観点から、速やかに健康診断の実施を求める趣旨であること。イ 本規定の「リスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるとき」には、リスクアセスメント対象物が漏えいし、労働者が当該物質を大量に吸引したとき等明らかに濃度の基準を超えてばく露したと考えられるとき、リスクアセスメントの結果に基づき講じたばく露防止措置(呼吸用保護具の使用等)に不備があり、濃度の基準を超えてばく露した可能性があるとき及び事業場における定期的な濃度測定の結果、濃度の基準を超えていることが明らかになったときが含まれること。ウ 本規定の「医師又は歯科医師が必要と認める項目」は、別途示すところに留意する必要があること。※ 厚生労働省「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について」(令和4年5月 31 日基発 0531 第9号(最終改正:令和6年5月8日基発 0508 第3号))なお、本通達にある「別途示すところ」とは、「リスクアセスメント対象物健康診断に関するガイドラインの策定等について」(令和5年 10 月 17 日基発 1017 第1号)のことをいうものである(※)。※ 実務においては、このガイドラインの策定に当たってのパブコメの結果「「リスクアセスメント対象物健康診断に関するガイドライン(案)に関する御意見の募集について」に対して寄せられた御意見について」(令和5年 10 月 17 日)も参考となろう。さらに、リスクアセスメント健康診断については、実務上では疑問が多いためか、他に政府から「リスクアセスメント対象物健康診断に関するQ&A」が示されている。また、省令改正に当たって委員会において検討が行われているが、その結果が「化学物質の自律的な管理における健康診断に関する検討報告書」としてまとめられている。ところで、解答には「3項健診」「4項健診」という言葉を用いたが、普通に使われている用語なので、特に定義を示す必要などはないと考える。閉じる
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【解答例】
1 3項健診① 対象者リスクアセスメント対象物に係るリスクアセスメントの結果に基づき、関係労働者の意見を聴き、必要があると認める労働者② 健康診断項目医師又は歯科医師が必要と認める項目2 4項健診① 対象者厚生労働大臣が定める濃度の基準を超えてリスクアセスメント対象物にばく露したおそれがある労働者② 健康診断項目医師又は歯科医師が必要と認める項目閉じる
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【解説】
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(6)本来6か月以内ごとに1回実施すべき特殊健康診断の頻度を1年以内ごとに1回に緩和できる場合があるが、緩和の条件を三つ提示せよ。また、緩和しても差し支えないと考えられた背景を説明せよ。
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【解説】
1 緩和の条件本小問も基本的に法令(及び通達等)に関する問題である。本小問で問われている特殊健康診断の頻度の緩和についての法令上の根拠は、特化則を例に挙げると次のようになっている。【特定化学物質障害予防規則】(健康診断の実施)第39条 事業者は、令第22条第1項第三号の業務(石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等(石綿則第2条第4項に規定する石綿分析用試料等をいう。)の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務及び別表第一第三十七号に掲げる物を製造し、又は取り扱う業務を除く。)に常時従事する労働者に対し、別表第三の上欄に掲げる業務の区分に応じ、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後同表の中欄に掲げる期間以内ごとに1回、定期に、同表の下欄に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。2及び3 (略)4 第1項の業務(令第16条第1項各号に掲げる物(同項第四号に掲げる物及び同項第九号に掲げる物で同項第四号に係るものを除く。)及び特別管理物質に係るものを除く。)が行われる場所について第36条の2第1項の規定による評価が行われ、かつ、次の各号のいずれにも該当するときは、当該業務に係る直近の連続した3回の第1項の健康診断(当該健康診断の結果に基づき、前項の健康診断を実施した場合については、同項の健康診断)の結果、新たに当該業務に係る特定化学物質による異常所見があると認められなかつた労働者については、当該業務に係る第1項の健康診断に係る別表第三の規定の適用については、同表中欄中「6月」とあるのは、「1年」とする。一 当該業務を行う場所について、第36条の2第1項の規定による評価の結果、直近の評価を含めて連続して3回、第一管理区分に区分された(第2条の3第1項の規定により、当該場所について第36条の2第1項の規定が適用されない場合は、過去1年6月の間、当該場所の作業環境が同項の第一管理区分に相当する水準にある)こと。二 当該業務について、直近の第1項の規定に基づく健康診断の実施後に作業方法を変更(軽微なものを除く。)していないこと。5~7 (略)これに関する基本通達の関係部分を以下に掲げておく。本小問の解答は、この通達の第1の2の(8)の①から③を挙げればよい。【特殊健康診断の頻度の緩和について】第1 改正の趣旨及び概要等2 改正省令の概要(8)作業環境管理やばく露防止措置等が適切に実施されている場合における特殊健康診断の実施頻度の緩和(特化則第 39 条第4項、有機則第 29 条第6項、鉛則第 53 条第4項及び四アルキル則第 22 条第4項関係)本規定による特殊健康診断の実施について、以下の①から③までの要件のいずれも満たす場合(四アルキル則第 22 条第4項の規定による健康診断については、以下の②及び③の要件を満たす場合)には、当該特殊健康診断の対象業務に従事する労働者に対する特殊健康診断の実施頻度を6月以内ごとに1回から、1年以内ごとに1回に緩和することができること。ただし、危険有害性が特に高い製造禁止物質及び特別管理物質に係る特殊健康診断の実施については、特化則第 39 条第4項に規定される実施頻度の緩和の対象とはならないこと。① 当該労働者が業務を行う場所における直近3回の作業環境測定の評価結果が第1管理区分に区分されたこと。② 直近3回の健康診断の結果、当該労働者に新たな異常所見がないこと。③ 直近の健康診断実施後に、軽微なものを除き作業方法の変更がないこと。第3 細部事項(令和5年4月1日施行)8 作業環境管理やばく露防止措置等が適切に実施されている場合における特殊健康診断の実施頻度の緩和(特化則第 39 条第4項、有機則第 29 条第6項、鉛則第 53 条第4項及び四アルキル則第 22 条第4項関係)ア 本規定は、労働者の化学物質のばく露の程度が低い場合は健康障害のリスクが低いと考えられることから、作業環境測定の評価結果等について一定の要件を満たす場合に健康診断の実施頻度を緩和できることとしたものであること。イ 本規定による健康診断の実施頻度の緩和は、事業者が労働者ごとに行う必要があること。ウ 本規定の「健康診断の実施後に作業方法を変更(軽微なものを除く。)していないこと」とは、ばく露量に大きな影響を与えるような作業方法の変更がないことであり、例えば、リスクアセスメント対象物の使用量又は使用頻度に大きな変更がない場合等をいうこと。エ 事業者が健康診断の実施頻度を緩和するに当たっては、労働衛生に係る知識又は経験のある医師等の専門家の助言を踏まえて判断することが望ましいこと。オ 本規定による健康診断の実施頻度の緩和は、本規定施行後の直近の健康診断実施日以降に、本規定に規定する要件を全て満たした時点で、事業者が労働者ごとに判断して実施すること。なお、特殊健康診断の実施頻度の緩和に当たって、所轄労働基準監督署や所轄都道府県労働局に対して届出等を行う必要はないこと。※ 厚生労働省「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について」(令和4年5月 31 日基発 0531 第9号(最終改正:令和6年5月8日基発 0508 第3号))2 緩和しても差し支えないと考えられた背景緩和しても差し支えないと考えられた背景については、厚労省の「リスクに応じた健康診断の実施頻度について」(「第 13 回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」の資料2)に明記されている。これによると、特殊健康診断の実施頻度の緩和の背景は次のようなものであるとされている。【リスクに応じた健康診断の実施頻度の背景・考え方】○ 化学物質管理は、作業環境管理、作業管理、健康管理を適切に行うことで労働者の健康を確保するものである。このうち、作業環境管理、作業管理は労働者を有害物にばく露させないようにする(できる限りばく露を減らす)対策であり、健康管理はばく露しているかどうか(健康に影響が出ていないか)を確認するものである。○ 健康管理については、化学物質の危険・有害性等やばく露リスクに応じて、定期的な健康診断が必要な物質(有機溶剤、鉛、四アルキル鉛、特定化学物質(第1類物質及び第2類物質の一部))、定期的な健康診断が必要でない物質(特定化学物質のうち第3類物質やリスク評価の結果特定化学物質障害予防規則に規定されなかったもの)、また、配置転換後も定期的な健康診断が必要な物質(特定化学物質のうち特別管理物質)がある。○ 海外の動向調査によれば、有害物へのばく露の可能性がある労働者への健診は「1年~2年以内ごとに1回」が主流であり、「6カ月以内ごとに1回」のものは一部のものだけであった。また、がん検診において、原因へのばく露の低下と罹患率の低下を背景に検診間隔を毎年から隔年へ変更する施策がされている。○ 現行で「6月以内ごとに1回」定期に実施している健康診断については、近年の職場環境の改善や、業種・作業によっては取扱量が極めて少ない場合があるなど、ばく露が著しく低い労働者に対して、必要以上に健康診断が実施されている可能性があり、健康診断の実施頻度は、当該物質の危険・有害性等や労働者のばく露の状況に応じて適切な頻度で実施する必要がある。この頻度を「1年以内ごとに1回」、「2年以内ごとに1回」、・・・・・・、「5年以内ごとに1回」などと緩和する場合には、緩和の程度に応じて、ばく露が少なくなっていることを適切なばく露評価指標等を用いて確認する必要がある。※ 厚生労働省「リスクに応じた健康診断の実施頻度について」(第 13 回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会資料2)緩和しても差し支えないと考えられた背景については、上記の3番目の○が該当するので、そのまま解答すればよい。閉じる
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【解答例】
1 緩和の条件緩和の条件は以下の3点であるが、特別管理物質等は対象とはならない。く① 当該労働者が作業する単位作業場所における直近3回の作業環境測定結果が第一管理区分に区分されたこと(四アルキル鉛を除く。)。① 直近3回の健康診断において、当該労働者に新たな異常所見がないこと。① 直近の健康診断実施日から、ばく露の程度に大きな影響を与えるような作業内容の変更がないこと。2 緩和しても差し支えないと考えられた背景海外の動向調査によれば、有害物へのばく露の可能性がある労働者への健診は「1年~2年以内ごとに1回」が主流であり、「6カ月以内ごとに1回」のものは一部のものだけであった。また、がん検診において、原因へのばく露の低下と罹患率の低下を背景に検診間隔を毎年から隔年へ変更する施策がされている。閉じる
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【解説】
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(7)産業医を選任している事業場において、産業医はこれらの健康診断にどのように関与すべきか、項目を四つ挙げて簡潔に説明せよ。
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【解説】
1 法令における産業医の職務安衛法は、事業者に対して、産業医をして「健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関する」事項について、医学に関する専門的知識を必要とするものを行わせることを義務付けている。ただし、その内容についての詳細が、法令に規定されているわけではない。【労働安全衛生法】(産業医等)第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。2~6 (略)【労働安全衛生規則】(産業医及び産業歯科医の職務等)第14条 法第13条第1項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。一 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。二~九2 (略)3 産業医は、第1項各号に掲げる事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。4~7 (略)2 具体的な産業医の役割(1)健康診断一般厚労省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成8年 10 月1日健康診断結果措置指針公示第1号(最終改正:平成 29 年4月 14 日健康診断結果措置指針公示第9号))は、健康診断について、次のように産業医が関わるべきとしている。【産業医と健康診断の関り】2 就業上の措置の決定・実施の手順と留意事項(1)健康診断の実施(略)また、産業医の選任義務のある事業場においては、事業者は、当該事業場の労働者の健康管理を担当する産業医に対して、健康診断の計画や実施上の注意等について助言を求めることが必要である。(3)健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取事業者は、労働安全衛生法第 66 条の4の規定に基づき、健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)について、医師等の意見を聴かなければならない。イ 意見を聴く医師等事業者は、産業医の選任義務のある事業場においては、産業医が労働者個人ごとの健康状態や作業内容、作業環境についてより詳細に把握しうる立場にあることから、産業医から意見を聴くことが適当である。(略)(4)就業上の措置の決定等イ 労働者からの意見の聴取等(略)なお、産業医の選任義務のある事業場においては、必要に応じて、産業医の同席の下に労働者の意見を聴くことが適当である。(5)その他の留意事項ロ 保健指導(略)なお、産業医の選任義務のある事業場においては、個々の労働者ごとの健康状態や作業内容、作業環境等についてより詳細に把握し得る立場にある産業医が中心となり実施されることが適当である。ニ 健康情報の保護(略)事業者は、就業上の措置の実施に当たって、産業保健業務従事者(産業医、保健師等、衛生管理者その他の労働者の健康管理に関する業務に従事する者をいう。)以外の者に健康情報を取り扱わせる時は、これらの者が取り扱う健康情報が就業上の措置を実施する上で必要最小限のものとなるよう、必要に応じて健康情報の内容を適切に加工した上で提供する等の措置を講ずる必要があり、診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の加工前の情報や詳細な医学的情報は取り扱わせてはならないものとする。※ 厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成8年 10 月1日健康診断結果措置指針公示第1号(最終改正:平成 29 年4月 14 日健康診断結果措置指針公示第9号))すなわち、①健康診断の実施に当たって事業者に意見を述べ、②健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取に応じ、③就業上の措置の決定等について意見を述べ、④保健指導の各段階において関わり、また、⑤健康診断の結果の生データなどの健康情報を取り扱うことが期待されているのである。(2)リスクアセスメント対象物健康診断さらに、リスクアセスメント対象物健康診断に関しては、厚労省の「化学物質の自律的な管理における健康診断に関する検討報告書」(2023 年8月7日)が、リスクアセスメント対象物健康診断への産業医のかかわりについて、次のように述べている。【産業医と健康診断の関り】4.検討結果(2)リスクアセスメント対象物健康診断の実施の流れリスクアセスメント対象物健康診断は、以下に示す手順で実施することが想定される。① リスクアセスメント対象物に関するリスクアセスメントの結果を確認事業者は、産業医の選任義務のある事業場においては、産業医が労働者個人ごとの健康状態や作業内容、作業環境についてより詳細に把握しうる立場にあることから、産業医から意見を聴くことが適当である。<事業者による健康診断の要否の判断>②ー1 リスクアセスメントの結果に基づき、当該化学物質のばく露による労働者の健康障害リスクを検討の上、その健康障害リスクの程度に応じて産業医等および関係労働者の意見を聴き、事業者が健康診断の実施の要否を決定。②ー2 (略)③ (略)④ 健康診断を実施すると決定した労働者について、事業者から医師または歯科医師に健診項目および実施の頻度の検討を依頼(必要な情報を提供)⑤ 医師または歯科医師の検討結果を踏まえて、事業者が健診項目を決定⑥ 健康診断を実施⑦ 当該物質による化学物質へのばく露による所見が認められた労働者について、事業者が就業上の措置について医師または歯科医師の意見を聴取(必要な情報を提供)⑧ 医師または歯科医師の意見を踏まえて、事業者が必要な就業上の措置を実施なお、上記④~⑧における医師または歯科医師は、産業医、健康診断機関の医師・歯科医師、その他労働衛生にかかる知識や事業場の状況をよく知る医師または歯科医師であることが望ましい。。以下、各手順における留意点にかかる検討結果を示す。ⅰ)健康診断の実施の要否に関する判断の考え方(本文略)(注7)健康診断の実施の要否の判断に際して、産業医を選任している事業場においては、産業医の意見を聴取すること。産業医を選任していない小規模事業場においては、必要に応じて本社の産業医(いる場合)、労働衛生機関、産業保健総合支援センターや地域産業保健センターに相談することも考えられる。その際、これらの者が事業場の化学物質に関する状況を具体的に把握した上で助言できるよう、事業場において使用している化学物質の種類、作業内容、作業環境などの情報を提供すること。※ 厚生労働省「化学物質の自律的な管理における健康診断に関する検討報告書」(2023 年8月7日)すなわち、リスクアセスメント対象物健康診断の実施の有無、実施の頻度、さらには健診項目の決定などについて産業医が関わることが期待されているのである。閉じる
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【解答例】
産業医は労働安全衛生法の健康診断に関して以下のように関わるべきである。1 健康診断の実施に当たっての事業者への助言健康診断の計画や実施上の注意等について事業者への助言を行う。とりわけリスクアセスメント対象物健康診断に関しては、その実施の有無、実施する場合の頻度、さらには健診の項目などについて助言を行う。2 事後措置についての事業者への助言等健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)について、就業上の措置の決定に関する助言を行う。また、必要に応じて、労働者の意見を聴くときに同席する。3 保健指導へのかかわり健康診断の結果、必要に応じて産業医が中心となって保健指導を行う。4 健康診断の結果の情報の取扱い健康診断の結果の生データについて管理し、上司や人事労務管理者に対して、必要な加工を加えて提供する。閉じる
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【解説】





