労働衛生コンサルタント試験 健康管理 2024年 問2

非電離放射線の物理的性質及び健康への影響とその予防




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2人で受験勉強する医療関係者

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。

 各小問をクリックすると解説と解答例が表示されます。もう一度クリックするか「閉じる」ボタンで閉じることができます。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行いました。

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2024年度(令和6年度) 問 2 非電離放射線に関するかなり高度な知識問題。仕事で、関連業務に携わっていない受験者には難問か。
非電離放射線
2025年05月10日執筆

問2 放射線は、電離放射線と非電離放射線に分類される。職場でばく露される非電離放射線には、紫外線、赤外線やレーザー光線などの有害光線がある。非電離放射線について、以下の設問に答えよ。

  • (1)非電離放射線について、電離放射線と異なる物理的性質を二つ挙げよ。

    • 【解説】
      1 電離する能力

      電磁スペクトル

      図のクリックで拡大します

      ※ 電気学会:電磁界の生体影響に関する現状評価と今後の課題 第Ⅱ期報告書(図1 電磁スペクトル)より

      電離放射線は、周波数が高いためエネルギーが大きく、文字通り原子や電子を電離する能力を持つ放射線である。一方、非電離放射線は、これもその文字通り、電離する能力を持たないものが多い(※)
      その周波数における境界は、3 PHz(ペタヘルツ:3×1015Hz)程度である。なお、放射線(radiation)とは、とくに断らないかぎり電離放射線のことを意味する。
      ※ 厳密には、“非電離” は文字通りの意味を持たない。紫外線は、非電離放射線に分類されることが多いが、電離能力がある。このため、紫外線は電離放射線の生物作用の研究に使用されている。
      非電離放射線は、電離能力はないものの、強力なものでは原子を励起させる能力がある。そのため、強力な非電離放射線はヒトに健康影響を与えるので注意が必要である。
      2 周波数と透過力
      非電離放射線は電離放射線よりも周波数が低い。このため、回折しやすく、大気の水分などに吸収されにくく、散乱しにくいという物理的な性質があるので、一般に透過力が高い。
      3 具体例(参考)
      非電離放射線の例としては、電波、マイクロ波、赤外線、可視光線、近紫外線等(※)がある。
      ※ 紫外線は、周波数が高いものでは電離作用があるが、通常は非電離放射線に分類することが多い(環境省「Q&A 放射線にはどんな種類がありますか。」など)。
      なお、電離放射線については、電離則第2条第1項に定義があり、次のように示されている。ちなみに第一号から第三号までが粒子線で、第四号が電磁波と解されている(※)
      ※ 物理的な厳格さとしては、電離放射線は粒子としての性格と波としての性格を共に有しており、粒子線と電磁波は原理的に区別できるものではない。粒子線も波の性格である干渉を起こすし、電磁波も出力が微小になると粒のような性格を持つ(数えることができる)。
      【電離放射線障害防止規則】
      (定義等)
      第2条 この省令で「電離放射線」(以下「放射線」という。)とは、次の粒子線又は電磁波をいう。
       アルフア線、重陽子線及び陽子線
       ベータ線及び電子線
       中性子線
       ガンマ線及びエツクス線
      2~4 (略)
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    • 【解答例】
      非電離放射線の、電離放射線と異なる物理的性質としては以下の2点があげられる。
      1 電離放射線が電離作用を持つのに対し、非電離放射線は電離作用を持たないかあっても弱い。
      2 非電離放射線は、電離放射線に比して周波数が低い(その周波数における境界は、3×1015Hz 程度である)。従って、回折しやすく、大気の水分などに吸収されにくく、散乱しにくいという物理的な性質があるので、一般に透過力が高い。
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  • (2)紫外線及び赤外線について、次の問に答えよ。
    ① 紫外線、赤外線の発生を伴う作業の具体例をそれぞれ挙げよ。

    • 【解説】
      本小問については、現実に、紫外線、赤外線の発生を伴う作業であれば、何を挙げても得点できるだろう。なお、挙げるべき数が書かれていないので、1つでも正しい答えが書いてあれば得点できるはずで、複数の答えを書いてあってもそれ以上の加点はないだろう。間違いのリスクを考えれば確実だと思うものを一つだけ挙げておく方が得策である(※)
      ※ 解答例には、複数の例を挙げたが、ひとつだけを記せばよい。
      なお、昭和 53 年3月 30 日基発第 186 号「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」に、紫外線、赤外線の発生を伴う作業の例が挙げられている。
      かなり古い情報ではあるが、現時点においても適切な内容である。
      【紫外線発生業務と赤外線発生業務】
      第二 新規定の内容
      二 別表各号の規定の内容
      (二)「物理的因子による次に掲げる疾病」(第二号)
      イ 「紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患」(第二号一)
      〔解説〕
      (イ)(略)
      (ロ)該当業務としては、例えば、アーク溶接・溶断、ガス溶接・溶断、殺菌、検査等の業務がある。
      (ハ)及び(ニ)(略)
      ロ 「赤外線にさらされる業務による網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患」(第二号二)
      〔解説〕
      (イ)(略)
      (ロ)該当業務としては、例えば、製鉄、製鋼、ガラス等の炉前作業、造塊などの高熱物体取扱作業、赤外線乾燥作業等に係る業務がある。
      (ハ)及び(ニ)(略)
      ※ 厚生労働省「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」(最終改正:平成 31 年4月 10 日基発 0410 第1号)
      なお、「炎天下での作業」は、実務では紫外線の防止がかなり重要とはなるが、「紫外線、赤外線の発生を伴う」かと言われると(太陽から発生はしているが・・・)やや疑問であり、書かない方がよい。
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    • 【解答例】
      (下記のうちそれぞれひとつづつ記せばよい。)
      1 紫外線の発生を伴う作業:アーク溶接・溶断、ガス溶接・溶断、殺菌、検査等の業務
      2 赤外線の発生を伴う作業:製鉄、製鋼、ガラス等の炉前作業、造塊などの高熱物体取扱作業、赤外線乾燥作業等に係る業務
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  •   ② 紫外線と赤外線の性質の違いについて、波長、組織透過性、組織への作用、熱発生、発がん性のそれぞれについて述べよ。

    • 【解説】
      1 波長
      紫外線と赤外線の波長については、JIS B 7079:2015「光学及びフォトニクス−スペクトル帯域」の表1に示されている(※)。紫外線と赤外線の波長については、テキストによってやや異なるが、これに基づいて解答すれば得点できるだろう。
      ※ 下表は JIS B 7079:2015 の表1から必要部分を抽出したものである。
      具体的な周波数を忘れている場合は、紫外線の波長は可視光線よりも短く、赤外線の波長は可視光線よりも長いと書いておけば、たとえ部分点でも加点はされるだろう。
      放射の表記 スペクトル帯域 a)
      簡略表記 波長
      nm
      周波数
      THz
      紫外放射 極端紫外 UV UVC EUV 1~100 3×105~3,000
      真空紫外 VUV 100~190 3,000~1,580
      深紫外 DUV 190~280 1,580~1,070
      中紫外 UV-B 280~315 1,070~950
      近紫外 UV-Ab 315~380 950~790
      可視放射、光 VIS 380~780 790~385
      赤外放射 近赤外 IR IR-A NIR 780~1,400 385~215
      IR-B 1,400~3,000 215~100
      中赤外 IR-C MIR 3,000~50,000 100~6
      遠赤外 FIR 50,000~106,000 6~0.3
      注a)帯域端は、波長に関しては正確であり、周波数、波数及び光子エネルギーに関しては便宜のための近似値である。
      2 組織透過性
      皮膚の構造と光の波長別透過特性

      図のクリックで拡大します

      ※ 国立環境研究所「日光紫外線の人体への影響」より

      一般に紫外線よりも波長の長い電磁波については、透過する深度は波長の長い方が大きい。図は、国立環境研究所のサイトからの引用であるが、UVC-C が表皮にしか到達しないのに対し、赤外線は皮下脂肪に達するとされている。
      電磁波の赤外線の生体透過について、菊地(※)が、端的に表現している。これによれば「一般に紫外線波長以上の電磁波の生体への透過深度は、波長が長くなると(周波数が低くなると)深部に到達しやすくなる。このため。可視光線よりは近赤外線の方が透過深度は大きくなるが、逆に赤外領域では水の吸収などが無視できなくなるため必ずしも波長が長くなれば(遠赤外線になれば)透過性が良くなるとは限らない。生体を対象とした場合、生体組織の 60 ~ 70 %は水分で構成されており、可視領域より長波長側では、電磁波の透過・吸収は水分によって支配されていることが多い」とされている。
      ※ 菊地眞「医用応用」(日本赤外線学会誌 Vol.1 No.1 1991年)
      また、梅澤他に、「生体深部の構造や情報を可視化できる光として注目され、筆者らも研究を進めていたのが近赤外光(波長約 700 ~ 2500 nm)である。近赤外光は、紫外、可視光といった近傍の波長域に比べて生体透過性が高いことから、生体深部が透明に見える「生体の窓」として注目されている波長域である」との表現がある。
      ※ 梅澤雅和他「生体はどうすれば透明になるか?」(ぶんせき 2020年11月)
      これらをまとめて書けば、十分に加点されるだろう。
      3 組織への作用
      本小問の「組織への作用」意味だが、組織とは医学用語では、関連する細胞が合体したもの、言葉を換えればほぼ同一の機能と構造とを持つ細胞の集団のことである。また、作用とは、生体に何らかの変化を与えること(又はその変化)を指す。
      眼障害、皮膚障害はこの後の設問で問われており、発がん性についてはこの小問で別途問われているので、ここでは、それ以外についての解答が求められている。
      (1)紫外線
      紫外線は、皮膚でビタミンDを合成する作用があるが、同時に、コラーゲンやエラスチンにダメージを与えて老化に影響を与える。このため、色素細胞がメラニンを合成して、角化細胞の基底細胞の核を覆って遺伝子を紫外線から保護する。これが日焼けである(※)
      ※ 日焼けそのものは数日で回復するが、これを繰り返すと、晩年になって脂漏性角化症などの腫瘍を生じ、これがまれに有棘細胞癌や基底細胞癌、悪性黒色腫等の悪性の腫瘍(皮膚癌)を発症することがある。
      (2)赤外線
      赤外線は、適度に浴びれば、毛細血管を拡張し、全身の血液循環を活性化させ、新陳代謝を促進する効果がある。赤外線は皮膚組織に吸収され熱作用(※)をもたらすことが挙げられる。
      ※ 非電離放射線の非熱作用については、例えば布施正他「遠赤外放射の人体への応用」(照明学会誌 Vol.72 No.12 1988年)によれば、明確ではないとされている。
      また、近赤外領域の赤外線はヘモグロビンに吸収されて日焼紅班を引き起こすことがある(※)
      ※ 例えば、菊地眞「医用応用」(日本赤外線学会誌 Vol.1 No.1 1991年)など
      4 熱発生
      赤外線は、熱線という別名からも分かるように、照射物に吸収されて熱作用を及ぼす。これに対し、紫外線には化学線という別名もあり、化学作用を起こすが、熱作用はほとんどない。
      遠赤外線と近赤外線では、遠赤外線の方が吸収される震度は深い。このため近赤外線は皮膚の表面付近の温度を上げるが、遠赤外線は組織の深い部分の温度を上げる。
      5 発がん性
      (1)紫外線
      すでに述べたように、紫外線に発がん性があることはかなり古くから知られていた(※)
      ※ 市橋正光「紫外線発癌1.疫学,動物実験,および分子異常」(Skin Cancer Vol.7 No.1 1992年)など参照
      IARC は、太陽光(Solar radiation)、紫外線(wavelengths100-400nm,encompassingUVA,UVB,andUVC)、及び紫外線日焼け機器(UV-emitting tanning devices)を Group 1 に分類している(※)
      ※ Agents Classified by the IARC Monographs, Volumes 1–124 による。
      また、日本産業衛生学会は「溶接に伴う紫外放射」の発がん区分を第1群としている(※)
      ※ 日本産業衛生学会「許容濃度の暫定値(2021)の提案理由」(産衛誌 Vol.63 2021年)による。
      (2)赤外線
      赤外線を含む非電離放射線(紫外線は電離作用を持たない周波数の物に限る。また、無線周波電磁界は別とする。)について、発がん性についての明確な証拠はない(※)
      ※ 労働安全衛生総合研究所「電磁波の健康影響に関する調査研究」(2019 年7月)など。
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    • 【解答例】
      1 波長
      紫外線の波長は可視光線よりも短く、1nm から 380 nm 程度である。一方、赤外線の波長は可視光線よりも長く 780 nm から 106,000 nm 程度である。
      2 組織透過性
      組織透過性は、波長の長いものの方が高く、紫外線よりも赤外線の方が高い。
      3 組織への作用
      紫外線は、皮膚でビタミンDを合成する作用があるが、同時に、コラーゲンやエラスチンにダメージを与えて老化に影響を与える。赤外線は、毛細血管を拡張し、全身の血液循環を活性化させ、新陳代謝を促進する効果があるが、近赤外領域の赤外線はヘモグロビンに吸収されて日焼紅班を引き起こすことがある。
      4 熱発生
      赤外線は、熱線という別名からも分かるように、照射物に吸収されて熱作用を及ぼす。これに対し、紫外線は、化学作用を起こすが、熱作用はほとんどない。
      5 発がん性
      紫外線にはヒトに対する発がん性(皮膚がん)があることが知られている。赤外線については、ヒトに発がん性があると信じるに足る証拠はない。
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  •   ③ 紫外線と赤外線へのばく露で生じる眼障害をそれぞれ二つずつ挙げよ。

    • 【解説】
      (1)紫外線
      紫外線による健康影響

      図のクリックで拡大します

      ※ 環境省「紫外線 環境保健マニュアル 2020」より

      紫外線へのばく露は、環境省の「紫外線 環境保健マニュアル 2020」の図にあるように、皮膚や眼への急性及び慢性の健康影響があることが明らかになっている。
      このうち眼への影響については、急性の眼炎(雪目炎、電気性眼炎など)、紫外線角膜炎や。慢性の翼状片、白内障が知られている。(※)
      なお、ACGIHは、2022 年に 240nm より短い波長の紫外線の TLV を改訂し、222nm 付近の UVC の TLV を従来の 22.9mJ/cm2 から、160mJ/cm2(眼)、479mJ/cm2(眼が保護されている条件下での皮膚)に引き上げる等の見直しをしている
      ※ ACGIHは、2022 年から、222nm 付近の UVC の TLV を眼と皮膚を分けて評価する形に改めている。
      また、日本産業衛生学会は、紫外放射(波長 180~400 m)の許容基準を 30 J/m2(実効照度の1日8時間の時間積分値として)としている。
      ※ 日本産業衛生学会「紫外放射の許容基準(2006年度)の提案理由」(産衛誌 Vol.48 2006年)による(2024年時点における最新の数値である)。なお、この値は、角膜、結膜、皮膚に対する急性障害の防止に関する許容値であり、またレーザー放射には適用されない。
      (2)赤外線
      赤外線は、紫外線に比較すると健康への影響は少ない。しかし、ガラス職人や溶鉱炉付近での作業など、強い赤外線(熱線)に長時間暴露している場合は、白内障のリスクが高まることが知られている(※)
      ※ 奥野勉他「水晶体混濁を引き起こす赤外放射の照度の閾値とその曝露時間依存性」(労働安全衛生総合研究所特別研究報告 JNIOSH-SRR-NO.44 2014年)など
      また、赤外線は体温を上げる効果があることから、熱中症のリスクを上げることとなり、また強力な赤外線では網膜熱傷のおそれがある。
      一方、赤外線については、近赤外線が眼瞼炎、角膜炎、調節障害、早期老眼、虹彩萎縮、白内障、黄斑変性などの原因になることが知られている(※)。なお、赤外線による角膜炎は、紫外線によるものとは異なり、急性ではなく遅発性である。
      ※ 関亮「紫外・赤外線の目に対する作用効果と安全」(照明学会雑誌 Vol.61 No.11)など。
      (3)行政解釈
      なお、昭和 53 年3月 30 日基発第 186 号「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」に、眼疾患の例が挙げられている。
      【紫外線発生業務と赤外線発生業務】
      第二 新規定の内容
      二 別表各号の規定の内容
      (二)「物理的因子による次に掲げる疾病」(第二号)
      イ 「紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患」(第二号一)
      〔解説〕
      (イ)及び(ロ)(略)
      (ハ)「前眼部疾患」とは、主として結膜又は角膜に起こる疾病をいい、これには結膜炎、角膜表層炎等の疾患がある。眼に紫外線が照射されると、大部分が角膜で吸収され紫外線眼炎をおこす。この紫外線眼炎のうち、電気溶接あるいは水銀灯などの特殊電球などによるものは電気性眼炎と呼ばれる。
      (ニ)(略)
      ロ 「赤外線にさらされる業務による網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患」(第二号二)
      〔解説〕
      (イ)及び(ロ)(略)
      (ハ)「網膜火傷、白内障等の眼疾患」について
      a 「等」には、眼瞼縁炎、角膜炎、調節障害、早期老眼、虹彩萎縮、黄斑変性等がある。
      b 赤外線による白内障は、急性疾患である電気性眼炎と異なり、比較的長期間就労している者に発生する慢性疾患である。
      (ニ)(略)
      ※ 厚生労働省「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」(最終改正:平成 31 年4月 10 日基発 0410 第1号)
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    • 【解答例】
      紫外線による眼障害には、急性の眼炎、慢性の白内障などがある。
      赤外線による眼障害には、白内障、黄斑変性などがある。
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  •   ④ 紫外線へのばく露による皮膚障害を二つ、赤外線へのばく露による皮膚障害を一つ挙げよ。

    • 【解説】
      すでに述べているように、紫外線は皮膚への様々な障害をもたらす。
      急性の障害としては、いわゆる日焼けがあり、慢性の障害としては菱形皮膚、日光黒子、良性腫瘍、前がん症、皮膚がん等等がある。
      また、赤外線による皮膚障害としては、近赤外線は、透過性が高いため、真皮に達して基底膜細胞、毛細血管及び皮膚細胞にダメージを与えて皮膚の肥厚、充血、乾燥などを引き起こす。遠赤外線では、日焼けの原因となり、激しい場合は熱火傷の状態となる。
      なお、昭和 53 年3月 30 日基発第 186 号「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」に、紫外線による皮膚疾患の例が挙げられている。
      【紫外線発生業務と赤外線発生業務】
      第二 新規定の内容
      二 別表各号の規定の内容
      (二)「物理的因子による次に掲げる疾病」(第二号)
      イ 「紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患」(第二号一)
      〔解説〕
      (イ)~(ハ)(略)
      (ニ)「皮膚疾患」については、アーク溶接及びガス溶接で発生する紫外線は、ばく露の程度により、ばく露皮膚の皮膚火傷をきたすことがあるとされている。
      ロ 「赤外線にさらされる業務による網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患」(第二号二)
      〔解説〕
      (イ)~(ハ)(略)
      (ニ)「皮膚疾患」については、赤外線による皮膚障害が発生した場合には本規定が適用される。なお、第二号九に掲げる疾病に該当する皮膚疾患は除かれる。
      ※ 厚生労働省「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」(最終改正:平成 31 年4月 10 日基発 0410 第1号)
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    • 【解答例】
      紫外線へのばく露による皮膚障害には、菱形皮膚、皮膚がん等がある。
      赤外線へのばく露による皮膚障害をには、熱火傷がある
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  •   ⑤ 紫外線が発生する作業による健康障害リスクを低減するための作業管理の措置を挙げよ。ただし、殺菌灯を使用する作業を除いて解答すること。

    • 【解説】
      一般論としては、作業管理の内容として、有害因子の発生(や汚染)の少ない作業方法の採用、ばく露の少ない作業方法(作業位置、姿勢等を含む)の採用、作業時間管理(短縮)、保護具の着用、立入禁止措置等がある。なお、労働衛生教育は作業管理に含めないことが多い。
      紫外線による健康障害防止について、国がガイドライン類を定めているわけではないので、自由に答えればよいだろう。
      なお、本小問で「殺菌灯を使用する作業を除いて解答する」よう指示されているが、理由は不明である(※)
      ※ 殺菌灯を使用する作業について、紫外線への照射による労働者の健康影響の防止について、行政内部で特に対策を採る準備をしているという事実はない。なお、2022年11月に、殺菌基の紫外線防護が不十分だったため、10 人が被災する重大災害が発生している。
      また、平成26年12月19日医政地発1219第1号「医療機関における院内感染対策について」の中で「紫外線照射等については、効果及び作業者の安全に関する科学的根拠並びに想定される院内感染のリスクに応じて、慎重に判断すること」とされており、そのことに関連して衆議院で 2021 年2月19日に「質問主意書」が提出されたことがある。
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    • 【解答例】
      紫外線による健康障害リスクを低減するための作業管理の措置としては、以下のことが考えられる。
      ○ 紫外線の発生の少ない作業方法の採用
      ○ 紫外線へのばく露の少ない作業方法(作業位置、姿勢等を含む)の採用
      ○ 紫外線の発生する場所における作業時間の短縮
      ○ しゃ光保護具(保護眼鏡)等の保護具の着用
      ○ 関係者以外の者の立入禁止措置
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  •   ⑥ 紫外線及び赤外線による健康障害の防止のために、事業者が行うことが必要な健康管理の措置を述べよ。

    • 【解説】
      一般論としては、有害業務に関する労働衛生として、事業者が行うべき健康管理の内容としては、(特殊)健康診断と事後措置の実施、個別の労働者に対する健康指導の実施、集団としての労働者に対する健康教育の実施等があげられる。
      赤外線・紫外線にさらされる業務についての(特殊)健康診断については、昭和31年5月18日基発第308号「特殊健康診断指導指針について」(※)により行政指導が行われている。また、健康診断結果に基づく健康管理については、昭和38年8月19日基発第939号「健康診断結果にもとづく健康管理について」により行政指導が行われている。
      ※ この通達はネット上には公開されていない。なお、前小問の解説でも述べたが、紫外線及び赤外線にさらされる業務について、国のガイドライン類は定められていない。
      昭和 31 年の通達によって健康診断の対象となる業務は次の通りである。
      【健康診断の必要な紫外線、赤外線にさらされる業務】
      ① 電気による溶接、切断又は接着を行う業務(抵抗溶接作業を除く)
      ② ガスによる溶接、切断を行う作業
      ③ アーク灯又は水銀アーク灯の操作を行う作業
      ④ 赤外線乾燥において、赤外線の直射を受ける至近距離における作業
      ⑤ ガラス若しくは金属を溶解又は加熱(温度摂氏700度以上に限る)する操作における炉前作業若しくは温測作業又はそれらの溶解物若しくは加熱物の運搬(平杓子で運搬するものを除く)する作業又は圧延その他の加工作業
      ⑥ 電球等の光源製品の寿命を検査する作業
      ⑦ 人工光源を用いてレンズ等の光学ガラス製品を検査する作業
      また、昭和 31 年の通達による健康診断の検診項目は、業務歴・既往歴、自覚症状・他覚症状の有無、視力(遠・近距離)検査となっている。実施時期は、雇い入れ時等及びその後1年以内ごとに1回とされている。
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    • 【解答例】
      紫外線又は赤外線にさらされる業務に労働者を従事させる場合においては、雇い入れ又は配置替えの際、その後1年以内毎に1回、定期に(行政通達による)健康診断を実施する。
      健康診断を実施した場合は、その結果に基づいて健康管理区分を行い、必要に応じて健康指導の実施、労働時間の短縮、配置転換等の措置を採ること。
      また、紫外線又は赤外線による健康影響とその防止方法等について、適宜、労働衛生教育を行う。
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  • (3)レーザー光線について、次の問に答えよ。
    ① レーザー光線が有する物理的特性と、それによる健康障害について述べよ。

    • 【解説】
      1 レーザーの物理的特性
      理想的なレーザー(LASER:Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation=誘導放出による光増幅)の特徴は、光子の周波数がそろっている(従ってエネルギーもそろっている)とともに、位相が空間的・時間的にそろっているということである。このため基本的に可干渉性(コヒーレンス)がある。
      また、レーザーには、指向性(広がらない)、集光性(狭い範囲への集光が可能)、単色性という性格がある。さらにきわめて短いパルスとすることが可能で、高いエネルギーを持たせることが可能という性格を持っている。
      なお、レーザー光線による労働者の健康障害の防止対策については、「レーザー光線による障害防止対策要綱最終改正:平成 17 年3月 25 日基発第 0325002 号」(以下「要綱」という。)が定められている(※)
      ※ 昭和 61 年1月 27 日基発第 39 号「レーザー光線による障害の防止対策について」を改正したもの(リンク先は改正後)である。
      要綱によれば、レーザーは「レーザー光線は、180nm から1 mm までの波長域にあり、単一波長で位相のそろった指向性の強いものである」とされている。
      また、レーザー機器の安全基準については、JIS C 6802:2014「レーザ製品の安全基準」(以下「JIS C 6802:2014」という。)が制定されている。
      JIS C 6802:2014 によれば、レーザーとは「主に誘導放出を制御することによって,180 nm〜1 mmの波長範囲での電磁放射を発生又は増幅することができるデバイス」とされている。
      2 レーザーによる健康障害
      レーザーの人体に与える影響は、要綱の「参考2」に次のように記されている。
      【レーザー光線の人体に与える影響】
      (参考2)
      レーザー光線の人体に与えられる影響
      1.有害作用
        レーザー光線が身体局所に照射されると熱作用による蛋白の変性、細胞組織との光化学反応及び衝撃波(プラズマ流及びそれに伴う圧力波)による組織破壊が起こる。
        このような生体影響は、レーザー光線の波長、出力、出力波形(連続波又はパルス波)等によって異なるが、一般に皮膚よりも眼の方が重篤で不可逆的な変化を生じやすい。
        なお、レーザー光線の直接的な生体作用のほかに、レーザー光線が被加工物や装置周辺の他の物体を照射して起こる有害物の発散等による二次的障害にも留意する必要がある。
      (1)眼の障害(表1及び参照)
       連続波又は長パルスレーザーを放射するアルゴンレーザー、YAGレーザー、CO2レーザー等では、熱作用又は光化学作用により次に掲げる障害が起こる。
      [1]視覚焦点域外の波長(紫外部(200 ~ 400nm)及び赤外部の一部(1,400 ~ 106nm))をもつレーザー光線は、角膜、水晶体等の組織に吸収されて角膜火傷、視力低下を伴う白内障等を起こす。
      [2]視覚焦点域内の波長(可視部(400 ~ 780nm)及び赤外部の一部(780 ~ 1,400nm))をもつレーザー光線は、眼の光学系(角膜、水晶体)により網膜上に集光されて密度が概ね 105 倍大きくなるため、以下に掲げるような障害をもたらす。
      ⅰ)網膜(中心か付近)に吸収される連続波レーザー光線は、主として熱作用により網膜火傷を起こす。
      ⅱ)波長が概ね 430nm 付近の可視光レーザー(網膜視細胞の視感色素に吸収される。)は、主として光化学作用により網膜障害を起こす。
       短パルスの高いピークパワーのレーザーを放射するYAG(Q-スイッチ)レーザー、CO2レーザー等では、衝撃波により網膜火傷、眼底出血等が起こり、しばしば高度の視力低下を伴う。
      (2)皮膚の障害
        高出力のレーザー光線に対する過度のばく露を受けると軽度の紅斑から水泡形成、熱凝固、炭化までの変化が起こる。
      2.わが国における災害事例(表2参照)
        わが国において発生したレーザー光線による災害事例としては、表2に掲げるような眼の障害がみられている。
      ※ 厚生労働省「レーザー光線による障害防止対策要綱最終改正:平成 17 年3月 25 日基発第 0325002 号
      また、先述した昭和 53 年3月 30 日基発第 186 号「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」に、レーザー光線による眼及び皮膚の疾患の例が挙げられている。
      【紫外線発生業務と赤外線発生業務】
      第二 新規定の内容
      二 別表各号の規定の内容
      (二)「物理的因子による次に掲げる疾病」(第二号)
      ハ 「レーザー光線にさらされる業務による網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患」(第二号三)
      〔解説〕
        本規定は、光線の一種であるレーザー光線にさらされる作業環境下において業務に従事することにより発生する網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患を業務上の疾病として定めたものである。
      (イ)及び(ロ)(略)
      (ハ)「網膜火傷等の眼疾患」について
       「等」には出血、壊死、網膜剥離等がある。
       レーザー光線による網膜損傷は、軽いものでは一過性の発赤、重症のものでは網膜の浮腫、壊死、出血、炭化、気泡発生、網膜剥離、失明までおこる。
      (ニ)「皮膚疾患」については、高出力のレーザー光線をうけておこる皮膚障害として火傷があり、熱凝固、壊死、炭化などがおこるとされている。
      ※ 厚生労働省「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」(最終改正:平成 31 年4月 10 日基発 0410 第1号)
      なお、JIS C 6802:2014「レーザ製品の安全基準」の附属書D「生物物理学的検討」の「表D.1−光に対する過度の露光に伴う病理学的影響の要約」に、次のようにレーザーによる眼及び皮膚への健康影響についてまとめられている。
      光に対する過度の露光に伴う病理学的影響の要約
      D.2 生体組織に及ぼすレーザ光の影響
      D.2.1 一般事項
        (前略)
        (略)ターゲット組織は、急速な温度上昇によって、細胞の液体成分が気化する。多くの場合、このような相変化は急に起こるため、爆発的であり、細胞は破裂する。熱膨張に起因して圧力の過渡現象が生じることもあり、また、それとともに、大部分が物理的に脱離することによって、吸収層から遠く離れた組織にせん(剪)断損傷を引き起こすことがある。サブナノ秒の露光では、目の透光体による光ビームの自己収束効果によって、平行ビームであるレーザエネルギーが更に集中し、約 10 ピコ秒〜1ナノ秒の間のしきい値を更に下げる。更に、サブナノ秒領域における網膜障害においては、他の非線形光学メカニズムがある役割を演じるようである。
        以上のような障害のメカニズムは、全て網膜で作用することが明らかにされており、この規格に規定する安全露光レベルの折点又は傾きの変化に反映されている。
      D.2.2 目に対する危険性
        目の構造については D.1 に簡単に記載している。目は、特に、光を受けて情報を伝達するようにできている。過度の露光によって生じる病理学的影響を、表 D.1 にまとめている。熱的な相互作用の機構を、図 D.2 に示す。紫外及び遠赤外放射レーザ光は角膜の障害を引き起こし、一方、可視及び近赤外波長の放射光は網膜まで達する。
      表D.1−光に対する過度の露光に伴う病理学的影響の要約
      CIE 波長領域 a) 皮膚
      紫外C
      (180nm~280nm)
      光化学的角膜炎 紅斑(日焼け)
      皮膚老化プロセスの加速
      色素の増加
      紫外B
      (280nm~315nm)
      紫外A
      (315nm~400nm)
      光化学的白内障 色素の増強
      光線過敏症
      皮膚のやけど
      可視
      (400nm~780nm)
      光化学的及び熱的網膜損傷
      赤外A
      (780nm~1,400nm)
      白内障、網膜熱傷 皮膚のやけど
      赤外B
      (1.4µm~3.0µm)
      前房フレア、白内障、角膜熱傷
      赤外C
      (3.0µm~1mm)
      角膜熱傷だけ
      注a)CIE(国際照明委員会)によって定義される波長領域は、生物学的影響を記述するときに役に立つ簡単明瞭な表記であり、MPE の表 A.1 〜表 A.3 にある波長の切れ目と完全には一致していないことがある。
      ※ JIS C 6802:2014「レーザ製品の安全基準」の附属書D「生物物理学的検討」の「表D.1−光に対する過度の露光に伴う病理学的影響の要約」を筆者において一部簡略化した
      これをまとめて解答すればよいが、これと同じでなくとも一通りのことが記されていれば加点されるだろう。
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    • 【解答例】
      レーザーとは、180nm から1 mm までの波長域にあり、単一波長で位相のそろった指向性の強いものである。
      その物理的特性には、指向性(広がらない)、集光性(狭い範囲への集光が可能)、単色性という性格がある。また、光子の周波数、及び、時間的・空間的位相がそろっているため、可干渉性(コヒーレンス)がある。
      また、その健康影響には眼への影響と皮膚への影響がある。
      眼への影響としては、視覚焦点域外の波長のレーザー光線は、角膜、水晶体等の組織に吸収されて角膜火傷、視力低下を伴う白内障等を起こす。視覚焦点域内の波長及び赤外部の一部をもつレーザー光線は、網膜火傷などの網膜障害を起こすことがある。
      皮膚への影響としては、高出力のレーザー光線に対する過度のばく露を受けると軽度の紅斑から水泡形成、熱凝固、炭化までの変化が起こることがある。
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  •   ② レーザー機器とはどのような機器で、どのような作業で用いられるか説明せよ。

    • 【解説】
      レーザー発振器の概念図

      図のクリックで拡大します

      本小問の前段のレーザー機器とは、「レーザーを発する機器」であることは明らかだが、もちろんそれでは解答としての体をなしていない。ここで問われているのは、レーザー発生の機構と具体例であろう。
      レーザーを発生させる機構は、媒質、励起光源、共振器(増幅器)からなる図のような装置である。媒質へ励光源から光を当てると媒質中の原子が励起状態になる。励起状態になった原子は光子を放出して元に戻る。この光子が他の励起状態にある原子に衝突して光子を放出させる(誘導放出)。この光子が2つのミラーの間で反射を繰り返しつつ(共振)媒体内の原子から誘導放出を光子を放出してレーザーを半反射ミラーから放出するのである。
      レーザー発生の機構については、日本鍛圧機械工業会の「レーザ加工機取扱作業者用安全講習テキスト(※)が参考となる。
      ※ 一般社団法人 日本鍛圧機械工業会「レーザ加工機取扱作業者用安全講習テキスト」(2010年11月)
      一方、レーザー機器の具体的な例としては、要綱に次のものがしめされている。このうち、「レーザー加工が使われている産業分野()」が参考となろう。
      ○ レーザー光線の主要な応用技術一覧(
      ○ エネルギー的利用装置のマーケット(
      ○ レーザー加工が使われている産業分野(
      また、先述した昭和 53 年3月 30 日基発第 186 号「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」に、レーザー機器を用いる作業の例が挙げられている。
      【紫外線発生業務と赤外線発生業務】
      第二 新規定の内容
      二 別表各号の規定の内容
      (二)「物理的因子による次に掲げる疾病」(第二号)
      ハ 「レーザー光線にさらされる業務による網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患」(第二号三)
      〔解説〕
        本規定は、光線の一種であるレーザー光線にさらされる作業環境下において業務に従事することにより発生する網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患を業務上の疾病として定めたものである。
      (イ)(略)
      (ロ)「網膜火傷等の眼疾患」について
      (ハ)及び(ニ)該当業務としては、例えば、木材、ゴム、プラスチツク等の加工、通信、医療等の業務がある。
      ※ 厚生労働省「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」(最終改正:平成 31 年4月 10 日基発 0410 第1号)
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    • 【解答例】
      レーザー加工機とは、レーザー発振器(媒質、励起光源、共振器(増幅器)からなる装置で、媒質に励起光源から光を当て、媒質中の原子を励起状態にして(元に戻るときに)光子を放出させ、共振器によって共振させてレーザー光を放出させる装置である。
      具体的な例としては、レーザー加工機、レーザーマーカー、通信機器、医療用レーザーメスなどがある。
      これらを用いる作業としては、レーザー加工機を用いた材料の加工、レーザー機器の開発・修理等、医療業務(レーザー機器を用いた医療行為)などがある。
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  •   ③ JIS C 6802「レーザー製品の安全基準」に基づくクラス4のレーザー機器使用作業に係る作業管理の措置項目を四つ挙げよ。

    • 【解説】
      本小問の「クラス4のレーザー機器使用作業に係る作業管理の措置項目」は、要綱に示されている。要綱は、JIS C 6802 のクラス分けに応じた「レーザー機器のクラス別措置基準」(以下「措置基準」という。)を別記として示している。
      その内容のうちクラス4にかかる部分を、次に示す。なお、各クラス分けに応じた実施事項が措置基準の末尾に一覧表として示されているので、合わせて示しておく。
      【レーザー機器のクラス別措置基準】
      Ⅰ クラス4のレーザー機器に係る措置
      3 作業管理・健康管理等
      (1)レーザー機器の操作
        レーザー機器の操作は、レーザー光線からできるだけ離れた位置で行うこと。
      (2)光学系調整時の措置
        レーザー光線により光学系の調整を行う場合は、調整に必要な最小の出力のレーザー光線により行うこと。
      (3)保護具等の使用
       レーザー光線の種類に応じた有効な保護眼鏡を作業者に着用させること。ただし、眼に障害を及ぼさないための措置が講じられている場合はこの限りではない。
      注)レーザー用保護眼鏡(メガネ形式とゴーグル形式がある。)を用いること。
       できるだけ皮膚の露出が少なく、燃えにくい素材を用いた衣服を作業者に着用させること。特に溶融して玉状になる化学繊維の衣服は、好ましくないこと。
      (4)点検・整備
       作業開始前に、レーザー機器管理者にレーザー光路、インターロック機能等及び保護具の点検を行わせること。
       一定期間以内ごとに、レーザー機器について専門的知識を有する者に、次の項目を中心にレーザー機器を点検させ、必要な整備を行わせること。
      [1]レーザー光線の出力、モード、ビーム径、広がり角、発振波長等の異常の有無
      [2]入力電力、励起電圧・電流、絶縁、接地等の異常の有無
      [3]安全装置、自動表示灯、シャッター、インターロック機能等の作動状態の異常の有無
      [4]パワーメーター、パワーモニター等の異常の有無
      [5]ファン、シャッターその他の可動部分の異常の有無
      [6]冷却装置、ガス供給装置、有害ガス除去装置、粉じん除去装置等の異常の有無
      (5)及び(6) (略)
      レーザー機器のクラス別措置基準一覧表
      措置内容(項目のみ) レーザー機器のクラス
      4 3B 3R 2M
      1M
      レーザー機器管理者の選任 ※1  
      管理区域(標識、立入禁止)    
      レーザー機器 レーザー光路 光路の位置
      光路の適切な設計・遮へい ※1  
      適切な終端 ※1 ※2
      キーコントロール    
      緊急停止スイッチ等 緊急停止スイッチ    
      警報装置 ※1  
      シャッター    
      インターロックシステム等    
      放出口の表示  
      作業管理・健康管理等 操作位置      
      光学系調整時の措置
      保護具 保護眼鏡 ※1  
      皮膚の露出の少ない作業衣    
      難燃性素材の使用      
      点検・整備
      安全衛生教育
      健康管理 前眼部(角膜、水晶体)検査 ※1  
      眼底検査      
      その他 掲示 レーザー機器管理者 ※1  
      危険性・有害性、取扱注意事項
      レーザー機器の設置の表示    
      レーザー機器の高電圧部分の表示
      危険物の持ち込み禁止    
      有害ガス、粉じん等への措置    
      レーザー光線による障害の疑いのある者に対する医師の診察、処置
      ○印は、措置が必要なことを示す。
      ※1 400nm ~ 700nm の波長域外のレーザー光線を放出するレーザー機器について措置が必要である。
      ※2 JIS 規格 10.6 に掲げるレーザー機器にあっては、レーザー光路の末端について措置が必要である。
      ※ 厚生労働省「レーザー光線による障害防止対策要綱の「レーザー機器のクラス別措置基準
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    • 【解答例】
      JIS C 6802「レーザー製品の安全基準」に基づくクラス4のレーザー機器使用作業に係る作業管理の措置項目には、次のものがある。
      1 レーザー機器の操作
      レーザー機器の操作は、レーザー光線からできるだけ離れた位置で行う
      2 光学系調整時の措置
      レーザー光線により光学系の調整を行う場合は、調整に必要な最小の出力のレーザー光線により行う
      3 保護具等の使用
      レーザー光線の種類に応じた有効な保護眼鏡を作業者に着用させるとともに、できるだけ皮膚の露出が少なく、燃えにくい素材を用いた衣服を作業者に着用させる
      4 点検・整備
      作業開始前に、レーザー機器管理者にレーザー光路、インターロック機能等及び保護具の点検を行わせる。また、一定期間以内ごとに、レーザー機器について専門的知識を有する者に、一定の事項についてレーザー機器を点検させ、必要な整備を行わせる
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  •   ④ 上記③の作業に常時従事する労働者の健康管理において行う検査の内容を述べよ。

    • 【解説】
      本小問の「クラス4のレーザー機器使用作業」に常時従事する労働者の健康管理において行う検査の内容は、要綱に示されているので、それを解答するべきであり、それ以外のことを答えても得点はできないだろう。
      ところで、要綱から分かるように、レーザー取扱い業務に関する特殊健康診断は雇入れ時または配置替え時に行うこととされていて、定期的に行うこととはされていない。
      これは、定期健診項目に視力検査が含まれており、またレーザーで眼に負傷した場合はその時点で眼科医にかかるだろうから、一般の定期健康診断で行う視力検査以外の検査を定期的に行うことは不要と考えられたものであろう。
      レーザー光線による視力低下は慢性的な疾患ではないので、定期健康診断になじまないと考えられたものかもしれない。
      なお、実務においては、定期健康診断に合わせて、前眼部(角膜、水晶体)検査及び眼底検査を行うことは望ましいことである。
      【レーザー機器のクラス別措置基準】
      Ⅰ クラス4のレーザー機器に係る措置
      3 作業管理・健康管理等
      (1)~(5) (略)
      (6) 健康管理
        レーザー業務に常時従事する労働者については、雇い入れ又は配置替えの際に視力検査に併せて前眼部(角膜、水晶体)検査及び眼底検査を行うこと。
      ※ 厚生労働省「レーザー光線による障害防止対策要綱の「レーザー機器のクラス別措置基準
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    • 【解答例】
      「クラス4のレーザー機器使用作業」に常時従事する労働者の健康管理において行う検査の内容は、雇い入れ又は配置替えの際に視力検査に併せて前眼部(角膜、水晶体)検査及び眼底検査を行うことである。
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