※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。
各小問をクリックすると解説と解答例が表示されます。もう一度クリックするか「閉じる」ボタンで閉じることができます。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行いました。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2022年度(令和4年度) | 問 1 | 電離放射線障害関連の記述式問題は、過去10年間で初めてである。しかし内容は基本的なものである。 |
---|---|---|
電離放射線障害 |
問1 放射線の性質及び職場における放射線障害の予防に関し、以下の設問に答えよ。
-
(1)電離放射線は非電離放射線と何が異なるのか簡潔に説明せよ。
-
【解説】
物理学の教科書に、たんに「放射線」と書かれていれば「電離放射線」のことを指すと思ってよい。しかし、厳密には、放射線という用語は、電離放射線と非電離放射線を含む(※)概念である。※ 環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和3年度版)」の「第1章 放射線の基礎知識」の「1.3 放射線」の「放射線の種類」に分かりやすい図が示されている。電離放射線とは、電離作用(物質を構成する原子から電子を分離する作用)を有する放射線のことで、次の2つがある。○ アルファ線やベータ線などの粒子線○ 周波数が3×1015Hzを超える電磁波これに対し、非電離放射線とは、電離作用を有しない電磁波のことで、次のものである。○ 周波数が3×1015Hz以下の電磁波具体的には、電離放射線に分類される電磁波には、ガンマ線やエックス線がある。また、非電離放射線に分類される電磁波には、電波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線等がある。なお、紫外線の一部に電離作用を有するものがあるが、一般にはすべての紫外線を非電離放射線に分類する。電離放射線は電離作用を有することからも分かるようにエネルギーが高く、発がん性や生殖毒性を有する。非電離放射線は比較的エネルギーが低く、健康に与える影響の度合いも小さい。閉じる
-
【解答例】
電離放射線には電離作用(物体を構成する原子から電子を分離する作用)があるが、非電離放射線には電離作用がない。電離放射線は、発がん性などの重篤な健康影響を与える。非電離放射線は、比較的、有害性が低い。閉じる
-
【解説】
-
(2)電離放射線の特徴に関する次に掲げる用語について両者の相違がわかるように簡潔に説明せよ。
① β線とγ線-
【解説】
β線(ベータ線)は、原子核の自然崩壊によって放出された高速の電子の流れである。アルミの薄い板で遮蔽することが可能で、空気中を数十センチから数メートル飛ぶ。γ線(ガンマ線)は、電磁波であり、高エネルギー状態の放射性物質の原子核から生ずる電磁波である。透過力が高く、鉛や厚い鉄の板で遮蔽する必要がある。閉じる
-
【解答例】
β線は、自然崩壊した原子核から放出される高速の電子の流れであり粒子線である。これに対し、γ線は原子核から放出される電磁波である。β線は、アルミの薄い板で遮蔽することが可能である。これに対しγ線は、鉛や熱い鉄の板で遮蔽する。閉じる
-
【解説】
-
② 実効線量と等価線量
-
【解説】
実効線量は、人体の各組織・臓器が受けた等価線量に、当該組織・臓器の組織加重係数を乗じ、これらを合計したもので、単位としてはSv (シーベルト)が用いられる。等価線量は、人体の特定の組織・臓器が受けた吸収線量に、放射線の種類及びエネルギーに応じて定められた放射線加重係数を乗じたもので、単位としてはSv(シーベルト)が用いられる。
名称 意味 具体例 単位 物理量 直接計測できる量 放射能の強さ Bq 吸収線量 Gy 防護量 人体の被ばく線量であり、直接計測できない。放射線健康リスクに関する量 実効線量 Sv 等価線量 Sv 臓器吸収線量 Gy 実用量 防護量と同様な考え方だが、物理量から定義される 周辺線量当量 Sv 方向性線量当量 Sv 個人線量当量 Sv 要は、吸収線量とは、物質に吸収された放射線のエネルギーの量のことであって、物理的な概念である。等価線量とは、放射線の種類ごとに人体が影響を受ける程度を表し、実効線量とは、さらに人体の臓器ごとの影響を考慮したものと考えておけばよい。吸収線量は測定可能であるから、これらの量を吸収線量で表すと次のようになる。吸収線量 = 吸収線量※ 本式は自明であるが、厳密に言えば、人体の吸収線量は、体内の気体の吸収線量を測定し、気体に対する体内組織の阻止能比を乗ずることによって算定する。等価線量 = 吸収線量 × 放射線加重係数実効線量 = ∑ 吸収線量 × 放射線加重係数 × 組織加重係数放射線の種類 放射線加重係数 ガンマ線、エックス線、ベータ線 1 陽子線 2 アルファ線、重イオン 20 中性子線 2.5~20 組織 組織加重係数 骨髄(赤色)、結腸、肺、胃、乳房、残りの組織 0.12 生殖腺 0.08 膀胱、食道、肝臓、甲状腺 0.04 骨表面、脳、唾液腺、皮膚 0.01 ※ 組織の数に組織加重係数を乗じて、合計すると1.0になる。 -
【解答例】
実効線量は、人体の各組織・臓器が受けた等価線量に、当該組織・臓器の組織加重係数を乗じ、これらを合計したもので、単位としてはSv (シーベルト)が用いられる。等価線量は、人体の特定の組織・臓器が受けた吸収線量に、放射線の種類及びエネルギーに応じて定められた放射線加重係数を乗じたもので、単位としてはSv(シーベルト)が用いられる。閉じる
-
【解説】
-
(3)電離放射線の内部被ばくに関する次の事項について簡潔に説明せよ。
① 内部被ばくが生じる機序-
【解説】
内部被ばくが生じる機序(メカニズム)は、一言でいえば、放射性物質が体内に取り込まれ、体内から放射線を受けることである。外部被ばくは、放射性物質から離れるか隔離することにより、その後の被ばくを防止できる。これに対し、内部被ばくは、放射性物質が体外へ排出されるか減衰するまで被ばくが続くことになる。ここまでは誰でもわかることである。この種の問題の場合、どこまで書くかが迷うところである。求められている解答(※)に足りなければ加点されないだろうし、書き過ぎればその部分に間違いがあったときに減点の対象となろう。期待される回答以上のことを書いても、その小問の配点以上の点数が取れるわけではないだろうから、あまり余計なことは書きたくはない。※ 問題文中に「機序」という言葉が使われているが、これは医学分野で用いられる用語である。このことから問題文を作成したのは医学会の有識者だと推測される。従って、医学的な解答が求められていると予想して解答を書くことが求められる。体内に取り入れる経路、蓄積しやすい臓器等、さらに排出の経路等を書いておけば十分であろう。閉じる
-
【解答例】
内部被ばくとは、体内に入った放射性物質からの放射線に被ばくすることである。体内に入る経路としては、①空気中の放射性物質を経気道で吸入、②放射性物質を皮膚を通して(経皮)侵入、③食品中の放射性物質を経口で摂取、④傷口からの放射性物質の取り込み(創傷侵入)、⑤診療のために放射性医薬品を体内に投与等があり得る。放射性物質の種類によって、ストロンチウムやセシウムのように体内で全身に分布して全身に被ばくする場合と、放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積するなどにより局所的に被ばくする場合とがある。体内に放射性物質を取り入れると、排泄又は放射能が減衰するまで被ばくは続く。このため、半減期の長い物質や、排泄されにくい物質は影響が大きくなる。閉じる
-
【解説】
-
② 内部被ばく線量の測定法
-
【解説】
内部被ばく線量評価の方法には、次のものがある。○ 吸入または経口摂取した放射性物質の放射能量を、体の外から測って評価する体外計測法(個人モニタリング)○ 尿等の排泄物中の放射能量を測って評価するバイオアッセイ法本問で問われているのは、個人モニタリングであろう。これは、大きく2つに分かれる。○ 放射性セシウムや放射性ストロンチウムのように全身に分布するものは、ホールボディ・カウンタと呼ばれる装置で、全身から放射されるガンマ線を測定する。○ 放射性ヨウ素のように甲状腺に蓄積される放射性物質の場合は、甲状腺モニタと呼ばれる装置で、頸部の甲状腺から放射されるガンマ線を測する。なお、測定するのではなく、数理モデルによって推定する方法も一般に行われている。具体的には、まず、体内に取り入れた放射性物質の量、種類、体内に入った経路、被爆者の年齢等を用いて、数理モデルによって推定して、各臓器や組織の吸収線量を求める。次に、放射線の種類や臓器ごとの感受性を考慮して預託実効線量を算定するのである。閉じる
-
【解答例】
内部被ばく線量評価の方法には、次のものがある。○ 吸入または経口摂取した放射性物質の放射能量を、体の外から測って評価する体外計測法(個人モニタリング)○ 尿等の排泄物中の放射能量を測って評価するバイオアッセイ法このうち、内部被ばく線量を測定する個人モニタリングは、大きく以下の2つに分かれる。○ 放射性セシウムや放射性ストロンチウムは全身に分布するため、ホールボディ・カウンタと呼ばれる装置で、全身から放射されるガンマ線を測定する。○ 放射性ヨウ素のように甲状腺に蓄積される放射性物質の場合は、甲状腺モニタと呼ばれる装置で、頸部の甲状腺から放射されるガンマ線を測する。閉じる
-
【解説】
-
(4)電離放射線の健康影響に関する次の事項について簡潔に説明せよ。
① 確率的影響-
【解説】
電離放射線による健康への影響は、確定的影響と確率的影響に分けられる。確定的影響では、線量が大きいほど障害の程度が重篤となり、しきい値がある。一方、確率的影響では、線量が大きいほど障害に罹患する確率が高くなり、しきい値がないと考えられている。また、被爆から発症までが数週間までのものを急性影響と呼び、数か月以上のものを晩発性影響と呼ぶ。電離放射線による晩発性影響は確率的影響であることが多いが例外もある。例外の一つが白内障である。白内障は、晩発性影響ではあるが、放射線白内障の重篤度や潜伏期間の長さ、進行の速さは、被ばく線量に依存するとされており、確定的影響なのである。閉じる
-
【解答例】
電離放射線による健康への影響は、確定的影響と確率的影響に分けられる。確率的影響では、線量が大きいほど障害に罹患する確率が高くなり、しきい値がないと考えられている。また、被爆から発症までが数週間までのものを急性影響と呼び、数か月以上のものを晩発性影響と呼ぶ。電離放射線による確率的影響は、晩発性影響である。閉じる
-
【解説】
-
② 確定的影響(組織反応)の急性障害
-
【解説】
1グレイ以上の放射線を短時間に受けた場合、放射線は体組織を構成する原子を電離してダメージを与えたり(直接作用)、水のイオン化をしたり(間接作用)する。放射を受けた後48時間程度は、被ばく量にもよるが、吐気(1グレイ以上)、頭痛(1グレイ以上)、発熱(2グレイ以上)、下痢(4グレイ以上)、意識障害(6グレイ以上)等の前駆症状(※)が現れる。※ 被ばく量が高いと症状も重篤になる。しかし、極端に被ばく量が大きければ火傷をすることもあるが、それに至らない被ばく量では体組織そのものを極端に破壊するわけではないため、この時点では組織反応はほとんど現れない(※)。その後、急性症状が焼失した後、潜伏期(3週間以内)は、ほぼ無症状となる。※ 短期間に大量の放射線を浴びた例としては、広島・長崎の原子爆弾、第二次大戦中・戦後の米国のロスアラモスの実験場での事故、第5福竜丸の水素爆弾、JCO臨界事故等がある。これらの事件・事故でも、多くのケースで、被爆直後には大きな症状のなかった被爆者が、被爆後、数週間を経て死亡している。潜伏期が終わって、発症期に入ると、受けた放射線の強さにより、被ばくした器官や組織の細胞死・細胞変性が起きる。これによって、造血器障害(骨髄症候群)、消化管障害(胃・腸管症候群)、中枢神経(中枢神経系症候群)が現れる。皮膚障害は、被ばく量が大きいと被ばく初期に皮膚紅斑が現れることもある。一般には、角質層から基底層までの細胞が表面に現れる2~3週間後に発症することが多い。閉じる
-
【解答例】
1グレイ以上の放射線を短時間に受けた場合、嘔吐、下痢等の前駆症状が現れる。その後、0~3週間程度の潜伏期を経て、受けた放射線の強さにより、被ばくした器官や組織の細胞死・細胞変性が起きる。これによって、造血器障害(骨髄症候群)、消化管障害(胃・腸管症候群)、中枢神経(中枢神経系症候群)が現れる。皮膚障害は、被ばく量が大きいと被ばく初期に皮膚紅斑が現れることもある。一般には、角質層から基底層までの細胞が表面に現れる2~3週間後に発症することが多い。閉じる
-
【解説】
-
(5)放射線業務従事者の眼に生じるおそれがある健康障害に関する次の事項について説明せよ。
① 健康障害の具体的な内容-
【解説】
放射線による眼の健康障害には、放射線白内障、放射線緑内障等がある。白内障については、医療従事者について、放射線被ばく量と皮質白内障・後嚢下白内障の相関を認める数多くの報告がある。一方、緑内障については、木内他(※)が広島の被爆者について調査した報告で、被ばく放射線量と緑内障の発症に相関があるとしている。※ 木内良明他「原爆被爆者における放射線と緑内障および網膜血管径の関連」(Scientific Reports9 8642, 2019/06/14)眼の赤道部にある、水晶体線維を形成するのは、胚帯(germinal zone)の細胞であり極めて分裂能が高い。このため、水晶体は放射線感受性が非常に高い組織である。その機序としては、水晶体上皮細胞が放射線の被ばくを受けると、水晶体上皮細胞および有核の水晶体線維が変性する。変性した細胞が、赤道部から後嚢側へ移動し、後嚢中央部に入り込むと混濁を生じる。なお、放射線白内障、放射線緑内障(※)は、晩発性影響であるが、確定的影響である。閉じる
-
【解答例】
放射線による眼の健康障害には、放射線白内障、放射線緑内障等がある。閉じる
-
【解説】
-
② 健康障害を予防するための等価線量の限度
-
【解説】
電離則第5条は、眼と皮膚の等価線量を次のように定める。本小問は、これを解答すればよいものと思われる。【電離放射線障害防止規則】第5条 事業者は、放射線業務従事者の受ける等価線量が、眼の水晶体に受けるものについては五年間につき百ミリシーベルト及び一年間につき五十ミリシーベルトを、皮膚に受けるものについては一年間につき五百ミリシーベルトを、それぞれ超えないようにしなければならない。なお、これは、厚生労働省「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」(座長:永井良三自治医科大学学長)の報告書を受けて改正されたものである。この報告書は、改正すべき水晶体の等価線量限度を次のように定めていた。● 眼の水晶体の等価線量限度を5年間の平均で20ミリシーベルト/年かついずれの1年においても50ミリシーベルトを超えないこととすることが適当● 十分な放射線防護措置を講じても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある者(※1)については、一定の期間(※2)、眼の水晶体の等価線量限度を50ミリシーベルト/年を超えないこととすることが適当(※3)。※1 管理区域において医学的処置又は手術を行う医師のうち、当該業務に欠くことのできない高度の専門的な知識及び経験を有するものであって、眼の水晶体が受ける等価線量が20mSv/年を超えるおそれのあるもので、かつ、後任者を容易に得ることができない場合等が考えられる。※2 一定の期間は、ガイドライン等の周知や専門家の指導等により改善するまでに要する期間や新たな放射線防護用品が開発されるまでの期間として、約3年が見込まれる。※3 事業者は、対象となる労働者について、可能な限り早期に新たな水晶体の等価線量限度を遵守することが可能となるよう努めることが望ましい。閉じる
-
【解答例】
眼の水晶体に受ける等価線量は、5年間につき100ミリシーベルト及び1年間につき50ミリシーベルトを限度とする。閉じる
-
【解説】
-
③ 健康障害を予防するための措置
-
【解説】
厚生労働省は、平成29年4月18日基安発0418第5号「放射線業務における眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策について」の別添において、放射線業務における眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策を示している。この別添の各関係企業等への通達から対策を挙げればよいものと思われる。閉じる
-
【解答例】
放射線防護の基本原則は、次の3点となる。遮蔽をする。放射線源から距離を取る。作業時間を短くする。とくに局所的に眼の水晶体への被ばくが高くなるおそれのある作業については、放射線防護用のめがね等の保護具、医療向け可動式の防護アクリルガラス等を使用することにより、適切な被ばく防護策を講じる。また、その使用に当たっては、適切な使用方法に係る教育を行う。閉じる
-
【解説】
-
(6)放射線防護における ALARAの原則について簡潔に説明せよ。
-
【解説】
放射線防護における ALARA(AS Low As Reasonably Achievable)の原則とは、環境省の「防護の最適化」によれば、「
個人の被ばく線量や人数を、経済的及び社会的要因を考慮に入れた上、合理的に達成できる限り低く保つこと
」とされる。この原則に従えば、放射線を伴う行為のメリットが放射線のリスクを上回る場合は、合理的に達成可能な限り被ばく量を減らして、放射線を利用することとなる。社会・経済的なバランスも考慮しつつ、できるだけ被ばくを少なくするよう努力するということで、必ずしも被ばくを最小化するということではない。閉じる -
【解答例】
放射線防護における ALARA(AS Low As Reasonably Achievable)の原則とは、個人の被ばく線量や人数を、経済的及び社会的要因を考慮に入れた上、合理的に達成できる限り低く保つことである。この原則に従えば、放射線を伴う行為のメリットが放射線のリスクを上回る場合は、合理的に達成可能な限り被ばく量を減らして、放射線を利用することとなる。社会・経済的なバランスも考慮しつつ、できるだけ被ばくを少なくするよう努力するということで、必ずしも被ばくを最小化するということではない。閉じる
-
【解説】
-
(7)医療現場における放射線防護について次に掲げる事項ごとに説明せよ。
① 照射条件の工夫-
【解説】
照射条件については、できる限りエネルギーを小さくすること、散乱線が出にくくすることの2点が挙げられる。● 画像検出器と患者を可能な限り近づけることで、小さなエネルギーで撮影できるようになる。● 診療が可能レベルが確保できる最低限の画質になるように以下のように調節する。◦ 出力(管電圧、管電流)を小さくする。◦ パルスレートを小さくする。◦ フレームレート(1秒間の撮影枚数)を少なくする。◦ 1フレーム当たりの撮影時間を短くする。● 適切な付加フィルターを用いて、画質に影響しない低エネルギー成分のエックス線をろ過する。● 照射機をできる限り患者から離すことで、散乱線を抑えることができる。閉じる
-
【解答例】
照射条件を工夫することにより、できる限り放射線のエネルギーを小さくし、また散乱線を抑えるようにする。● エネルギーを小さくする工夫◦ 画像検出器と患者を可能な限り近づける。◦ 診療が可能レベルが確保できる最低限の画質になるように、出力(管電圧、管電流)を小さく、パルスレートを小さく、フレームレート(1秒間の撮影枚数)を少なく、1フレーム当たりの撮影時間を短くする。◦ 適切な付加フィルターを用いて、画質に影響しない低エネルギー成分のエックス線をろ過する。● 散乱線を抑える工夫◦ 照射機をできる限り患者から離す。閉じる
-
【解説】
-
② 散乱線の遮蔽
-
【解説】
患者に照射されたエックス線は、そのほとんどが患者の体内に吸収されてしまうが、吸収されなかった一部の放射線が受像機に到達して画像を結ぶ。しかし、一部は、患者の体内で散乱を繰り返した後に患者体外に放出される。これが本問にいう「散乱線」で、医療スタッフの被ばくの原因となる。これを遮蔽する方法は、(一社)日本脳神経学会のガイドライン(※)によると、次のように記されている。※ (一社)日本脳神経学会「医療スタッフの放射線安全に係るガイドライン」遮へい板の有効な利用方法は用いる装置により異なります。以下に装置毎の代表的な遮へい板の設置方法を紹介します。① 血管系の透視装置に用いる遮へい板天井吊り遮へい板を、患者を透視するX線管と術者との間に置き、患者からの散乱線を遮へいします。テーブルカーテン型の遮へい板を、患者が臥床するテーブルに取り付けることで、X線管と患者からの散乱線を遮へいします。腹部IVRのように患者に対して術者がX線管と同じ側に居る場合は、L型遮へい板を設置すると患者からの散乱線を効果的に遮へいできます。術者の位置やX線管の位置が頻繁に変わる循環器系のIVR等では、可動型の遮へい板が有効です。② 術中透視手術室内に天井吊りのアクリル板が装備されている場合は、これを清潔なビニールで覆い、患者と術者の間に設置して散乱線を遮へいします(本ガイドライン表紙のイラストと血管系の透視装置の写真を参考にしてください)。適当な遮へい板が無い時は、装置の画像ホールド機能等を用いてできるだけ照射しないように努めて下さい。③ 消化器、呼吸器の内視鏡手技との併用時に用いる遮へい板患者の臥床するテーブルよりも上方にX線管がある場合は、放射線防護用掛布を装着することで、散乱線を遮へいできます。できるだけ用いるようにしてください。下端が患者の体表に到達するように調節してください。患者の臥床するテーブルよりも下方にX線管がある場合は、患者の体調が許せば、患者の身体の上で照射範囲外に放射線防護用掛布をかけるか防護衣をかけて下さい。また、L型遮へい板の利用は一定の効果があります。④ CT透視に用いる遮へい板CTのガントリを塞ぐことを目的とした天井吊りのCT専用の遮へい板が効果的です。専用の遮へい板を用意できないときは、患者の体調が許せば、患者の身体の上で照射範囲外に放射線防護用掛布をかけるか防護衣をかけて下さい。なお、本小問で問われているのは、散乱線が出ることを前提に、それを遮蔽する手法を尋ねている。従って、散乱線を減らすようにする工夫は小問①で、それを浴びないようにする工夫は小問③で答えるべきであろう。本小問の答えは、遮蔽板の設置以外にあり得ないように思えるが、出題者は解答に何を期待していたのだろうか。それを推測しつつ、解答例を作成してみた。各自、解答例を参考にし、工夫して解答して欲しい。閉じる
-
【解答例】
散乱線とは、患者に照射された放射線が、体内で吸収されずに、散乱して体外へ放出されるものをいう。医療従事者が散乱線に被ばくしないためには、これを遮蔽する必要がある。血管系の透視装置、術中透視、消化器、呼吸器の内視鏡手技との併用時、CT透視等において、それぞれについて適切なも遮蔽板の設置が有効である。また、患者の体調が許せば、患者の身体の照射範囲外の部分に、放射線防護用掛布又は防護衣をかけることも効果的である。閉じる
-
【解説】
-
③ 放射線業務従事者の行動に関する留意点
-
【解説】
被ばく防止対策の基本は、遮蔽する、時間を短くする、距離を離すの3点である。この観点から、他の小問との重複がないように解答すればよい。● できるだけ撮影時間を短くする。● 透視する場面を限定する(※)。※ 例えば、透視をしなくてもできる場面では短時間であってもこまめに照射を止める。● 撮影時は、できるだけ線量の低いところで行う。〇 CT撮影時にバックバルブマスクを使用するときは、バックバルブマスクの延長チューブを使用する。● 照射装置の絞りを必要な範囲に絞って、照射野を狭くすることで、散乱線を抑える(極端に絞ると患者の皮膚線量を増加させるので注意)。● 検査時には、できるだけ患者対応を避ける。● 個人線量計を必ず着用する。なお、以下の2点も有効であろうが、本小問は「行動に関する留意点」というのであるから、解答としては期待されていないだろう。書いても減点されることはないだろうが、あえて書く必要はないと思う。● 実効線量が1年の限度値である20mSvを超えた場合は、5年間管理へ移行し、5年間で100mSvを超えないように管理する。● 安全な放射線管理のための教育訓練の受講、個人被ばく線量計による管理、特殊健康診断の受診を行う。閉じる
-
【解答例】
被ばく防止対策の基本は、遮蔽する、時間を短くする、距離を離すの3点である。この観点から以下のことに留意する。● できるだけ撮影時間を短くする。● 透視する場面を限定する(透視をしなくてもできる場面では短時間であってもこまめに照射を止める。)。● 撮影時は、できるだけ線量の低いところで行う。CT撮影時にバックバルブマスクを使用するときは、バックバルブマスクの延長チューブを使用することも有効である。● 絞りを必要な範囲に絞って、照射野を狭くすることで、散乱線を抑える(極端に絞ると患者の皮膚線量を増加させるので注意)。● 検査時には、できるだけ患者対応を避ける。● 個人線量計を必ず着用する。閉じる
-
【解説】
-
④ 個人用保護具
-
【解説】
本小問は「保護具」という用語を用いている。電離則において「保護具」という用語は汚染された空気を吸入しないためのものを指す用語である。しかし、問(7)は「放射線防護」についての問であるから個人用防護具について答えるべきであろう。放射線を防護する個人用防護具には、次のようなものがある。● 防護めがね(軽量タイプから重量タイプのものがあり、鉛当量が異なる。)● 防護手袋● 防護衣(防護エプロン(背面が開いており腰への負担が少ない。)、防護コートなど)● 防護クロス閉じる
-
【解答例】
放射線を防護するため、必要に応じて以下の個人用防護具を使用する。● 防護めがね(軽量タイプから重量タイプのものがあり、鉛当量が異なる。)● 防護手袋● 防護衣(防護エプロン(背面が開いており腰への負担が少ない。)、防護コートなど)● 防護クロス閉じる
-
【解説】