労働衛生コンサルタント試験 健康管理 2021年 問3

健康情報取り扱い指針による個人情報の取扱い




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 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。

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2021年度(令和3年度) 問 3 個人情報取扱い指針に関する知識問題。基本的な内容だが、やや詳細で、知識がないと解答できない。
個人情報取扱い指針
2021年11月09日執筆 2023年08月16日最終改訂

問3 厚生労働省の「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」等に基づく労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いに関し、以下の設問に答えよ。

  • (1)事業者が労働者の心身の状態の情報を取り扱う目的として適正なものとはどのようなものか、二つ挙げよ。

    • 【解説】
      本問は題意にも示されているように、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針平成30年9月7日 労働者の心身の状態に関する情報の適切な取扱い指針公示第1号)」(以下「指針」という。)に基づく出題である(※)。以下の各小問について、指針中に解答となる記述があれば、その内容に沿って答えるべきである。
      ※ なお、本指針について「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」も適宜参照されたい。
      指針は、2の「(1)心身の状態の情報を取り扱う目的」において、次のように述べている。
      事業者が心身の状態の情報を取り扱う目的は、労働者の健康確保措置の実施や事業者が負う民事上の安全配慮義務の履行であり、そのために必要な心身の状態の情報を適正に収集し、活用する必要がある。
       労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針
      要は、労働者の心身の状態の情報を取り扱う目的として、①労働者の健康確保措置の実施、及び②事業者が負う民事上の安全配慮義務の履行のために用いるべきであるとしているのである。
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    • 【解答例】
      事業者が労働者の心身の状態の情報を取り扱う目的として、適正なものには以下のものがある。
      ① 労働者の健康確保措置の実施
      ② 事業者が負う民事上の安全配慮義務の履行
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  • (2)事業者が労働者の心身の状態の情報を取り扱ってもよい場合とはどのようなものか、三つ挙げよ。

    • 【解説】
      指針は、2の「(1)心身の状態の情報を取り扱う目的」において、次のように述べている。
      一方、労働者の個人情報を保護する観点から、現行制度においては、事業者が心身の状態の情報を取り扱えるのは、労働安全衛生法令及びその他の法令に基づく場合や本人が同意している場合のほか、労働者の生命、身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき等とされているので、上記の目的に即して、適正に取り扱われる必要がある。
       労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針
      すなわち、労働者の心身の状態の情報を取り扱えるのは、①労働安全衛生法令及びその他の法令に基づく場合、②本人が同意している場合、及び③労働者の生命、身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときとされているのである。
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    • 【解答例】
      事業者が労働者の心身の状態の情報を取り扱ってもよい場合には以下のものがある。
      ① 労働安全衛生法令及びその他の法令に基づく場合
      ② 本人が同意している場合
      ③ 労働者の生命、身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
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  • (3)事業者が策定する労働者の心身の状態の情報を適正に取り扱うための規程に定めるべき事項には、どのようなものがあるか、五つ挙げよ。

    • 【解説】
      指針は、2の「(3)取扱規程に定めるべき事項」において、次のように述べている。
      取扱規程に定めるべき事項は、具体的には以下のものが考えられる。
      ① 心身の状態の情報を取り扱う目的及び取扱方法
      ② 心身の状態の情報を取り扱う者及びその権限並びに取り扱う心身の状態の情報の範囲
      ③ 心身の状態の情報を取り扱う目的等の通知方法及び本人同意の取得方法
      ④ 心身の状態の情報の適正管理の方法
      ⑤ 心身の状態の情報の開示、訂正等(追加及び削除を含む。以下同じ。)及び使用停止等(消去及び第三者への提供の停止を含む。以下同じ。)の方法
      ⑥ 心身の状態の情報の第三者提供の方法
      ⑦ 事業承継、組織変更に伴う心身の状態の情報の引継ぎに関する事項
      ⑧ 心身の状態の情報の取扱いに関する苦情の処理
      ⑨ 取扱規程の労働者への周知の方法
      なお、②については、個々の事業場における心身の状態の情報を取り扱う目的や取り扱う体制等の状況に応じて、部署や職種ごとに、その権限及び取り扱う心身の状態の情報の範囲等を定めることが適切である。
       労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針
      上記の①から⑨のうち、5つを解答すればよい。
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    • 【解答例】
      取扱規程に定めるべき事項は、具体的には以下のものがある。
      ① 心身の状態の情報を取り扱う目的及び取扱方法
      ② 心身の状態の情報を取り扱う者及びその権限並びに取り扱う心身の状態の情報の範囲
      ③ 心身の状態の情報を取り扱う目的等の通知方法及び本人同意の取得方法
      ④ 心身の状態の情報の適正管理の方法
      ⑤ 心身の状態の情報の取扱いに関する苦情の処理
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  • (4)労働者の「心身の状態の情報の加工」とはどのような行為を指すのか、簡潔に説明せよ。

    • 【解説】
      指針の「4 定義」において「心身の状態の情報の加工」とは「心身の状態の情報の他者への提供に当たり、提供する情報の内容を健康診断の結果等の記録自体ではなく、所見の有無や検査結果を踏まえた就業上の措置に係る医師の意見に置き換えるなど、心身の状態の情報の取扱いの目的の達成に必要な範囲内で使用されるように変換することをいう」とされている。
      要は生データを扱うのではなく、データが必要な範囲以外の情報を取り去るとともに、より、機微ではない情報に置き換えるということである。
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    • 【解答例】
      「心身の状態の情報の加工」とは「心身の状態の情報の他者への提供に当たり、提供する情報の内容を健康診断の結果等の記録自体ではなく、所見の有無や検査結果を踏まえた就業上の措置に係る医師の意見に置き換えるなど、心身の状態の情報の取扱いの目的の達成に必要な範囲内で使用されるように変換すること」である。
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  • (5)事業者が労働者の心身の状態の情報を取り扱う際に、行ってはならない労働者に対する不利益な取扱いとはどのようなものか、三つ挙げよ。

    • 【解説】
      指針は、2の「(8)労働者に対する不利益な取扱いの防止」において、次のように述べている。
      事業者は、心身の状態の情報の取扱いに労働者が同意しないことを理由として、又は、労働者の健康確保措置及び民事上の安全配慮義務の履行に必要な範囲を超えて、当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことはあってはならない。
      以下に掲げる不利益な取扱いを行うことは、一般的に合理的なものとはいえないので、事業者は、原則としてこれを行ってはならない。なお、不利益な取扱いの理由が以下に掲げるもの以外のものであったとしても、実質的に以下に掲げるものに該当する場合には、当該不利益な取扱いについても、行ってはならない。
      ① 心身の状態の情報に基づく就業上の措置の実施に当たり、例えば、健康診断後に医師の意見を聴取する等の労働安全衛生法令上求められる適切な手順に従わないなど、不利益な取扱いを行うこと。
      ② 心身の状態の情報に基づく就業上の措置の実施に当たり、当該措置の内容・程度が聴取した医師の意見と著しく異なる等、医師の意見を勘案し必要と認められる範囲内となっていないもの又は労働者の実情が考慮されていないもの等の労働安全衛生法令上求められる要件を満たさない内容の不利益な取扱いを行うこと。
      ③ 心身の状態の情報の取扱いに労働者が同意しないことや心身の状態の情報の内容を理由として、以下の措置を行うこと。
      (a)解雇すること
      (b)期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと
      (c)退職勧奨を行うこと
      (d)不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命じること
      (e)その他労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること
       労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針
      これを解答すればよい。なお、解答例にはそのままを載せたが、実際の試験では自分の言葉で簡略化して解答すればよい。
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    • 【解答例】
      禁止される「労働者に対する不利益な取扱い」については、以下のものがある。
      ① 心身の状態の情報に基づく就業上の措置の実施に当たり、例えば、健康診断後に医師の意見を聴取する等の労働安全衛生法令上求められる適切な手順に従わないなど、不利益な取扱いを行うこと。
      ② 心身の状態の情報に基づく就業上の措置の実施に当たり、当該措置の内容・程度が聴取した医師の意見と著しく異なる等、医師の意見を勘案し必要と認められる範囲内となっていないもの又は労働者の実情が考慮されていないもの等の労働安全衛生法令上求められる要件を満たさない内容の不利益な取扱いを行うこと。
      ③ 心身の状態の情報の取扱いに労働者が同意しないことや心身の状態の情報の内容を理由として、以下の措置を行うこと。
      (a)解雇すること
      (b)期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと
      (c)退職勧奨を行うこと
      (d)不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命じること
      (e)その他労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること
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  • (6)労働者の心身の状態の情報のうち、次の①~⑥の情報は、それぞれ以下のイ、ロ、ハのいずれに該当するか。

    ① 健康診断の結果(法定の項目)
    ② 長時間労働者に対する面接指導の結果
    ③ 保健指導の結果
    ④ 健康診断の事後措置について医師から聴取した意見
    ⑤ 健康診断の精密検査の結果
    ⑥ 治療と仕事の両立支援等のための医師の意見書

    イ 労働安全衛生法令に定める義務を履行するために、事業者が必ず取り扱わなければならない心身の状態の情報
    ロ 事業者が労働者本人の同意を得ずに収集することが可能であるが、事業場ごとの取扱規程を定めて運用することが適当である心身の状態の情報
    ハ 事業者が取り扱ううえであらかじめ労働者本人の同意を得ることが必要な心身の状態の情報

    • 【解説】
      指針は、2の「(9)心身の状態の情報の取扱いの原則(情報の性質による分類)」において、本小問の各項目について、②の長時間労働者に対する面接指導の結果以外は解答例のように分類している。
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    • 【解答例】
      以下の通り。
      ① 健康診断の結果(法定の項目)           ロ
      ② 長時間労働者に対する面接指導の結果        ロ
      ③ 保健指導の結果                  ハ
      ④ 健康診断の事後措置について医師から聴取した意見  イ
      ⑤ 健康診断の精密検査の結果             ハ
      ⑥ 治療と仕事の両立支援等のための医師の意見書    ハ
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  • (7)事業者が、労働者の心身の状態の情報の盗難・紛失等を防止するために、講ずべき安全管理措置にはどのようなものがあるか、三つ挙げよ。

    • 【解説】
      厚生労働省の「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」(以下「手引き」という。)に次のように記されている。これを挙げておけばよい。
      個人データの盗難・紛失等を防止するために、以下のような物理的安全管理措置を行う。
      - 個人データの保管場所の施錠
      - データ保管場所への入退室管理の実施
      - 記録機能を持つ媒体の持込み・持ち出し禁止
      - 記録機能を持つ媒体の接続の禁止又は制限
      - 離席時等におけるパソコン等のパスワードロックの実施  等
       事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き
      なお、本問は大前提として「「指針」に基づく」とされているのであるから、必ずしも「手引き」に基づいて記す必要はない。ファイアウォールの設置、個人情報はネットワークに接続されていないstand aloneの機器で処理・保存する、ログイン時のパスワード等による認証を挙げてもよい。
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    • 【解答例】
      労働者の心身の状態の情報の盗難・紛失等を防止するために、講ずべき安全管理措置の例としては、以下のようなものがある。
      ① 個人データの保管場所の施錠、データ保管場所への入退室管理の実施等のハードウエア上の対策。
      ② 離席時等におけるパソコン等へのパスワードロックの実施等のソフトウエア的対策。
      ③ 記録機能を持つ媒体の持込み・持ち出し禁止、記録機能を持つ媒体の接続の禁止又は制限等の管理的対策。
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  • (8)事業者が、医療保険者(健保組合等)から一般定期健康診断結果の提供を求められた場合に、その提供に当たって、事前の労働者個人の同意の必要性について述べよ。

    • 【解説】
      高齢者の医療の確保に関する法律第27条第2項に「保険者は、加入者を使用している事業者等又は使用していた事業者等に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働安全衛生法その他の法令に基づき当該事業者等が保存している当該加入者に係る健康診断に関する記録の写しを提供するよう求めることができる」とされ、同3項において「前二項の規定により、特定健康診査若しくは特定保健指導に関する記録又は健康診断に関する記録の写しの提供を求められた他の保険者又は事業者等は、厚生労働省令で定めるところにより、当該記録の写しを提供しなければならない」とされている。
      したがって、労働安全衛生規則に基づく定期健康診断の検査項目のうち、高齢者医療確保法に基づく特定健康診査の検査項目に含まれる項目については、個人情報の保護に関する法律第23条第1項(第一号)の規定により、法的に労働者の同意を得る必要はない。
      一方、労働安全衛生規則に基づく定期健康診断の検査項目のうち、高齢者医療確保法に基づく特定健康診査の検査項目に含まれない項目については、労働者の同意を得る必要がある。
      ※ なお、平成 24 年5月9日基発 050 9第6号「特定健康診査等の実施に関する再協力依頼について(依頼)」を参照されたい。
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    • 【解答例】
      事業者が、医療保険者(健保組合等)から一般定期健康診断結果の提供を求められた場合、高齢者の医療の確保に関する法律によって提供することが義務付けられている。
      したがって、労働安全衛生規則に基づく定期健康診断の検査項目のうち、高齢者医療確保法に基づく特定健康診査の検査項目に含まれる項目については、その提供は法令に基づく場合であることから、労働者の同意を得る必要はない。
      一方、労働安全衛生規則に基づく定期健康診断の検査項目のうち、高齢者医療確保法に基づく特定健康診査の検査項目に含まれない項目については、労働者の同意を得る必要がある。
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