労働衛生コンサルタント試験 健康管理 2017年 問3

職場における熱中症及びその予防対策




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 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。

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 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問 3 職場における熱中症及びその予防対策に関する基本的な知識を問う問題である。
熱中症及びその予防対策
2018年10月21日執筆 2020年03月22日修正 2020年12月20日修正

問3 職場における熱中症及びその予防対策に関する以下の設問に答えよ。

  • (1)熱中症が発生する生理学的な機序を述べよ。

    • 【解説】
      解答例に示す通り。
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    • 【解答例】
      暑熱環境下で作業を行うことにより体温が上昇すると、①発汗によって汗の蒸発による気化熱や、②皮膚の血流増加による気中への熱伝導によって体温調節が行われる。
      ところが、多湿・無風などの条件では気化熱による体温調節が効果的に行えず、高温・無風の条件下では空気への熱伝導も効果的に行われないようになる。
      そのため多量の発汗による水分消失(脱水症状)や塩分喪失による電解質バランスの障害が発生する。また、発汗や血流増加は、重要臓器への血流低下をもたらす。
      これらの結果として、体の温度調節が破たんをきたすと熱中症が発症することとなる。
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  • (2)職場において熱中症を発生させる作業環境、作業などの要因にはどのようなものがあるか述べよ。

    • 【解説】
      解答例に示す通り。
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    • 【解答例】
      熱中症を発生させる作業環境としては、①高温環境、②高い湿度、③空気の流れ(風通し)の悪さ、④輻射熱(高温物からの輻射、炎天下の太陽光やその照り返しなど)の強さの4つがある。
      また、作業要因としては、重筋作業、激しい体の動き、休憩の少なさなどがある。また、風や熱を通しにくい作業服も要因となる。
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  • (3)WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)とはどのような指標か説明せよ。

    • 【解説】
      この回答例では「気流」についても書いたが、テキストによっては気流を評価していないとするものもある。多くのテキストは、湿球温度計で通風も間接的に評価されているとしている。気流について書くと減点の対象となる恐れもあり、書くか書かないか、やや迷うところである。
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    • 【解答例】
      WBGTとは、熱中症の予防を目的とする指標で、単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示される。しかしながら、気温とは異なり、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響が大きい①湿度、②日射・輻射などの熱環境、③気流(湿球温度計によって間接的に評価している。)及び④気温の4つの要素を評価する指標である。
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  • (4)暑さへの慣れ(順化)とは身体のどのような変化を指すのか説明せよ。

    • 【解説】
      解答例に示す通り。
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    • 【解答例】
      熱への順化とは、熱に慣れその環境に適応することである。
      1週間から10日程度で徐々に体を暑さに慣れさせることにより、新陳代謝及び発汗機能が向上する。汗腺の働きが活発になり、発汗量が増加するにもかかわらず、汗の塩分が少なくなることから、水分補給による体液バランスが回復しやすくなる。
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  • (5)職場における設備上の対策として実施すべき事項を五つ挙げよ。

    • 【解説】
      解答例に示す通り。
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    • 【解答例】
      ① 高温多湿作業場所においては、発熱体と労働者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設けること。
      ② 屋外の高温多湿作業場所においては、直射日光並びに周囲の壁面及び地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設けること。
      ③ 高温多湿作業場所に適度な通風又は冷房を行うための設備を設けること。また、屋内の高温多湿作業場所における当該設備は、除湿機能があることが望ましい。
      ④ 高温多湿作業場所の近隣に冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所を設けること。また、当該休憩場所は臥床することのできる広さを確保すること。
      ⑤ 高温多湿作業場所又はその近隣に氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる物品及び設備を設けること。また、水分及び塩分の補給を定期的かつ容易に行えることができるよう高温多湿作業場所に飲料水の備付け等を行うこと。
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  • (6)職場における作業管理上の対策として実施すべき事項を五つ挙げよ。

    • 【解説】
      解答例に示す通り。
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    • 【解答例】
      (1)作業時間の短縮等
      作業の休止時間及び休憩時間を確保し、高温多湿作業場所の作業を連続して行う時間を短縮すること、身体作業強度が高い作業を避けること、作業場所を変更することなどの熱中症予防対策を、作業の状況等に応じて実施すること。
      (2)熱への順化
      高温多湿作業場所で労働者を作業に従事させる前に、計画的に、熱への順化期間を設けること。また、梅雨から夏季になる時期において、気温等が急に上昇した高温多湿作業場所で作業を行う場合、新たに当該作業を行う場合、長期間、当該作業場所での作業から離れ、その後再び当該作業を行う場合等においても、熱への順化期間を設ける。
      (3)水分及び塩分の摂取
      自覚症状の有無にかかわらず、水分及び塩分の作業前後の摂取及び作業中の定期的な摂取を指導するとともに、労働者の水分及び塩分の摂取を確認するための表の作成、作業中の巡視における確認などにより、定期的な水分及び塩分の摂取の徹底を図ること。特に、加齢や疾患によって脱水状態であっても自覚症状に乏しい場合があることに留意する。
      この場合、塩分等の摂取が制限される疾患を有する労働者については、主治医、産業医等に相談させること。
      (4)服装等
      熱を吸収し、又は保熱しやすい服装は避け、透湿性及び通気性の良い服装を着用させること。また、これらの機能を持つ身体を冷却する服の着用も考慮すること。なお、直射日光下では通気性の良い帽子等を着用させる。
      (5)作業中の巡視
      定期的な水分及び塩分の摂取に係る確認を行うとともに、労働者の健康状態を確認し、熱中症を疑わせる兆候が表れた場合において速やかな作業の中断その他必要な措置を講ずること等を目的に、高温多湿作業場所の作業中は巡視を頻繁に行うこと。
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  • (7)暑熱な場所における業務に従事する労働者にはどのような保健指導を行うべきか説明せよ。

    • 【解説】
      解答例に示す通り。
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    • 【解答例】
      高温多湿作業場所で作業を行う労働者については、睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝食の未摂取等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、日常の健康管理について保険指導を行う。
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