労働衛生コンサルタント試験 健康管理 2016年 問4

過重労働対策




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 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。

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 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問 4 過重労働対策に関する基本的な知識を問う問題である。これも時事問題といえるだろう。
過重労働対策
2018年10月21日執筆 2020年04月22日修正

問4 過重労働対策に関し、以下の設問に答えよ。

  • (1)事業場において、過重な負担となり得る職場の要因には長時間労働の他にどのようなものがあるか、箇条書きで述べよ。

    • 【解説】
      本小問は「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」(以下、本問の解説中で「認定基準」という。)中の第4の2の(2)のウの(ウ)に「業務の過重性の具体的な評価に当たっては、以下に掲げる負荷要因について十分検討すること」として挙げてある7項目からaの「労働時間」を除いた6項目を挙げればよい。
      この問題は、この認定基準を知っているかどうかを試すものとみて間違いないだろう。
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    • 【解答例】
      (1)不規則な勤務
      (2)拘束時間の長い勤務
      (3)出張の多い勤務
      (4)交代制勤務・深夜勤務
      (5)作業環境(温熱環境・騒音・時差等)
      (6)精神的緊張を伴う業務
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  • (2)過重労働によって発生し、又は増悪する疾病を二つ挙げよ。

    • 【解説】
      労働基準法施行規則別表第1の2第8号、第9号に示された疾病を記せばよい。ただ、出題者は「2つ」と言っているので、「脳・心臓疾患」と「精神疾患」の2つを答えて欲しかったのかもしれない。ただ、これは疾病名とはいえないだろうから、解答例には具体的な疾病を挙げた。
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    • 【解答例】(以下のうち2件を挙げればよい)
      (1)脳出血
      (2)くも膜下出血
      (3)脳梗塞
      (4)高血圧性脳症
      (5)心筋梗塞
      (6)狭心症
      (7)心停止(心臓性突然死を含む。)
      (8)解離性大動脈瘤
      (9)精神及び行動の障害
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  • (3)過重労働が有害な健康影響を生じる機序(メカニズム)について述べよ。

    • 【解説】
      過重労働が有害な健康影響を生じる機序(メカニズム)が現時点で学術的に明確になっているとは思えない。現に、過重労働が脳、心臓疾患発症の引き金になるとの考え方に否定的な研究者もいるほどである。
      しかし、ここは常識的に解答しておけばよいだろう。
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    • 【解答例】
      長時間労働を始めとした過重労働が健康障害をもたらす機序にはいくつかの経路がある。
      ひとつには長時間労働は、疲労の回復や睡眠のための時間が短くなることを意味する。そのため、血圧、ホルモン分泌、交感神経活動などの生理学的過程を障害し、精神的、身体的な症状の発症に結びつく。
      また、長時間労働などの過重労働は、運動不足のみならず、不健康な食事、喫煙、飲酒などと関連する。このような生活習慣は高血圧、高コレステロールなどの生活習慣病の原因となり、様ざまな生活習慣病のリスクを増大させる。
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  • (4)実労働時間の把握が困難であるのはどのような労働者か、簡潔に述べよ。

    • 【解説】
      (4)と(5)は出題当時は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(2001年4月6日公表)からの出題であると思われる。
      この基準そのものは現在も有効である。解答例には、この対象となる労働者を挙げておいた。
      しかし、出題の翌2017年(平成29年)1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定されており、やや状況が変化している。
      なお、2019年度の労働衛生コンサルタント試験「問4」の(2)の②と③にも、本問と同趣旨の出題がされているので、その解説も併せて参照されたい。
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    • 【解答例】
      (1)管理・監督者
         労働基準法の労働時間に関する規定の適用がないため、その労働時間の把握が困難となる。
      (2)みなし労働時間制が適用される労働者
      ① 事業場外で労働する者であって、労働時間の算定が困難なもの
      ② 専門業務型裁量労働制が適用される者
      ③ 企画業務型裁量労働制が適用される者
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  • (5)上記(4)のような労働者の実労働時間はどのようにして把握すべきか、簡潔に述べよ。

    • 【解説】
      解答例の通り。ただし、(3)については前小問の解説に述べた基準には記されていない。
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    • 【解答例】
      始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、次のいずれかの方法がある。
      (1)使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
      (2)タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
      (3)事業場外のみなし労働時間制が適用される労働者については、各日ごとの自己申告。
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  • (6)事業場において労働者が長時間労働に従事している場合に、長時間労働を抑制する上でどのような対策を講じるべきか、五つ挙げよ。

    • 【解説】
      やや、解答に迷う設問である。どうとでも答えられるからである。
      解答の方針としては、①年休の取得促進や定時退勤日の設定などの直接的な方法を挙げるという方法があるが、現実に業務量が減らない限り現実的ではない。次に、②生産性の向上(短時間で成果を上げる)を挙げることも可能だろうが、事業者なら誰しもそれをやった結果が現状なのであり、また、ブルーカラーの場合には限度があろう。③管理監督者を含めた意識改革を挙げる方法もあるだろうが、現状では意識が低いことを前提とした解答でしかない。
      解答例に示したのは、そのひとつにすぎない。
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    • 【解答例】A
      長時間労働を抑制する上でとるべき方法としては、以下のようなものがある。
      (1)改善のための意識の改革と共有化
         労使の話し合いの機会を設定し、長時間労働の改善についての認識が共有されることを確認する。
      (2)実施体制の整備
         経営トップが主導し、推進者を社員から選任して、社員を中心に進める。
      (3)現状の把握と改善点
         時間外労働の実態、年休等の取得状況、業務体制、社員の働き方、現在の取り組みの現状から、改善されるべき点を洗い出す。
      (4)取り組み内容の検討と制度づくり
         アンケートやインタビューを行い、社員のニーズを調査し、改善されるべき点について採用する制度や仕組みを構築する。
      (5)制度の運用・定期的フォロー
         制度の導入に当たって、説明会を実施し、理解と利用促進を求める。また、定期的に効果測定をして、取り組み内容を見直す。
      【解答例】B
      長時間労働を抑制する上でとるべき方法としては、以下のようなものがある。
      (1)36協定を限度基準などに適合したものとする。
      (2)労働時間を適正に把握する。
      (3)年次有給休暇の取得を促進する。
      (4)労働時間等の設定の改善のための措置を実施する。
      (5)業務の効率化を図ったり、新規採用増を図ったりすることにより業務の軽減を図る。
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  • (7)事業場において長時間労働の抑制が困難な場合に、健康障害の発生や増悪を防ぐ上でどのような対策を講じるべきか、五つ挙げよ。

    • 【解説】
      やや、解答に迷う設問である。これまたどうとでも答えられるからである。
      解答例には常識的なところを記しておいた。国家試験である以上、奇をてらった解答は避けるべきだからである。
      なお、設問の「対策」はあくまでも事業者のとるべき対策である。労働者の側の「対策」ではないのだから「十分な睡眠をとる」「バランスのとれた過不足のない食事を喫る」「過不足のない運動を行う」「ストレスをためない」「節酒・禁煙を心掛ける」などとしたのでは誤りとなる。ここでの解答では、それらのことの指導(生活指導)を行うと書かなければならない。
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    • 【解答例】
      長時間労働を抑制する上でとるべき方法としては、以下のようなものがある。
      (1)長時間労働者等への医師による面接指導の実施
         長時間労働者等に対して産業医から面接指導を受けることを勧奨し、確実な面接指導が行われるようにする。また法的に義務のない者についても事業場で基準を定めて面接指導を行うようにする。
      (2)衛生委員会における調査審議
         長時間労働者の健康確保について、衛生委員会において調査審議を行う。
      (3)健康診断の事後措置の実施
         健康診断の結果に基づき、医師の意見を勘案して、必要と認める場合は適切な措置を実施する。
      (4)保健指導等の実施
         長時間労働者やストレスの高い労働者に対して、保健師による健康指導、運動指導、栄養指導等の生活習慣に関する指導を行う。
      (5)治療と職業生活の両立
         現に疾病を有する労働者について、職業生活と治療の両立のための支援を行う。
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