このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。
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解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2015年度(平成27年度) | 問 2 | 石綿による健康障害とその防止に関する基本的な知識を問う問題である。 |
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石綿による健康障害 |
問2 石綿(アスベスト)による健康障害とその防止に関し、以下の設問に答えよ。
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(1)石綿の種類を三つ挙げよ。
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【解説】この小問に答えられなければ、この小問は選ばなかっただろうが、全体の前提となるサービス問題。閉じる
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【解答例】(以下のうち3件を挙げればよいが、(1)から(3)までを挙げておくのが無難と思われる)① クリソタイル(白石綿)② クロシドライト(青石綿)③ アモサイト(茶席面)④ アンソフィライト⑤ トレモライト⑥ アクチノライト閉じる
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(2)石綿の吸入による健康障害(石綿肺を除く。)とその潜伏期間について述べよ。なお、潜伏期間とは、吸入ばく露の開始から発症に至るまでの期間をいうものとする。
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【解説】これは解説するまでもないだろう。労基則別表第1の2第7号の8に記載されている肺がんと中皮腫は分かるだろうが、良性石綿胸水とびまん性胸膜肥厚も同別表第1の2の第四号の7に明記されているので漏らさないこと。潜伏期間は、解答例の最後の4行はなくても合格範囲には達するのではないかと思う。具体的な数値は、文献によってもかなり異なるからである。なお、この数値は(独法)環境再生保全機構の「アスベスト(石綿)とは」のサイトを参照し、岸本他の「石綿ばく露によるびまん性胸膜肥厚と中皮腫・肺癌発生に関する検討」によって一部修正した。閉じる
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【解答例】石綿による健康被害には、肺がん(原発性肺がん)、中皮腫(悪性中皮腫)、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚がある。これらの潜伏期間は、ばく露量が多いほど短くなる傾向があり、職業ばく露では、公衆の環境ばく露より短くなる傾向があるが、数十年程度とかなり長い。・ 良性石綿胸水は、平均40年程度であるが、15年以下の例もある。・ びまん性胸膜肥厚は3年以上の例がほとんどで、30年から60年という例もある。・ 肺がんでは、25年から45年程度であり、30年から40年程度の例が多い。・ 中皮腫では40年から50年程度と非常に長く、20年以下の例は報告されていない。閉じる
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(3)上記(2)の健康障害に係る労災保険給付支給決定の件数とその推移について述べよ。
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【解説】石綿による健康障害の過去15年間の支給決定件数は次図のようになっている。一般の労働災害発生件数のような動きはしていない。2006年にピークがあり、その後は肺がんを除けば横ばいで動いている。なお、いわゆるクボタショックは2005年のことで、「石綿による健康被害の救済に関する法律」が制定されたのが2006年である。なお、具体的な件数については、本サイトの「表で見る労働災害の発生と労働衛生の状況」を参照して欲しい。コンサルタント試験では、細かい数値まで覚えておく必要はないが、だいたいの傾向は把握しておく方が良い。閉じる
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【解答例】石綿による肺がん(原発性肺がん)、中皮腫(悪性中皮腫)、良性石綿胸水及びびまん性胸膜肥厚の労災支給決定件数は、いずれも2005年から2006年にかけて急増し、2007年にやや減少した後は、肺がんを除いては横ばいとなっている。中皮腫は近年では5百数十件で推移しており、肺がんは減少傾向がみられるものの3百件を上回っている。良性石綿胸水とびまん性胸膜肥厚は数十件程度で推移している。閉じる
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(4)石綿を取り扱う業務に従事する者が喫煙することの健康リスクを述べよ。
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【解説】肺がん発症においては、石綿はプロモーターの役割を果たしている。喫煙との関係では、喫煙と石綿は相加作用よりも、相乗的に作用すると考えられている。山内雅弥氏によると、石綿製品製造工場労働者の喫煙者は、一般の非喫煙者の19~53倍肺がんになりやすいという。また、岩井和郎氏によると、石綿作業に従事していない人の肺がん発症の確率を1.0とすると、非喫煙者で石綿作業に従事している人は1.4、喫煙者で石綿作業に従事していない人は12.0、喫煙者で石綿作業に従事している人の肺がん確率はさらに高く17.0に達するとしている。
喫煙 非喫煙 石綿作業従事 17.0 1.4 一般(石綿作業非従事) 12.0 1.0 一方の、中皮腫は、石綿に特異的な疾患であり、石綿が原因といってよい。中皮腫による健康リスクが喫煙によって高められるという証拠は存在していない。これを解答にどのように書くかだが、中皮腫についてはあえて書く必要はないようにも思える。閉じる -
【解答例】石綿を取り扱う業務に従事する作業者が喫煙者である場合、同一条件の非喫煙者よりも肺がんに罹患するリスクが高まると言われている。肺がん発症においては、石綿はプロモーターの役割を果たしている。喫煙との関係では、喫煙と石綿は相加作用よりも、相乗的に作用すると考えられている。そのため、石綿を取り扱う業務に従事する作業者は、喫煙によって健康障害のリスクが高くなると考えられる。閉じる
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(5)石綿が使用されている建築物の解体の作業において、作業者に使用させなければならない保護具を挙げよ。
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【解説】石綿が使用されている建築物の解体の作業といっても、レベル1からレベル3まで様ざまなレベルがある。レベル1の作業のうち、吹き付け石綿の掻き落とし、粉砕などの作業を隔離された場所で行う場合には、石綿則第14条の規定により、呼吸用保護具(電動ファン付き呼吸用保護具又はこれと同等以上の性能を有する空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスクに限る)及び保護衣を使用させなければならない。一方、レベル2の耐火被覆材、断熱材、保温材であっても、切断、穿孔、研磨等を伴う除去作業の場合は、同様である。【石綿障害予防規則】(吹き付けられた石綿等の除去等に係る措置)第6条 事業者は、次の各号のいずれかの作業に労働者を従事させるときは、次項に定める措置を講じなければならない。ただし、当該措置と同等以上の効果を有する措置を講じたときは、この限りでない。一 壁、柱、天井等に石綿等が吹き付けられた建築物又は船舶の解体等の作業を行う場合における当該石綿等を除去する作業二及び三 (略)2 事業者が講ずる前項本文の措置は、次の各号に掲げるものとする。一 前項各号に掲げる作業を行う作業場所(以下この項において「石綿等の除去等を行う作業場所」という。)を、それ以外の作業を行う作業場所から隔離すること。二 (以下略)第14条 事業者は、石綿等の切断等の作業に労働者を従事させるときは、当該労働者に呼吸用保護具(第6条第2項第一号の規定により隔離を行った作業場所において、同条第1項第一号に掲げる作業に労働者を従事させるときは、電動ファン付き呼吸用保護具又はこれと同等以上の性能を有する空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスクに限る。)を使用させなければならない。2 事業者は、石綿等の切断等の作業に労働者を従事させるときは、当該労働者に作業衣を使用させなければならない。ただし、当該労働者に保護衣を使用させるときは、この限りでない。3 労働者は、事業者から前二項の保護具等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。その他の場合は、原則として捕集効率99.9%以上の反面面体の呼吸用保護具か専用の作業衣でもよいこととなっている。また、成形板を原形のまま取り外すなど、とくにばく露量の少ない場合については、捕集効率95%以上の取替え式呼吸用保護具か専用の作業衣でもよいこととなっている。閉じる
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【解答例】レベル1の吹き付け石綿の掻き落とし、粉砕などの作業を隔離された場所で行う場合には、石綿則第14条の規定により、呼吸用保護具(電動ファン付き呼吸用保護具又はこれと同等以上の性能を有する空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスクに限る)及び保護衣を使用させなければならない。これは、レベル2の耐火被覆材、断熱材、保温材であっても、切断、穿孔、研磨等を伴う除去作業の場合は同様である。レベル3の成形板の場合は、切断、穿孔、研磨等を伴う除去作業であっても、捕集効率99.9%以上の反面面体の呼吸用保護具及び、保護衣又は専用の作業衣を使用させる。また、成形板を原形のまま取り外すなど、とくにばく露量の少ない場合については、捕集効率95%以上の取替え式呼吸用保護具及び、保護衣又は専用の作業衣を使用させる。閉じる
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(6)石綿が使用されている建築物の解体の作業において、講ずべき措置を五つ挙げよ。ただし、作業者の喫煙の禁止と上記(5)で述べた保護具の着用は除くものとする。
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【解説】解答例に示す通りであるが、各自、適当に省略して記述して欲しい。閉じる
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【解答例】1 事前調査あらかじめ、対象の建築物について、石綿等の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておく。2 掲示以下の事項を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示する。① 上記1の調査を終了した年月日② 上記調査の方法及び結果の概要3 作業計画の策定石綿等による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、次の事項が定められた作業計画を作成し、かつ、関係労働者に周知するとともにその作業計画により作業を行う。① 作業の方法及び順序② 石綿等の粉じんの発散を防止し、又は抑制する方法③ 作業を行う労働者への石綿等の粉じんのばく露を防止する方法4 作業の届出壁、柱、天井等に石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材等が張り付けられた建築物の解体等の作業を行う場合における、その保温材、耐火被覆材等を除去する作業を行うときは、あらかじめ労働基準監督署長に提出する。5 吹き付けられた石綿等の除去等に係る措置(1)次のいずれかの作業に労働者を従事させるときは、(2)に定める措置又はこれらと同等以上の効果を有する措置を講じる。① 壁、柱、天井等に石綿等が吹き付けられた建築物又は船舶の解体等の作業を行う場合における当該石綿等を除去する作業② 壁、柱、天井等に石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材等が張り付けられた建築物の解体等の作業を行う場合における、その保温材、耐火被覆材等を除去する作業(2)(1)の措置は、次に掲げるものとする。① 前項各号に掲げる作業を行う作業場所を、それ以外の作業を行う作業場所から隔離する。② 石綿等の除去等を行う作業場所にろ過集じん方式の集じん・排気装置を設け、排気を行うこと。③ 石綿等の除去等を行う作業場所の出入口に前室、洗身室及び更衣室を設置すること。これらの室の設置に当たっては、石綿等の除去等を行う作業場所から労働者が退出するときに、前室、洗身室及び更衣室をこれらの順に通過するように互いに連接させること。④ 石綿等の除去等を行う作業場所及び③に示した前室を負圧に保つこと。⑤ ①により隔離を行った作業場所において初めて(1)に示した作業を行う場合には、作業を開始した後速やかに、②のろ過集じん方式の集じん・排気装置の排気口からの石綿等の漏えいの有無を点検すること。⑥ その日の作業を開始する前に、③の前室が負圧に保たれていることを点検すること。⑦ ⑤及び⑥の点検を行った場合において、異常を認めたときは、直ちに前項各号に掲げる作業を中止し、ろ過集じん方式の集じん・排気装置の補修又は増設その他の必要な措置を講ずること。6 隔離を解く場合の措置5の①により隔離を行ったときは、隔離を行った作業場所内の石綿等の粉じんを処理するとともに、(1)の①又は②の作業を行った場合にあっては、吹き付けられた石綿等又は張り付けられた保温材、耐火被覆材等を除去した部分を湿潤化した後で隔離を解く。7 保温材、耐火被覆材等の除去等に係る措置5の(1)の作業に労働者を従事させるときは、その作業場所にその作業に従事する労働者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示する。閉じる
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