このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。
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解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2013年度(平成25年度) | 問 3 | 健康除法を取扱う上での留意事項について基本的な知識を問う問題である。 |
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個人情報の保護 |
問3 近年、多岐にわたる情報を容易に授受できるようになったが、一方で情報が安易に漏洩することが問題になっている。特に、個人情報の漏洩を防止するために個人情報の保護に関する法律に加えて、厚生労働省では「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(平成24年6月改正通達。以下「通達」という。)を示している。このことに関し、以下の設問に答えよ。
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(1)この通達に掲げられている健康情報を具体的に六つ列記せよ。
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【解説】
本問の「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(平成24年6月改正通達(以下「旧通達」という。))は、平成27年の改正を経て、平成29年に廃止になっている。現在は「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について(通知)」(平成29年5月29日個情第749号・基発0529第3号(最終改正平成31年3月29日)(以下「現行通達」という。))が有効となっている。本問の解説は、現行通達に基づいて記述する。旧通達においても、現行通達においても、健康情報(要配慮個人情報)は18項目が挙げられている。このうち、6項目を挙げればよい。① 産業医、保健師、衛生管理者その他の労働者の健康管理に関する業務に従事する者(以下「産業保健業務従事者」という。)が労働者の健康管理等を通じて得た情報② 安衛法第65条の2第1項の規定に基づき、事業者が作業環境測定の結果の評価に基づいて、労働者の健康を保持するため必要があると認めたときに実施した健康診断の結果③ 安衛法第66条第1項から第4項までの規定に基づき事業者が実施した健康診断の結果並びに安衛法第66条第5項及び第66条の2の規定に基づき労働者から提出された健康診断の結果④ 安衛法第66条の4の規定に基づき事業者が医師又は歯科医師から聴取した意見及び第66条の5第1項の規定に基づき事業者が講じた健康診断実施後の措置の内容⑤ 安衛法第66条の7の規定に基づき事業者が実施した保健指導の内容⑥ 安衛法第66条の8第1項、安衛法第66条の8の2第1項及び安衛法第66条の8の4第1項の規定に基づき事業者が実施した面接指導の結果及び同条第2項(第66条の8の2第2項及び第66条の8の4第2項の規定により準用する場合を含む。)の規定に基づき労働者から提出された面接指導の結果⑦ 安衛法第66条の8第4項、安衛法第66条の8の2第2項及び安衛法第66条の8の4第2項の規定に基づき事業者が医師から聴取した意見並びに安衛法第66条の8第5項、安衛法第66条の8の2第2項及び安衛法第66条の8の4第2項の規定に基づき事業者が講じた面接指導実施後の措置の内容⑧ 安衛法第66条の9の規定に基づき事業者が実施した面接指導又は面接指導に準ずる措置の結果⑨ 安衛法第66条の10第1項の規定に基づき事業者が実施した心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)の結果⑩ 安衛法第66条の10第3項の規定に基づき事業者が実施した面接指導の結果⑪ 安衛法第66条の10第5項の規定に基づき事業者が医師から聴取した意見及び同条第6項の規定に基づき事業者が講じた面接指導実施後の措置の内容⑫ 安衛法第69条第1項の規定に基づく健康保持増進措置を通じて事業者が取得した健康測定の結果、健康指導の内容等⑬ 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第27条の規定に基づき、労働者から提出された二次健康診断の結果⑭ 健康保険組合等が実施した健康診断等の事業を通じて事業者が取得した情報⑮ 受診記録、診断名等の療養の給付に関する情報⑯ 事業者が医療機関から取得した診断書等の診療に関する情報⑰ 労働者から欠勤の際に提出された疾病に関する情報⑱ ①から⑰までに掲げるもののほか、任意に労働者等から提供された本人の病歴、健康診断の結果、その他の健康に関する情報閉じる
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【解答例】
① 産業医、保健師、衛生管理者その他の労働者の健康管理に関する業務に従事する者が労働者の健康管理等を通じて得た情報② 安衛法の規定に基づいて実施した健康診断の結果及び安衛法の規定に基いて労働者が提出した健康診断の結果③ 安衛法の規定に基づいて医師又は歯科医師から聴取した意見及び、同法の規定に基づいて事業者が講じた健康診断実施後の措置の内容④ 安衛法の規定に基づいて実施した保健指導の内容⑤ 安衛法の規定に基づいて実施した面接指導の結果及び、同法の規定に基づいて労働者が提出した面接指導の結果⑥ 安衛法の規定に基づいて実施したストレスチェックの結果閉じる
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【解説】
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(2)次の①から④の同意の必要性の有無について、その理由を付して簡潔に説明せよ。
① 事業者が、労働者から提出された診断書の内容以外の情報について医療機関に対し健康情報の提供を求め、医療機関が求められた情報を当該事業者に提供する場合における医療機関に対する当該労働者の同意。-
【解説】
この場合、医療機関の側から見れば、個人情報保護法第23条の第三者提供に当たるので、医療機関は労働者から同意を得る必要があるのである(現行通達別添2の第3の5の(1)参照)。もちろん、法定の健康診断の項目については法的には本人同意は不要であるが、この場合もいわゆる生データの提供は医療関係者の範囲にとどめることが望ましい。閉じる
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【解答例】
同意を要する。事業者から求められた情報を医療機関が提供することは、個人情報保護法第23条の第三者提供に該当するため、医療機関は労働者から同意を得る必要がある。閉じる
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【解説】
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② 事業者が、労働者に対する労働安全衛生法第66条第1項から第4項に基づく健康診断を医療機関に委託するために、健康診断の実施に必要な労働者の個人データを医療機関に提供する場合における事業者に対する当該労働者の同意。
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【解説】
この場合、法令に基づく提供であるから個人情報保護法第23条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当するので同意は不要である(現行通達別添2の第3の5の(2)参照)。閉じる
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【解答例】
同意は不要である。安衛法第66条第1項から第4項までの規定に基づく健康診断は、医師又は歯科医師によって行わなければならないとされている。事業者は、健康診断の実施を外部機関に委託して行う場合には、その実施に必要な労働者の個人情報を外部機関に提供する必要がある。すなわち、本問における労働者の個人情報の外部機関への提供は、安衛法に基づく事業者の義務である。従って、この情報提供は、個人情報保護法第23条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当し、本人の同意を得なくても提供することができる。閉じる
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【解説】
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③ 前記②の医療機関が、健康診断の実施結果を当該事業者に報告する場合における医療機関に対する当該健康診断受診者の同意。
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【解説】
②と同様に、法令に基づく提供であるから個人情報保護法第23条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当するので同意は不要である(現行通達別添2の第3の5の(2)参照)。閉じる
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【解答例】
同意は不要である。安衛法第66条等により事業者は、医師又は歯科医師による健康診断を行わなければならない。そして、事業者は、健康診断の結果の記録、結果に係る医師又は歯科医師からの意見聴取、健康診断結果の労働者に対する通知等が義務付けられている。事業者がこれらの義務を遂行するためには、健康診断の結果が外部機関から事業者に報告(提供)されなければならない。従って、外部機関が委託元である事業者に対して労働者の健康診断の結果を報告(提供)することは、それぞれ安衛法に基づく行為であると言える。従って、この情報提供は、個人情報保護法第23条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当し、本人の同意を得なくても提供することができる。閉じる
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【解説】
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④ 特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(平成19年厚生労働省令第157号)第2条に定める項目に係る労働安全衛生法第66条第1項から第4項に基づき事業者が労働者に対し行った健康診断の記録の写しについて、事業者が、医療保険者からの求めに応じ当該記録の写しを提供する場合における事業者に対する当該労働者の同意。
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【解説】
②と同様に、法令に基づく提供であるから個人情報保護法第23条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当するので同意は不要である(現行通達別添2の第3の5の(6)参照)。閉じる
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【解答例】
同意は不要である。高齢者の医療の確保に関する法律の規定により、医療保険者は、加入者を使用している事業者又は使用していた事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、安衛法その他の法令に基づき、その事業者が保存している加入者に係る健康診断に関する記録の写しを提供するよう求めることができ、健康診断に関する記録の写しの提供を求められた事業者は厚生労働省令で定めるところにより、その記録の写しを提供しなければならないとされている。従って、特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準第2条に定める項目に係る記録の写しについては、医療保険者からの提供の求めがあった場合に事業者が当該記録の写しを提供することは、法令に基づくものである。従って、この情報提供は、個人情報保護法第23条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当し、本人の同意を得なくても提供することができる。閉じる
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【解説】
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(3)事業者は健康診断の結果を産業保健業務従事者に取り扱わせることが望ましいとされている。
① 産業保健業務従事者を具体的に列記せよ。-
【解説】
現行通達別添2の第2の(1)の定義をそのまま記せばよいであろう。閉じる
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【解答例】
産業医、保健師、衛生管理者その他の労働者の健康管理に関する業務に従事する者である。閉じる
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【解説】
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② 産業保健業務従事者に取り扱わせることが望ましい理由を簡潔に説明せよ。
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【解説】
現行通達別添2の第3の3には「健康情報のうち診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の加工前の情報や詳細な医学的情報の取扱いについては、その利用に当たって医学的知識に基づく加工・判断等を要することがあることから、産業保健業務従事者に行わせることが望ましい」とされている。これをそのまま記せばよいであろう。なお、医師、保健師等は、刑法、保健師法等で守秘義務が定められていることについては、現行通達に記されておらず衛生管理者にも守秘義務は規定されていないことから書かない方がよいかもしれない。閉じる
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【解答例】
健康情報のうち診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の加工前の情報や詳細な医学的情報の取扱いについては、その利用に当たって医学的知識に基づく加工・判断等を要することがあることから、産業保健業務従事者に行わせることが望ましい閉じる
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【解説】
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(4)事業者は健康情報の取り扱いを事業場内の規定等として定め、労働者に周知するとともに、関係者に当該規定に従って取り扱わせることが望ましいとされている。この規定等の内容を具体的に四つ列記せよ。
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【解説】
現行通達別添2の第3の8の(1)に定められている項目を4つ挙げればよい。① 健康情報の利用目的及び利用方法に関すること② 健康情報に係る安全管理体制に関すること③ 健康情報を取り扱う者及びその権限並びに取り扱う健康情報の範囲に関すること④ 健康情報の開示、訂正、追加又は削除の方法(廃棄に関するものを含む。)に関すること⑤ 健康情報の取扱いに関する苦情の処理に関すること閉じる
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【解答例】
① 健康情報の利用目的及び利用方法に関すること② 健康情報に係る安全管理体制に関すること③ 健康情報を取り扱う者及びその権限並びに取り扱う健康情報の範囲に関すること④ 健康情報の開示、訂正、追加又は削除の方法(廃棄に関するものを含む。)に関すること閉じる
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【解説】