このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。
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2012年度(平成24年度) | 問 4 | 高気圧作業に関する基本的な知識問題である。過去問が少ないため、やや難問だっただろうか。 |
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高気圧障害 |
問4 高気圧作業に関して、以下の設問に答えよ。
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(1)高気圧作業に伴って身体に対する影響や障害が起こる可能性がある。どのような影響や障害が起こり得るか、適宜項目分けし、それぞれについて、発生の機序を含めて簡潔に説明せよ。
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【解説】
本小問は、原則として、昭和36年5月8日基発第415号「高気圧作業による疾病(潜函病、潜水病等)の認定について」に従って、解答することが求められているものと思われる。1 潜函病、潜水病について(1)潜函 潜水その他高気圧作業に従事している労働者(以下単に高気圧作業者という)が、概ね1.0kg/cm2(ゲージ圧)又は水深10m以上の高気圧下における作業により、減圧中又は減圧後において、次の各号のいずれかの症状を呈し、医学上療養が必要であると認められる場合イ 関節痛又は筋肉痛等いわゆるベンド(運動器障害)ロ 知覚障害、運動障害、膀胱直腸障害、メニエール氏症侯群、失語症又は症侯性精神病等(中枢神経系の障害)ハ 胸骨下疼痛、呼吸困難、又は失神等いわゆるチヨーク又はショック症状(呼吸循環系の障害)(2) (略)2 聴器及び副鼻腔の障害について高気圧作業者が、概ね0.3kg/cm2(ゲージ圧)又は水深3m以上の高気圧下における作業により主として加圧時において聴器、副鼻腔等に疼痛を生じ、かつ、減圧後において次のいずれかの症状を呈し医学上療養が必要であると認められる場合(1)耳閉塞感、耳痛、聴力障害、耳鳴り、眩暈、又は悪心等が訴えられ、更に他覚的には鼓膜の高度の陥凹、若しくは穿孔又は耳出血等が認められるもの(聴器の障害)(2)前頭部痛が訴えられ、更に他覚的には鼻腔粘膜の腫大充血又は漿液性分泌物が認められるもの(副鼻腔の障害)ただし、かかる疾病については、基礎疾病(例えば、慢性耳管狭窄、急性上気道感染等)又は既存疾病(例えば、慢性中耳炎、慢性副鼻腔炎等)がある場合が多いので、当該作業による加圧又は減圧が原因となって異常に早期に発症又は急激に増悪したことが専門医の各種検査により医学的に認められる必要があること。なお、この場合には、当該急性症状消退後における基礎疾病又は既存疾病に対する根本的治療は補償の対象とならないこと。3 歯牙疾患について高気圧作業者が、概ね0.3kg/cm2(ゲージ圧)又は水深3m以上の高気圧下における作業により、加圧又は減圧時において歯牙又は歯周組織に疼痛を生じ、かつ、減圧後において歯髄炎、歯周組織炎又は歯肉(齦)炎等の急性症状が残存したものであって、医学上療養が必要であると認められる場合。ただし、これらの疾患は通常処置歯又は既存疾病のある場合にこれが発症又は増悪することが多いので、当該作業による加圧又は減圧が原因となって急激に発症又は増悪したことが専門医の各種検査により医学的に認められる必要があること。なお、この場合には、急性症状消退後における既存疾病に対する根本的治療は補償の対象とならないこと。4 過膨脹による肺破裂について高気圧作業者が、概ね0.3kg/cm2(ゲージ圧)又は水淡3m以上の高圧より急速な減圧又は浮上中及びその直後に発生した肺破裂とこれに伴う空気栓塞症又は気胸の場合5 潜水墜落病等(いわゆるスクイーズ)について潜水作業中に、体表に不平均に圧が加わったことにより発生した高度の頭部、顔面部のうっ血、浮腫、皮下粘膜の出血又は眼球突出若しくは呼吸困難等の症状を呈した場合。※ 高気圧作業による疾病(潜函病、潜水病等)の認定についてなお、1の(1)のイの「ベンド」は現在では「ベンズ」の呼び方が一般的である。これに酸素中毒と窒素酔いを追加して、一応、解答例のようにまとめたが、各自の言葉で記述すればよい。なお、解答例には書かなかったが、二酸化炭素中毒なども考えられる。閉じる
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【解答例】
① 減圧症(減圧時または減圧後)窒素などの様々な気体は、高圧下では液体(血液など体液)に溶け込みやすくなる。これが減圧するにしたがって体液から気体となって発生し、血管内で気泡となって様々な症状を起こす。これが減圧症である。その症状は、皮膚障害(かゆみ、痛み、発疹等)やベンズ(四肢の関節痛、関節周辺部の疼痛、運動機能障害など)、四肢の浮腫・むくみなどのⅠ型(軽症)、チョークス(頻呼吸、息切れ、胸骨下疼痛、呼吸困難、失神)、さらには呼吸循環系の障害でショック症状に至るなどのⅡ型(重症)がある。また、気泡の発生が激しいと、肺が膨張して空気栓塞症となり、さらにひどい場合には肺が破裂することもある。② スクイーズ(圧外傷)(加圧時または減圧時)身体に加圧又は減圧が加わると、体内の空隙の空気が膨張又は圧縮され、各部の空隙が不均衡に膨らんだり縮小したりして様々な症状が生じる。具体的には、耳痛、回転性めまい、難聴、副鼻腔の疼痛、鼻出血、腹痛などである。大きな気圧変化が急激に起きると、消化管の破裂や、肺胞破裂と気胸による呼吸困難と意識の変容または消失が生じることもある。めまいによって方向感覚が奪われたり、意識が変容したりすると、深海での作業では重大な災害につながるリスクが生じる。また、眼の奥で出血を起こすと視力障碍、歯根部の空隙の圧力による歯の損傷、顔面の血管から出血すると痣の発生などの後遺障碍を生じることがある。③ 酸素中毒(高気圧下滞在時)高濃度の酸素や、高気圧化で酸素の分圧が1.4気圧を超えた空気を吸入することで発症する。肺型と中枢神経型がある。肺型では胸部の痛みや呼吸困難を生じる。中枢神経型では、回転性めまい、悪心、嘔吐、視野狭窄などを生じ、重症な場合は全身の痙攣発作や意識障害を生じ、溺死のリスクが高まる。また、酸素中毒には慢性型があり、項分圧酸素を長期にわたって吸入すると、肺に炎症を起こすことがある。④ 窒素酔い(高気圧下滞在時)加圧により身体に溶け込んだ窒素が多くなることにより引き起こされる症状で、急性のアルコール中毒と類似した症状及び兆候が表れる。知的活動力や判断力の低下が生ずるため、それが原因となって重大な災害を発生するリスクがある。圧力が高くなると幻覚や意識消失を生じることもある。減圧されると、知的活動力や判断力の低下は、急速に回復する。閉じる
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【解説】
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(2)設問(1)のような影響や障害が起こり得る作業として、実際にどのような作業があるか。代表的なものを二つ挙げよ。
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【解説】
高気圧作業の主なものとしては、高圧則第1条の2第二号の高圧室内業務と同第三号の潜水業務がある。【労働安全衛生法施行令】(作業主任者を選任すべき作業)第6条 (柱書 略)一 高圧室内作業(潜函工法その他の圧気工法により、大気圧を超える気圧下の作業室又はシヤフトの内部において行う作業に限る。)二~二十三 (略)(就業制限に係る業務)第6条 (柱書 略)一~八 (略)九 潜水器を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う業務十~十六 (略)【高気圧作業安全衛生規則】(定義)第1条の2 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。一 (略)二 高圧室内業務 労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号。以下「令」という。)第六条第一号の高圧室内作業に係る業務をいう。三 高圧室内業務 令第二十条第九号の業務をいう。四~六 (略)なお、解答例にはやや詳しく書いたが、「高圧室内作業及び潜水作業」と簡潔に書いても減点されることはないと思う。閉じる
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【解答例】
① 潜函工法その他の圧気工法により、大気圧を超える気圧下の作業室又はシャフトの内部において行う高圧室内作業② 潜水器を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う潜水作業閉じる
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【解説】
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(3)大気圧を上回る一定の気圧に維持されている部屋で行われる作業がある。この作業に対して、適切な管理を行い、作業者の健康障害を防止するためには、具体的にどのようなことが求められるか。次の各項に分けて答えよ。
① 作業環境管理-
【解説】
本問は、高圧則の高圧室内作業に関する各条文を、①作業環境管理、作業管理、健康管理及び安全衛生教育に分類して解答すればよいだろう。高圧室内作業に関する作業環境管理関連の規定としては、以下の条文が考えられる。【高気圧作業安全衛生規則】(作業室の気積)第2条 事業者は、労働者を作業室において高圧室内業務に従事させるときは、作業室の気積を、現に当該作業室において高圧室内業務に従事している労働者一人について、四立方メートル以上としなければならない。(気こう室の床面積及び気積)第3条 事業者は、気こう室の床面積及び気積を、現に当該気こう室において加圧又は減圧を受ける高圧室内作業者一人について、それぞれ〇・三平方メートル以上及び〇・六立方メートル以上としなければならない。(空気清浄装置)第5条 事業者は、空気圧縮機と作業室又は気こう室との間に、作業室及び気こう室へ送気する空気を清浄にするための装置を設けなければならない。(排気管)第6条 事業者は、作業室及び気こう室に、専用の排気管を設けなければならない。2 潜函又は潜鐘の気こう室内の高圧室内作業者に減圧を行うための排気管は、内径五十三ミリメートル以下のものとしなければならない。(圧力計)第7条 事業者は、作業室への送気の調節を行うためのバルブ又はコツクの操作を行う場所を潜函、潜鐘、圧気シールド等の外部に設けたときは、当該場所に、作業室内のゲージ圧力(以下「圧力」という。)を表示する圧力計を設けなければならない。2~6 (略)(異常温度の自動警報装置)第7条の2 事業者は、作業室及び気こう室へ送気するための空気圧縮機から吐出される空気並びに当該空気圧縮機に附属する冷却装置を通過した空気の温度が異常に上昇した場合に当該空気圧縮機の運転を行う者その他の関係者にこれを速やかに知らせるための自動警報装置を設けなければならない。(加圧の速度)第14条 事業者は、気こう室において高圧室内作業者に加圧を行うときは、毎分〇・〇八メガパスカル以下の速度で行わなければならない。(ガス分圧の制限)第15条 事業者は、酸素、窒素又は炭酸ガスによる高圧室内作業者の健康障害を防止するため、作業室及び気こう室における次の各号に掲げる気体の分圧がそれぞれ当該各号に定める分圧の範囲に収まるように、作業室又は気こう室への送気、換気その他の必要な措置を講じなければならない。一 酸素 十八キロパスカル以上百六十キロパスカル以下(ただし、気こう室において高圧室内作業者に減圧を行う場合にあつては、十八キロパスカル以上二百二十キロパスカル以下とする。)二 窒素 四百キロパスカル以下三 炭酸ガス 〇・五キロパスカル以下(酸素ばく露量の制限)第16条 事業者は、酸素による高圧室内作業者の健康障害を防止するため、高圧室内作業者について、厚生労働大臣が定める方法により求めた酸素ばく露量が、厚生労働大臣が定める値を超えないように、作業室又は気こう室への送気その他の必要な措置を講じなければならない。(有害ガスの抑制)第17条 事業者は、作業室における有害ガスによる高圧室内作業者の危険及び健康障害を防止するため、換気、有害ガスの測定その他必要な措置を講じなければならない。(減圧の速度等)第18条 事業者は、気こう室において高圧室内作業者に減圧を行うときは、次に定めるところによらなければならない。一 減圧の速度は、毎分〇・〇八メガパスカル以下とすること。二 厚生労働大臣が定める区間ごとに、厚生労働大臣が定めるところにより区分された人体の組織(以下この号において「半飽和組織」という。)の全てについて次のイに掲げる分圧がロに掲げる分圧を超えないように、減圧を停止する圧力及び当該圧力下において減圧を停止する時間を定め、当該時間以上減圧を停止すること。イ 厚生労働大臣が定める方法により求めた当該半飽和組織内に存在する不活性ガスの分圧ロ 厚生労働大臣が定める方法により求めた当該半飽和組織が許容することができる最大の不活性ガスの分圧2 (略)(減圧時の措置)第20条 事業者は、気こう室において、高圧室内作業者に減圧を行うときは、次の措置を講じなければならない。一 気こう室の床面の照度を二十ルクス以上とすること。二及び三 (略)2 (略)【高気圧作業安全衛生規則第八条第二項等の規定に基づく厚生労働大臣が定める方法等】(酸素ばく露量の計算方法)第2条 規則第十六条の厚生労働大臣が定める方法は、次に定める式により求めた次条第一項各号の区間(平均酸素分圧が五十キロパスカルを超える区間に限る。以下この項において同じ。)ごとの酸素ばく露量を一日又は一週間について合計する方法とする。(この式において、UPTD、t 及び PO2 は、それぞれ次の値を表すものとする。UPTD t の区間における酸素ばく露量の合計t 次条第一項各号の区間の時間(単位 分)PO2 t の区間の平均酸素分圧(単位 キロパスカル))(厚生労働大臣が定める区間等)第3条 規則第十八条第一項第二号の厚生労働大臣が定める区間は、加圧の開始から減圧の終了までを次の各号に定める区間ごとに区分したそれぞれの区間とする。一 窒素及びヘリウムの濃度並びに加圧又は減圧の速度が一定の区間二 窒素若しくはヘリウムの濃度又は加圧若しくは減圧の速度が変化している区間2 規則第十八条第一項第二号の厚生労働大臣が定めるところにより区分された人体の組織は、別表の「半飽和組織」欄に掲げる組織とする。3 規則第十八条第一項第二号イの厚生労働大臣が定める方法は、別表の「半飽和組織」欄に掲げる組織ごとに、第一号により求めた窒素分圧と第二号により求めたヘリウム分圧を合計する方法とする。一 当該半飽和組織の窒素分圧(この式において、PN2、Pa、Pb、NN2、R、t、k、QN2及びeは、それぞれ次の値を表すものとする。PN2 第一項各号の区間が終わる時点の当該半飽和組織の窒素分圧(単位 キロパスカル)NN2 当該区間の窒素の濃度(窒素の濃度が変化する区間にあっては、当該区間の最高の窒素の濃度)(単位 パーセント)k loge2/別表の「半飽和組織」欄の区分に応じた「窒素半飽和時間」欄に掲げる時間QN2 当該区間が始まる時点の当該半飽和組織の窒素分圧(単位 キロパスカル)とする。ただし、次に掲げる区間においては、それぞれ次に定める窒素分圧とする。イ 当該高圧室内業務における最初の区間(ロの区間を除く。) 0ロ 高圧室内業務を終了した者で、最終の減圧が終了してから十四時間を経過しないものを更に高圧室内業務に従事させる場合における最初の区間 最終の減圧が終了してから当該高圧室内業務を開始するまでを一つの区間とみなして求めた区間が終わる時点の当該半飽和組織の窒素分圧))二 当該半飽和組織のヘリウム分圧(この式において、PHe、Pa、Pb、NHe、R、t、k、QHe及びeは、それぞれ次の値を表すものとする。PHe 第一項各号の区間が終わる時点の当該半飽和組織のヘリウム分圧(単位 キロパスカル)NHe 当該区間のヘリウムの濃度(ヘリウムの濃度が変化する区間にあっては、当該区間の最高のヘリウムの濃度)(単位 パーセント)k loge2/別表の「半飽和組織」欄の区分に応じた「ヘリウム半飽和時間」欄に掲げる時間QHe 当該区間が始まる時点の当該半飽和組織のヘリウム分圧(単位 キロパスカル)とする。ただし、次に掲げる区間においては、それぞれ次に定めるヘリウム分圧とする。イ 当該高圧室内業務における最初の区間(ロの区間を除く。) 0ロ 高圧室内業務を終了した者で、最終の減圧が終了してから十四時間を経過しないものを更に高圧室内業務に従事させる場合における最初の区間 最終の減圧が終了してから当該高圧室内業務を開始するまでを一つの区間とみなして求めた区間が終わる時点の当該半飽和組織のヘリウム分圧))4 規則第十八条第一項第二号ロの厚生労働大臣が定める方法は、別表の「半飽和組織」欄に掲げる組織ごとに、次に定める式により計算する方法とする。(この式において、Paは前項第一号に定める値と同じ値を表し、M、Pc、B及びAは、それぞれ次の値を表すものとする。M 当該半飽和組織が許容することができる最大の不活性ガスの分圧(単位 キロパスカル)Pc 第一項各号の区間が終わる時点の圧力(単位 キロパスカル)B 別表の「半飽和組織」欄の区分に応じた「窒素 b 値」欄に掲げる値と「ヘリウム b 値」欄に掲げる値の合成値で、次の式により求めた値とする。(この式において、PN2及びPHeは、それぞれ前項各号に定める値と同じ値を表し、bN2及びbHeは、それぞれ次の値を表すものとする。bN2 別表の「半飽和組織」欄の区分に応じた「窒素b値」欄に掲げる値bHe 別表の「半飽和組織」欄の区分に応じた「ヘリウム b 値」欄に掲げる値))A 別表の「半飽和組織」欄の区分に応じた「窒素 a 値」欄に掲げる値と「ヘリウム a 値」欄に掲げる値の合成値で、次の式により求めた値とする。(この式において、PN2及びPHeは、それぞれ前項各号に定める値と同じ値を表し、aN2及びaHeは、それぞれ次の値を表すものとする。aN2 別表の「半飽和組織」欄の区分に応じた「窒素 a 値」欄に掲げる値aHe 別表の「半飽和組織」欄の区分に応じた「ヘリウム a 値」欄に掲げる値)
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【解答例】
高圧室内作業で作業環境管理として求められることには以下のようなことがある。(1)作業室の気積を、高圧室内業務に現に従事している労働者1人について、4m3以上とすること。(2)気閘室の床面積及び気積を、現に加圧又は減圧を受ける高圧室内作業者1人について、それぞれ0.3m2以上及び0.6m3以上とすること。(3)空気圧縮機と作業室又は気閘室との間に、作業室及び気閘室へ送気する空気を清浄にするための装置を設けること。(4)作業室及び気閘室に、専用の排気管を設けなければならない。なお、潜函又は潜鐘の気こう室内の高圧室内作業者に減圧を行うための排気管は内径53mm以下のものとすること。(5)作業室への送気の調節を行うためのバルブ又はコックの操作を行う場所を潜函、潜鐘、圧気シールド等の外部に設けたときは、その場所に、作業室内のゲージ圧力を表示する圧力計を設けること。(6)作業室及び気閘室へ送気するための空気圧縮機から吐出される空気並びにその空気圧縮機に附属する冷却装置を通過した空気の温度が異常に上昇した場合に、関係者にこれを知らせるための自動警報装置を設けること。(7)気閘室において高圧室内作業者に加圧を行うときは、毎分0.08MPa以下の速度で行うこと。(8)作業室及び気閘室における以下の気体の分圧がそれぞれ以下に示す分圧の範囲に収まるように、作業室又は気閘室への送気、換気その他の必要な措置を講じること。① 酸素 18kPa以上160kPa以下(気閘室において高圧室内作業者に減圧を行う場合は、18kPa以上220kPa以下)② 窒素 400kPa以下③ 二酸化炭素 0.5kPa以下(9)酸素分圧が人体に有害とされている50kPa以上の場合に、高圧室内作業者の酸素ばく露量について、1日については 600 UPTD、1週間については 2,500 UPTD を超えないようにすること。(10)作業室における換気、有害ガスの測定その他必要な措置をとること。(11)気閘室において高圧室内作業者に減圧を行うときは、次に定めるところによること。① 減圧の速度は、毎分 0.08 MPa以下とすること。② 半飽和組織内に存在する不活性ガスの分圧が、半飽和組織が許容することができる最大の不活性ガスの分圧を超えないように、減圧を停止する圧力及びその圧力下において減圧を停止する時間を定め、それに従って減圧すること。(12)気閘室の床面の照度を二十ルクス以上とすること閉じる
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【解説】
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② 作業管理
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【解説】
高圧則の高圧室内作業に関する各規定のうち作業管理としては、以下の条文が考えられる。【高気圧作業安全衛生規則】(避難用具等)第7条の4 事業者は、高圧室内業務を行うときは、呼吸用保護具、繊維ロープその他非常の場合に高圧室内作業者を避難させ、又は救出するため必要な用具を備えなければならない。(作業主任者)第10条 事業者は、令第六条第一号の高圧室内作業については、高圧室内作業主任者免許を受けた者のうちから、作業室ごとに、高圧室内作業主任者を選任しなければならない。2 (略)(作業計画)第12条の2 事業者は、高圧室内業務を行うときは、高気圧障害を防止するため、あらかじめ、高圧室内作業に関する計画(以下この条において「作業計画」という。)を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。2及び3 (略)(立入禁止)第13条 事業者は、必要のある者以外の者が気こう室及び作業室に立ち入ることを禁止し、その旨を潜函、潜鐘、圧気シールド等の外部の見やすい場所に掲示しなければならない。(減圧の速度等)第18条 (第1項 略)2 事業者は、減圧を終了した者に対して、当該減圧を終了した時から十四時間は、重激な業務に従事させてはならない。(減圧時の措置)第20条 事業者は、気こう室において、高圧室内作業者に減圧を行うときは、次の措置を講じなければならない。一 (略)二 気こう室内の温度が十度以下である場合には、高圧室内作業者に毛布その他の適当な保温用具を使用させること。三 減圧に要する時間が一時間を超える場合には、高圧室内作業者に椅子その他の休息用具を使用させること。2 (略)(作業の状況の記録等)第20条の2 事業者は、高圧室内業務を行う都度、第十二条の二第二項各号に掲げる事項を記録した書類並びに当該高圧室内作業者の氏名及び減圧の日時を記載した書類を作成し、これらを五年間保存しなければならない。(連絡)第21条 事業者は、高圧室内業務を行うときは、気こう室の付近に、高圧室内作業者及び空気圧縮機の運転を行う者との連絡その他必要な措置を講ずるための者(以下この条において「連絡員」という。)を常時配置しなければならない。2 (略)3 事業者は、前項の通話装置が故障した場合においても連絡することができる方法を定めるとともに、当該方法を高圧室内作業者、空気圧縮機の運転を行う者及び連絡員の見やすい場所に掲示しておかなければならない。(発破を行なつた場合の措置)第25条 事業者は、作業室内において発破を行なつたときは、作業室内の空気が発破前の状態に復するまで、高圧室内作業者を入室させてはならない。(火傷等の防止)第25条の2 (第1項及び第2項 略)3 事業者は、高圧室内業務を行うときは、火気又はマツチ、ライターその他発火のおそれのある物を潜かん、潜鐘、圧気シールド等の内部に持ち込むことを禁止し、かつ、その旨を気こう室の外部の見やすい場所に掲示しなければならない。ただし、作業の性質上やむを得ない場合であつて圧力〇・一メガパスカル未満の気圧下の場所において溶接等の作業を行うとき、又は前項の厚生労働大臣が定める場所において溶接等の作業を行うときは、当該溶接等の作業に必要な火気又はマツチ、ライターその他発火のおそれのある物を潜かん、潜鐘、圧気シールド等の内部に持ち込むことができる。(危険物等の持込み禁止)第46条 事業者は、再圧室の内部に危険物その他発火若しくは爆発のおそれのある物又は高温となつて可燃物の点火源となるおそれのある物を持ち込むことを禁止し、その旨を再圧室の入口に掲示しておかなければならない。一応、解答例のようにまとめたが、(1)は緊急時のものであり、(7)、(8)も必ずしも作業管理とは言えないので書かなくてもよい。閉じる
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【解答例】
高圧室内作業で作業管理として求められることには以下のようなことがある。(1)呼吸用保護具、繊維ロープその他非常の場合に高圧室内作業者を避難させ、又は救出するため必要な用具を備えること。(2)高圧室内作業主任者免許を受けた者のうちから、作業室ごとに、高圧室内作業主任者を選任すること。(3)あらかじめ、高圧室内作業に関する計画(作業計画)を定め、かつ、その作業計画により作業を行うこと。(4)必要のある者以外の者が気閘室及び作業室に立ち入ることを禁止し、その旨を潜函、潜鐘、圧気シールド等の外部の見やすい場所に掲示すること。(5)減圧を終了した者は、減圧を終了した時から14時間は、重激な業務に従事させないこと。(6)気閘室において、減圧を行うときは、次の措置を講じること。① 気こう室内の温度が10度以下の場合は、高圧室内作業者に毛布その他の適当な保温用具を使用させること。② 減圧に要する時間が1時間を超える場合には、高圧室内作業者に椅子その他の休息用具を使用させること。(7)高圧室内業務を行う都度、作業の記録した書類並びに当該高圧室内作業者の氏名及び減圧の日時を記載した書類を作成し、これらを5年間、保存すること。(8)気閘室の付近に、高圧室内作業者及び空気圧縮機の運転を行う者との連絡その他必要な措置を講ずるための連絡員を常時配置すること。(9)作業室内において発破を行なったときは、作業室内の空気が発破前の状態に復するまで、高圧室内作業者を入室させないこと。(10)高圧室内業務を行うときは、火気又はマツチ、ライターその他発火のおそれのある物を潜かん、潜鐘、圧気シールド等の内部に持ち込むことを禁止し、かつ、その旨を気こう室の外部の見やすい場所に掲示すること。閉じる
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【解説】
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③ 健康管理
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【解説】
高圧則の高圧室内作業に関する各規定のうち健康管理としては、以下の条文が考えられる。【高気圧作業安全衛生規則】(健康診断)第38条 事業者は、高圧室内業務又は潜水業務(以下「高気圧業務」という。)に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際、当該業務への配置替えの際及び当該業務についた後六月以内ごとに一回、定期に、次の項目について、医師による健康診断を行なわなければならない。一~六 (略)2 (略)(健康診断の結果)第39条 事業者は、前条の健康診断(法第六十六条第五項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「高気圧業務健康診断」という。)の結果に基づき、高気圧業務健康診断個人票(様式第一号)を作成し、これを五年間保存しなければならない。(健康診断の結果についての医師からの意見聴取)第39条の2 高気圧業務健康診断の結果に基づく法第六十六条の四の規定による医師からの意見聴取は、次に定めるところにより行わなければならない。一及び二 (略)2 (略)(健康診断の結果の通知)第39条の3 事業者は、第三十八条の健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。(病者の就業禁止)第41条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる疾病にかかつている労働者については、医師が必要と認める期間、高気圧業務への就業を禁止しなければならない。一 減圧症その他高気圧による障害又はその後遺症二 肺結核その他呼吸器の結核又は急性上気道感染、じん肺、肺気腫その他呼吸器系の疾病三 貧血症、心臓弁膜症、冠状動脈硬化症、高血圧症その他血液又は循環器系の疾病四 精神神経症、アルコール中毒、神経痛その他精神神経系の疾病五 メニエル氏病又は中耳炎その他耳管狭さくを伴う耳の疾病六 関節炎、リウマチスその他運動器の疾病七 ぜんそく、肥満症、バセドー氏病その他アレルギー性、内分泌系、物質代謝又は栄養の疾病
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【解答例】
高圧室内作業で健康管理として求められることには以下のようなことがある。(1)高圧室内業務に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際、業務への配置替えの際及び業務についた後6月以内ごとに1回、定期に、医師による高気圧業務健康診断を行うこと。(2)高気圧業務健康診断の結果に基づき、高気圧業務健康診断個人票を作成し、これを5年間保存すること。(3)高気圧業務健康診断の結果に、必要に応じ、医師からの意見聴取を法令に従って行うこと。(4)高気圧業務健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、健康診断の結果を通知すること。(5)事業者は、次のいずれかの疾病に罹っている労働者については、医師が必要と認める期間、高気圧業務への就業を禁止すること。① 減圧症その他高気圧による障害又はその後遺症② 肺結核その他呼吸器の結核又は急性上気道感染、じん肺、肺気腫その他呼吸器系の疾病③ 貧血症、心臓弁膜症、冠状動脈硬化症、高血圧症その他血液又は循環器系の疾病④ 精神神経症、アルコール中毒、神経痛その他精神神経系の疾病⑤ メニエル氏病又は中耳炎その他耳管狭さくを伴う耳の疾病⑥ 関節炎、リウマチスその他運動器の疾病⑦ ぜんそく、肥満症、バセドー氏病その他アレルギー性、内分泌系、物質代謝又は栄養の疾病閉じる
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【解説】
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④ 安全衛生教育
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【解説】
本問は、高圧則の各条文を、①作業環境管理、作業管理、健康管理及び安全衛生教育に分類して解答すればよいだろう。高圧則の高圧室内作業に関する各規定のうち安全衛生教育関連のものとしては、以下の条文が考えられる。【高気圧作業安全衛生規則】(特別の教育)第11条 事業者は、次の業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、当該業務に関する特別の教育を行わなければならない。一~五 (略)六 高圧室内業務2 前項の特別の教育は、次の表の上欄に掲げる業務に応じて、同表の下欄に掲げる事項について行わなければならない。
業務 教育すべき事項 (略) (略) 高圧室内業務 一 圧気工法の知識に関すること。二 圧気工法に係る設備に関すること。三 急激な圧力低下、火災等の防止に関すること。四 高気圧障害の知識に関すること。五 関係法令3 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号。以下「安衛則」という。)第三十七条及び第三十八条並びに前項に定めるもののほか、同項の特別の教育の実施について必要な事項は、厚生労働大臣が定める。【高気圧業務特別教育規程】(高圧室内業務に係る特別教育)第6条 高圧則第十一条第一項第六号に掲げる業務に係る特別の教育は、次の表の上欄に掲げる教育すべき事項に応じ、それぞれ、同表の中欄に掲げる範囲について同表の下欄に掲げる時間以上行うものとする。教育すべき事項 範囲 時間 圧気工法の知識に関すること。 圧気工法の概要 圧気工法による業務の危険性 一時間 圧気工法に係る設備に関すること。 送気設備の種類及び機能 気閘(こう)室の機能 通話装置の取扱い方法 一時間 急激な圧力低下、火災等の防止に関すること 急激な圧力低下による異常出水等の防止方法 火災等の防止方法 事故発生時の措置 保護具の使用方法 三時間 高気圧障害の知識に関すること。 高気圧障害の病理、症状及び予防方法 一時間 関係法令 労働基準法、安衛法、施行令、安衛則及び高圧則中の関係条項 一時間 -
【解答例】
高圧室内作業の労働者に対しては安衛法上の特別の教育を行う必要がある。その内容としては以下のものがある。(1)圧気工法の知識に関すること① 圧気工法の概要② 圧気工法による業務の危険性(2)圧気工法に係る設備に関すること① 送気設備の種類及び機能② 気閘室の機能③ 通話装置の取扱い方法(3)急激な圧力低下、火災等の防止に関すること① 急激な圧力低下による異常出水等の防止方法② 火災等の防止方法③ 事故発生時の措置④ 保護具の使用方法(4)高気圧障害の知識に関すること① 高気圧障害の病理、症状及び予防方法(5)関係法令① 労働基準法、安衛法、安衛令、安衛則及び高圧則中の関係条項閉じる
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【解説】