このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。
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2012年度(平成24年度) | 問 1 | 一見、震災の復旧・復興工事特有の問題のようだが、一般的な労働衛生の知識を問う問題である。 |
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震災復旧作業等 |
問1 震災等の災害からの復旧・復興関連作業等において考えられる健康障害とその防止対策に関して、以下の設問に答えよ。
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(1)被災した建築物の解体処理においては、石綿の吸入や粉じんへの長期ばく露による健康障害が考えられる。
① 石綿による健康障害(病名等)を三つ挙げよ。
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【解説】
本小問は、震災等の復旧・復興作業等に限らず、一般的な意味での石綿による健康被害について記せばよい。なお、この問題全体がそうであるが、復旧・復興に特有な問題はないようである。石綿による健康障害を3つといえば、肺がん、中皮腫(※)及びびまん性胸膜肥厚を挙げておけばよいだろう。おそらくこれが出題者の想定する解答である。※ 胸膜中皮腫と書くのは避けた方がよい。胸膜のみならず、腹膜、心膜、精巣膜にも発症する。この他、石綿肺及び良性石綿胸水(線維性胸膜炎)が考えられるが、石綿肺は②で問われており、良性石綿胸水は石綿健康被害救済制度の対象外であることから、おそらく出題者の想定する解答ではないだろう。ただ、この2つを解答したとしても減点はされないのではないかと思う。石綿による健康障害には違いはないからである。閉じる
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【解答例】
石綿による主な健康障害としては、以下のもの等が挙げられる。① 肺がん② 中皮腫③ びまん性胸膜肥厚閉じる
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【解説】
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② 粉じんによる健康障害の発現機序及び健康障害の症状について200字程度で述べよ。
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【解説】
粉じんが肺に吸いこまれて沈着すると、マクロファージは異物である粉じんを取り除こうとする反応を起こす。ところが、粉じんが排除しきれない場合や、排除の反応が激しいため肺の組織が傷つく場合がある。そうなると、今度は排除しきれなかった粉じんや、傷ついた組織を修復するために線維組織(膠原線維や格子線維)が増え、これが増え過ぎると、逆に肺胞、細気管支、血管などが破壊されてしまう。これがじん肺の初期に起きる現象で、空気をはき出すのが難しくなる気道系の障害が現れる。さらに線維性組織が増えると、肺そのものが硬くなったり、細気管支、肺胞などの境の壁が破壊され空気の出入りする量が減少したりする。さらに肺胞と毛細血管との間で酸素と二酸化炭素の交換も進まなくなる。ただ、人間の肺には余力があるので、この段階でも極端な呼吸困難が発症するわけではない。しかし症状が進むと、咳、痰、喘鳴、息切れなどの症状が現れ、呼吸も困難になる。現在の医学では、じん肺で変化の起きた肺をもとにもどすことはできない。誤解してはならないことは、粉じん作業を離れれば、それ以上症状が進行しないわけではないということである。作業を離れた後でも、過去に粉じんにばく露した量が多いと、病状はさらに進行する場合や新たに発症する場合もある。なお、解答例に示す文章は269文字で、やや長い。閉じる
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【解答例】
粉じんが肺胞に沈着すると、マクロファージによって排除される。排除しきれなかったり、排除の過程で肺の組織が傷つくと、組織を修復するために線維組織が増加する。これにより、逆に肺胞、細気管支、血管などが破壊されていく。さらに線維性組織が増えると、肺そのものが硬くなり、細気管支、肺胞などの境の壁が破壊され空気の出入りする量が減少する。また肺胞と毛細血管との間の酸素と二酸化炭素の交換も進まなくなる。初期の症状として、空気をはき出すのが難しくなる気道系の障害が現れる。症状が進むと、咳、痰、喘鳴、息切れなどの症状が現れ、呼吸も困難になる。閉じる
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【解説】
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(2)有害物質による健康リスクを考える場合、物質毎の有害性を把握する必要がある。有害性について調査する場合に有用な情報源を三つ挙げよ。(個別の情報源の固有名詞などは不要)
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【解説】
出題の意図が明確ではないが、個々の化学物質の有害性について調査する場合に有用な情報源としては、SDSは外せないだろう。他に何を挙げよというのか分からないが、WEB上のデータ、各種の文献、専門家への聴き取りなどを挙げればよいだろうか。ただ、WEBのデータなら何でもよいという意識は持っていないことを示すために、一定の制限を付けておいた方がよいかもしれない。閉じる
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【解答例】
個々の化学物質の有害性について調査する場合に有用な情報源としては、以下のもの等が挙げられる。① SDS(安全データシート)② 公的な機関や学術機関等のWEBサイトのデータ③ 学術誌や専門書等の各種の文献閉じる
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【解説】
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(3)建築物の解体処理の作業を行うとき、石綿に関して最初に実施すべき措置について50字程度で述べよ。
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【解説】
建築物の解体処理の作業を行うとき、石綿に関して最初に実施すべき措置は、「除去」でもなければましてや「固着」でもない。最初に行うべきは「事前調査及び分析等」なのである。また、出題意図がそのようなものと理解することで、(4)への解答にスムーズにつながる。50文字で書くべき内容は、石綿則第3条に従って書けばよい。【石綿障害予防規則】(事前調査及び分析調査)第3条 事業者は、建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業(以下「解体等の作業」という。)を行うときは、石綿による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶(それぞれ解体等の作業に係る部分に限る。以下「解体等対象建築物等」という。)について、石綿等の使用の有無を調査しなければならない。2 前項の規定による調査(以下「事前調査」という。)は、解体等対象建築物等の全ての材料について次に掲げる方法により行わなければならない。一 設計図書等の文書(電磁的記録を含む。以下同じ。)を確認する方法。ただし、設計図書等の文書が存在しないときは、この限りでない。二 目視により確認する方法。ただし、解体等対象建築物等の構造上目視により確認することが困難な材料については、この限りでない。3 前項の規定にかかわらず、解体等対象建築物等が次の各号のいずれかに該当する場合は、事前調査は、それぞれ当該各号に定める方法によることができる。一 既に前項各号に掲げる方法による調査に相当する調査が行われている解体等対象建築物等 当該解体等対象建築物等に係る当該相当する調査の結果の記録を確認する方法二 (略)三 建築物若しくは工作物の新築工事若しくは船舶(日本国内で製造されたものに限る。)の製造工事の着工日又は船舶が輸入された日(第五項第四号において「着工日等」という。)が平成十八年九月一日以降である解体等対象建築物等(次号から第八号までに該当するものを除く。) 当該着工日等を設計図書等の文書で確認する方法四~八 (略)4 事業者は、事前調査を行ったにもかかわらず、当該解体等対象建築物等について石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、石綿等の使用の有無について、分析による調査(以下「分析調査」という。)を行わなければならない。ただし、事業者が、当該解体等対象建築物等について石綿等が使用されているものとみなして労働安全衛生法(以下「法」という。)及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、この限りでない。5 事業者は、事前調査又は分析調査(以下「事前調査等」という。)を行ったときは、当該事前調査等の結果に基づき、次に掲げる事項(第三項第三号から第八号までの場合においては、第一号から第四号までに掲げる事項に限る。)の記録を作成し、これを事前調査を終了した日(分析調査を行った場合にあっては、解体等の作業に係る全ての事前調査を終了した日又は分析調査を終了した日のうちいずれか遅い日)(第三号及び次項第一号において「調査終了日」という。)から三年間保存するものとする。一~九 (略)6 事業者は、解体等の作業を行う作業場には、次の事項を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示するとともに、次条第一項の作業を行う作業場には、前項の規定による記録の写しを備え付けなければならない。一~二 (略)7 (略)なお、解答例に示す文章は81文字である。閉じる
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【解答例】
石綿等の使用の有無の調査を行う。可能であれば、設計図書等の確認、目視による確認等によって行う。これらで石綿の使用の有無が明らかにならなければ、分析による調査を行う閉じる
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【解説】
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(4)石綿が使用されている場合、石綿ばく露を防止するために実施すべき措置を箇条書きで述べよ。
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【解説】
これは、建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアルガイドラインに書かれていることをそのまま記せばよいであろう。閉じる
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【解答例】
石綿が使用されている場合、石綿ばく露を防止するために実施すべき措置としては、以下のことが考えられる。① 作業計画の作成② 作業者等に対する特別教育の実施③ 作業主任者の選任④ 事前調査結果の周知及び作業場への掲示⑤ 保護具の着用⑥ 作業場への関係者以外の立ち入り禁止⑦ 床防水、飛沫防止の養生等の隔離及び陰圧化⑧ 湿潤化⑧ 清掃の実施閉じる
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【解説】
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(5)保護具としてのマスクの使用に当たって一般的に留意すべき点を三つ挙げよ。
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【解説】
平成17年2月7日基発第0207006号「防じんマスクの選択、使用等について」に防じんマスクの使用に当たっての留意事項が記されている。本問の趣旨は、これを問うものであろう。以下のうち3点を解答すればよい。ただ、保護具について留意すべき点を3つと言われれば、「正しい選択」「正しい使用方法」「正しい管理」というの観点からまとめるべきであろう。(1)防じんマスクの選択に当たっては、型式検定合格標章が付されているものを使用すること。(2)防じんマスクは、使用する作業場所の粉じん濃度やミストの存在の有無等によって、作業環境に適合するものを選択すること。(3)防じんマスクは、酸素濃度18%未満の場所では使用してはならないこと。このような場所では給気式呼吸用保護具を使用させること。また、防じんマスク(防臭の機能を有しているものを含む。)は、有害なガスが存在する場所においては使用させてはならないこと。このような場所では防毒マスク又は給気式呼吸用保護具を使用させること。(4)防じんマスクを適正に使用するため、防じんマスクを着用する前には、その都度、着用者に、破損、亀裂又は著しい変形の有無、粉じん等の付着の有無、排気弁の気密性、ろ過材の取付状況、ろ過材の破損の有無、ろ過材からの異臭の有無、予備の防じんマスク等の有無等について点検を行わせること。(5)防じんマスクを適正に使用させるため、顔面と面体の接顔部の位置、しめひもの位置及び締め方等を適切にさせること。また、しめひもについては、耳にかけることなく、後頭部において固定させること。(6)着用後、防じんマスクの内部への空気の漏れ込みがないことをフィットチェッカー等を用いて確認させること。(7)タオル等を当てた上から防じんマスクを使用したり、着用者のひげ、もみあげ、前髪等が面体の接顔部と顔面の間に入り込んだりするような、防じんマスクの着用は行わせないこと。なお、面体の接顔部に「接顔メリヤス」等を使用することは、皮膚に湿しん等を起こすおそれがある場合で、かつ、面体と顔面との密着性が良好であるときを除き、行わせないこと。(8)防じんマスクの使用中に息苦しさを感じた場合には、ろ過材を交換すること。閉じる
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【解答例】
(1)使用する作業場の粉じん濃度に見合った防護係数のもの、ミストの有無等に見合う適切な種類のものであって、型式検定合格標章が付されているものを使用すること。(2)使用時には、防じんマスクの内部への空気の漏れ込みがないよう顔面に密着するように正しく装着し、フィットチェッカー等を用いて空気の漏れがないことを確認すること。(3)使用し終わったときは適切に管理すること。また、防じんマスクの使用中に息苦しさを感じた場合に、ろ過材を交換する等、適切な時期にろ過材や本体を交換すること。閉じる
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【解説】
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(6)災害からの大規模な復旧・復興関連作業等においては、不慣れな作業者が多く参集して作業する状況が考えられる。このような状況で事業者が特に重視すべき作業前の対策について50字程度で述べよ。
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【解説】
不慣れな作業者が多い現場では、まず何よりも事前の教育が重要であり、また、作業手順書の作成と周知、作業を指揮する者の選任、事業者による緻密なパトロールの実施などが重要となる。この他、4Sの徹底、KY訓練の実施、TBMやヒヤリ・ハット運動等については、50文字では触れる余裕はないか。なお、安全関係では、クレーン等の合図の統一と周知が必要になる。閉じる
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【解答例】
事前の教育の実施、作業手順書の作成と周知、作業を指揮する者の選任、事業者によるパトロールの実施などが重要となる。閉じる
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【解説】
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(7)復旧工事等において、発電機等の内燃機関やコンクリート養生のために練炭等を換気の不充分な場所で使用するときに考えられる中毒について、原因物質や中毒メカニズム、中毒症状を
150 字程度で述べよ。-
【解説】
換気の不十分な場所で内燃機関を使用したり、寒冷地でコンクリート養生をすることによる一酸化炭素中毒が後を絶たない。これについては平成10年6月1日基発第329の1号「建設業における一酸化炭素中毒予防のためのガイドラインの策定について」が参考となる。閉じる
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【解答例】
本問の状況で不完全燃焼によって、一酸化炭素が発生すると、一酸化炭素は無色・無臭であるためこれに気づかず、重大な災害となることがある。一酸化炭素中毒の初期の症状は、頭痛、吐き気、耳鳴りなどで風邪に似ていて気づかれにくい。やがて体の自由が利かず動けなくなり、そのまま放置すると意識不明となって死亡するケースもある。後遺症として機能障害を起こすことがある。閉じる
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【解説】