新型コロナとリスク認識




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メンタルヘルス対策

政府の新型コロナ対策には、リスクを正しく評価して、必要かつ十分な対策を効果的にとり、対策の終了後に評価して次に生かすという姿勢が感じられません。

朝令暮改を繰り返し、出たところ勝負という印象を受けます。結果的に感染者は抑えられたものの、PCR検査を抑制し、ワクチンの接種数は進まず、五輪ありきの姿勢では国民は救われません。

政府は、リスク管理の観点をしっかりと持って対策を進めなければならないでしょう。




1 新型コロナのリスク評価

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最終改訂:

2020年の2月頃、新型コロナ禍が騒がれ始めたとき、正直に言って「恐れすぎ」という気がした。確かに新型コロナの感染リスクに対して必要な対応は採るべきだが、どのような対応にもデメリットは存在している。やりすぎもまた、弊害があるのだ。

様々な死亡リスクの推移

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新型コロナの問題は重大なものではあるが、従来型の肺炎で亡くなる方や、自殺で亡くなる方に比して、新型コロナで亡くなる方の数の方がはるかに少ないのである。一方、新型コロナへの対策で経済活動を止めてしまえば、それによる弊害も大きい。失業率が高まれば、自殺者も増加することは、(科学的な証明ができているわけではないが)定説と言ってよいのである。

あまりに経済活動へ深刻な影響を与えるような過度な対策は取るべきではないと思えたのだ。


2 緊急事態宣言

しかし、2020年の3月末になって感染者数が急増すると、このときは強い恐怖感を感じた。パリやニューヨークでは、感染者数は驚くほどの数になり、死者数も急増している。我が国の感染者もその時点では指数関数的に増加しており、欧米のようになるという考えには合理的な理由があったと思う。ところが、緊急事態宣言が出てしばらくすると、因果関係があるかどうかはともかく、感染者は減少に転じた。

国民は、経済活動を停止するという大きな痛みを受けながら、感染者を抑え込んだと評価するべきだろう。少なくとも感染者の拡大を一定の期間は後ろにずらしたのである。すなわち、対策をとるために貴重な期間を作りだしたと評価するべきだった。

ところが、国民が作り出したこの貴重な期間を政府は無為に過ごしたばかりか、他に何の対策もとろうとはしなかったのである。従って、宣言を取り消せば再び感染者数が拡大するリスクはなくなっていなかった。それにもかかわらず、政府は感染者数が減少したという理由で緊急事態宣言を取り消してしまったのである。その結果、感染者数は再び増加に転じた。

明らかな判断のミスであった。緊急事態宣言は、感染者拡大を後ろにずらしただけで、他には役に立たなかったのである。


3 リスク慣れ

その後、政府はGoTo対策をとり、経済の活性化をコロナ対策に優先させるという方針をとった。コロナの感染者数を増やさないという保証はどこにもないにもかかわらずである。その結果、感染者数は驚くほどの数にまで増加してしまった。しかも、驚くべきことにGoToによる経済効果の評価さえ、国民が納得できるほど十分には行っていなかったのである。

ばかばかしいことに、結果的に確実な感染者数の増加をもたらした一方で、経済効果の方は確実ではなかったのである。菅総理は「GoToが感染者数を増加させたという証拠はない」と主張してGoToを継続させたが、証拠がなければそれそのものが存在しないとはいえないことは当然である。

2021年の2月に東北地方で発生した地震で、菅総理は「福島第一に異常があるという報告は受けていない。すべて正常だ」と発言しているが、「見えないものは存在しない」というようでは、危機管理はできないのである。


4 再び緊急事態

そして、再び2021年に緊急事態宣言が出ると、(科学的には因果関係は不明だが)感染者数は再び減少する。それはそれで良いことではあるが、政府がたんに「宣言」をするだけで、感染者数が減少するというのも、どうなのだろうか。リスク管理は、国民が自らの判断で行うべきだろう。それができずに、政府の意向だけで動くというのも、やや日本のリスク管理という観点からは恐ろしい気がする。

一方で、今回の緊急事態宣言では、不要不急の外出や観光地の人出なども、最初の宣言のときに比較すれば減っていないという報道もある。政府が、「20時以降に飲食店に行かなければ良い」という誤ったメッセージを発してしまったこともあるが、明らかに国民もリスク慣れしてきたのである。感染者数は再び減少に転じたとはいえ、行き過ぎたリスク慣れは危険でもある。

なお、最近、政府が、感染症の後遺症の悲惨さを伝えることで、確実な対策を訴える広報をしている。これもまた、リスク認知についての正しい理解をしていないやり方だ。悲惨な「結果」を伝えると、人々はそこから目を背けてしまい「対策」をとろうとしなくなるのである。このような広報は、効果は薄いと理解するべきである。このようなやり方ではだめなのだ。


5 正しく恐れる必要がある

リスクは正しく恐れる必要がある。経済停滞をできる限り押さえつつ、不必要なリスクをとるべきではなく、正しい対策をコストパフォーマンスを考えながら効果的に行う必要がある。政府のやっていることは、何かずれているのである。

国民の側、そして事業者の側が、自主的に自分の頭で考えて行動をしなければ、コロナ禍はワクチン接種が進むまで簡単には解決しないだろう。しかし、政府のやることを見ていると、ワクチンも迅速な接種が進むとは期待できそうにない。

やはり、自ら行動するしかなさそうだ。





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