古い体質の根本厚労大臣


元女優でライターの石川優実さんがハイヒール強要の廃止を呼び掛けています。国会でも論戦がありましたが、根本厚生労働大臣は、ハイヒールやパンプスの強要は認められるという答弁をしました。

これは、きわめて頭の古い国民の幸福に背を向けた答弁だといえます。ところが、マスコミはこれを捻じ曲げて、ハイヒールの強要をパワハラであると答弁したかのように報道しています。

現実には、自民党・公明党政権は、この問題を解決するための努力を一切していません。




1 はじめに

執筆日時:

一部追記:

筆者:柳川行雄


(1)#KooToo

ハッシュタグの#KooTooが話題を呼び、ついに国会でも取り上げられている。その発端は、元女優でライターの石川優実さんが、1月24日に「私はいつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたいと思ってるの」とTweetしたことである。その理由は、靴擦れになって辛いというものである。

確かに、我々男性でも靴擦れになることはあり、その状態で歩き回らなければならない辛さは分かる。また、極端なハイヒールは、転ぶこともあるだろうし、足にも悪そうで、個人的な感想を言わせて頂ければ、あまり感心できるものではないと思う。


(2)ハイヒール等強制反対の署名活動

そして、石川さんはネット署名サイト"チェンジ・ドット・オルグ"で「職場でのヒール・パンプスの強制をなくしたい」という署名を集め始めた。有名人とは言え、市井の一個人が署名活動を行うことができるのは、やはりインターネットの真骨頂であろう。

署名は6月3日までに18,856筆に達し、石川さんと支持者5人がこれを厚生労働省へ提出し、毎日新聞などがこれを報じた(※)

※ 2019年06月03日付けで、毎日新聞「パンプス強制やめて『#KuToo』署名1万8856筆提出 『性差別だ』」及び時事通信「『パンプス強制やめて』=提唱女性、厚労省に署名提出」が報じたほかTV数社も報じている。


(3)行政としてどのような対応が可能だったか

ア 重大な社会問題となる可能性

実を言えば、各方面から陳情を受けることは行政にとっては日常茶飯事である。国会議員が伴って来ない限り、陳情への対応は係長クラスが行うことが普通である。組織内での情報共有はされるだろうが、他にも多くの業務を抱える行政の職員としては、陳情に時間をかけて対処することは困難なのが実態なのである。

だが、今回のことはマスコミも注目していた。おそらく、個別の取材もあったはずである。そして、経験を持った古参の行政官であれば、その"嗅覚"によって、この種のことは問題が大きくなることがあり得ると分かるものなのである。

また、マスコミが報じれば国会議員もそれを目にするし。報道を目にすれば、議員が関心を持つのは当然である。国会開会中であるから、国会で質問されることもあると、行政官も考えたことは間違いないだろう。

すなわち、行政官の間には、何らかの対応を取るべきという発想はあったはずだと思えるのである。

イ どのような対応がとり得たか

こう言っては何だが、本件について対策をとることなど、それほど難しいことでもないのである。

労働安全対策の転倒防止でも、大災害の際の避難の確保(※)でもよいから何かにかこつけて、課長クラスの通達で事業者団体に対して、「ハイヒールやパンプスなどで、転倒や靴擦れ等の原因となるおそれのある靴を制服として採用している場合は、それが業務の特性や必要性に照らして、真に必要なものであるかどうかを再度ご検討いただきたい」とでも要請すれば済む話なのである。

※ 大震災が発生した場合に、お客様対応を職務とする女性たちが、ハイヒールを履いていたら、避難誘導に支障をきたすことは当然である。そのため、航空機の客室乗務員はフライト中はあまり高いヒールは穿いていないのが普通である。

こんなことで経営者団体が反発するとも思えないし、要請するだけなら、厚生労働省設置法に定められた任務の範囲を逸脱する問題も起きないだろう。

その後で、報道発表をするか、大臣が定例の記者会見の席で「事業者の方に、特段の配意をお願いしている」とでも発言すればよい。そうすれば、根本大臣に対する女性の評価も上がっただろう。

もちろん、その程度のことだけでよいのかという批判はあるかもしれない。しかし、手段が簡単でも効果が上がればよいのである。

ウ みんながハッピーになれる簡単な解決策はある

このような対策を取れば、マスコミは厚労省がハイヒール等を強制することの中止を企業に呼び掛けたと大きく報じるであろう。そして、我が国の企業は、この種の問題に対して、きわめて優秀で迅速に対応するという生真面目な面があるのだ。それに企業としてもSNSなどで炎上したくはないだろう。

だから、要請するだけのことでも、企業に対しては、かなりの効果が上がった可能性が高いのである。

また、靴メーカにとっては、靴擦れの起こしにくく履きやすい活動的な女性用の靴を開発して売り出せば、新たな販路の拡大にもつながったであろう。

そして、多くの女性たちにとっては、ハイヒールやパンプスを強制されるという苦痛から解放されることになったであろう。

誰も困らずに、簡単に対応できた可能性が高いのである。ところが、根本大臣の頭の固さと古さから、そうはならなかったのだ

※ 2020年3月3日朝日新聞「共産・小池氏が首相答弁に『感動した』 与野党が拍手」によると、共産党の小池議員がヒール問題に関して「女性だけに苦痛を強いる服装規定はなくしていくという政治の決意を語ってほしい」と呼びかけたところ、安倍総理が「男性と女性が同じ仕事をしているにもかからず、女性に服装で苦痛を強いることはあってはならないと明確に申し上げたい」と応じ、小池議員が「大変勇気づけられる答弁だ」と評価したとされる。できないことではないのである。もっとも、自民党政府がこの総理の答弁を受けて何かをしたという情報はないようだが。


2 尾辻議員の質問への回答

(1)尾辻議員の質問

立憲民主党(当時)の尾辻かな子議員は、この問題は、女性にとって深刻なことだと感じられたようだ。署名が厚労省に提出された2日後の6月3日には、衆院の厚生労働委員会で質問をしておられる(※1)。この質問の様子はYouTubeで見ることができる(※2)

※1 質問の通告は前日の6月4日の午後から夕刻にかけて行われるのが普通である。

※2 YouTubeにSHIN infinity氏がアップした動画「2019.6.5厚労委(立憲:尾辻議員)パンプス強制について」で確認できる。なお、この動画は質問のあった当日の6月5日にアップされている。

尾辻議員が根本大臣に対して、「ヒールやパンプスは非常に足に負担がかかり外反母趾、靴擦れなどを起こしますし腰への負担もあります」と問題点を指摘した上で、本件に対する大臣の受け止めや今後の対応をただした。これに対し、大臣は次のように答えておられる。

【根本大臣答弁】

厚生労働省としても一人ひとりの労働者が働きやすい就業環境を整備することは大変重要だと考えております。

このハイヒールやパンプスの着用については、それぞれの業務の中でそれぞれの対応がなされていると思いますが、例えば労働安全衛生の観点からは腰痛や転倒事故につながらないよう服装や靴に配慮することは重要であって、各事業場の実情や作業に応じた対応が講じられるべきと考えております。

それはそれぞれの職場がどういう状況にあるのかと言うことで、それぞれの職場での、一般論としては、それは判断だろうと思います。

大臣は、この答弁の間、下を向いて文書を読み上げておられたので、官僚の作製した答弁書そのままなのだろう。

分かりにくい表現だが、言わんとするところは明らかである。「腰痛や転倒事故につながらないよう服装や靴に配慮することは重要」だとして、暗にハイヒールやパンプスには問題があるとしつつも、それへの対応は各職場の判断によるべき(=国の仕事ではない)と言って、質問をはねつけているのである。


(2)大臣の見解は?・・・ない

しかし、尾辻議員はこの答弁だけでは満足されなかったようだ。「このような要望書が出されたことに対して、大臣はどのように受け止めておられますか」と尋ねている。これに対して、大臣は発言を求める挙手までやたらに時間がかかったが、再び文書を読みながら、次のように答えた。

【根本大臣答弁】

そういう要望書を受けました。署名も受理しております。やはりこれは一人ひとりの労働者が働きやすい就業環境を整備することは大変重要であると考えております。まあ、ここはいろんな動向があるわけですが、そういう動向を注意しながら、働きやすい職場作りを推進していきたいと思います。

ちょっと聞くと前向きに聞こえるのだが、具体性は何もない。いかにも典型的な官僚作成の答弁である。リップサービスはするが、言質は与えないというわけだ。

しかし、異論はあるかもしれないが、これは官僚の作成する答弁書としては正しい姿なのである。官僚が作成してよい答弁はここまでなのだ。それ以上のことを官僚が国会答弁として作成することは、確実でないことを国民に約束することとなり、"行政主導"となって許されないのである。

それ以上踏み込むのは、大臣・副大臣・政務官の仕事なのである。大臣が官僚に対して「ここまで話して問題はないか」と確認した上で、もっと踏み込んで発言をすればよいことなのである。

だが、大臣はそうしなかった。そうしなかった以上、それは官僚が作成したものとは言え、大臣の責任となる。そればかりか、尾辻議員の再質問に対して、まったく逆の答弁をしてしまうのである。


(3)ついに義務付けは許されると明言

尾辻議員も、この答弁では満足しなかった。「もうすこし受け止めを聴きたいんですが、ハイヒール、パンプスが義務付けられる必要はあると思われますか」と、大臣の見解を尋ねたのである。これに対して根本大臣は、驚くべき回答をする。

【根本大臣答弁】

義務づけられることについてどう思うかというお話ですよね。これは、女性にハイヒールやパンプスの着用を指示する、義務付ける。これは、社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲かと、まあ、この辺なんだろうと思います。それぞれの業務の特性がありますから。

すなわち、「女性にハイヒールやパンプスの着用を指示する、義務付ける」ことは「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」だと明言したわけである。このあまりにも率直な答弁に、議場の中には笑い声が起きた。

だが、これは笑い事ではない。ハイヒール、パンプスの義務付けは許されるとすれば、ハイヒールやパンプスの義務付けを止めて欲しいという女性たちの主張の方が、おかしいということになる。場合によっては、指示に反してハイヒールなどを着用しない女性に対する処分も許されるということになるのである。

これは、かなり踏み込んだ答弁というべきである。この発言について、報道各社は、根本厚労大臣がハイヒールの強制を容認したと報じた(※)

※ 例えば、2019年06月05日のネットニュースでは、共同通信「パンプス『業務で必要』と容認 厚労相発言、波紋呼びそう」、朝日新聞「職場でハイヒール強制『業務上必要なら』 厚労相が容認」、産経新聞「ハイヒールとパンプス『業務で必要なら…』 女性に着用義務で厚労相」、TBS「"ハイヒール強制" 根本厚労相が容認発言」、BUZZ Feed News「「社会通念を考え直してほしかったのに」根本大臣発言で#KuToo発案の石川さん」、BUZZAP「根本厚労相(68)『女性へのハイヒール・パンプス強制は業務上必要な範囲』」など


(4)尾辻議員が助け舟?

これには、さすがの尾辻議員も笑い出した。尾辻議員は、当時の立件民主党の中では与党寄りの議員であるが、再質問をして、根本大臣に助け舟を出している。もう一度、訂正の機会を与えたのだ。

「ハイヒールやパンプスを履かなければならない職場っていうのは、実はよく考えたら無いはずなんですね。だから義務付け自身がもうだんだん時代に合わなくなっている、健康障害を起こしている。先ほど言ったように労働安全衛生から考えても問題だと思うんですね。大臣に問題だという意識があるのかないのか、ちょっとわからないので、もう一度、問題があると思っておられるのか、ないと思われるのか、そこだけでもお答えいただけますでしょうか」

ところが、尾辻議員の「あると思うのか、ないと思うのか」という質問に対しては、大臣は答えなかった。やや意味不明な答弁で逃げようとしたのである。

【根本大臣答弁】

ハイヒールやパンプスの着用を強制する、指示する、これはいろんなケースがあると思いますが、社会通念に照らして業務上必要かどうかっていうこと、要は社会通念、社会慣習にかかわるものではないかなあと思います。だからそういう動向は注視しながら働きやすい職場づくりを推進していきたいと思います。

後ろの方は、冒頭の官僚作成答弁書の繰り返しであるが、ハイヒールやパンプスの着用は"社会慣習"だというのであるから、問題はないと繰り返したとしか理解できない。

尾辻議員がせっかく助け舟を出してくれたのに、それが理解できなかったのか、ハイヒールの強制は問題がないと思ったかのどちらかである。


(5)高階副大臣への質問のあと再び質問

尾辻議員もさすがに諦めたのか、次に高階副大臣(女性)に質問を振ったところ、「強制されるものではないのだろうというふうに思います」と前向きな答えが返ってきた。

尾辻議員は「大臣にもそれくらいの答えが頂きたかった」とチクリと皮肉った上で、労働安全衛生やハラスメントの面からも、「しっかりと取り組んでいただくことをお願いしたいんですが如何でしょう」と大臣に質問した。

この質問には答弁書があったようだが、事前に作られた答弁書はパワハラに関するものだったようだ。大臣は、パワハラについての質問ですよねと断ったうえで答弁している。

【根本大臣答弁】

職場において女性にハイヒールやパンプスの着用を指示すること、これについては、今、ハラスメント、パワハラっていう観点からというお話でした。当該指示が社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲を超えているかどうか、これがポイントだと思います。そこでパワハラにあたるかどうかということだろうと思います。

一方で、例えば足をけがした労働者に必要もなく着用を強制する場合などはパワハラに該当しうると考えております。そこは、どういう状況かっていうこと、そしてその職場でどういう状況の中でそういうことがなされてるのかという、そこのところの判断だかなあと思います。

すなわち、「ハイヒールやパンプスの着用の指示」が「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲を超えているかどうか」がパワハラになるかどうかの基準だと言っている。

しかし、根本大臣はすでに「ハイヒールやパンプスの着用の指示」そのものは「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」だと言っているのであるから、通常はパワハラにならないということである。

そして、パワハラになる場合として例を挙げ、「足をけがした労働者に必要もなく着用を強制する場合」だと言っている。しかし、「足をけがした労働者に必要もなく着用を強制する」ことが問題であることは当たり前であって、パワハラ以前の問題である。

そこまでいかなかればパワハラではないというなら、これは奴隷労働とでもいうべきものであろう。


3 NHKと毎日新聞が根本大臣を擁護

(1)毎日新聞の暴論

ところが、毎日新聞とNHKは根本大臣の発言をまったく逆の意味に理解したようだ。毎日新聞(※)は「職場で女性のみにパンプス着用を強制することを企業に禁じるよう求める声が上がる中、5日の衆院厚生労働委員会で、根本匠厚生労働相は、状況によってはパワーハラスメントに当たるとの見解を示した」という。

※ 2019年06月05日毎日新聞「根本厚労相『パンプス強制、パワハラに当たる場合も』」による。

だが、これはいささか誤報気味と言うべきだ。前述したように、根本大臣が言うのは「足をけがした労働者に必要もなく着用を強制する場合など」である。これは、「女性のみにパンプスを強制すること」とは質が違う話である。

怪我をした労働者に怪我を悪化させるようなことを必要もなく指示するというような、極端な例を大臣が挙げていることを隠しておいて、「状況によってはパワーハラスメントに当たる」との見解を示した(下線強調:引用者)」などというのは、誤報としか言いようがないのではなかろうか。


(2)NHKのフェイクとでもいうべき報道

NHK(※)の記事は、さらにすさまじい。根本大臣の答弁の中から都合のよい部分だけを切り抜いて紹介し、そこから毎日新聞と同じ結論を導き出しているのだ。

※ 2019年06月05日NHK「女性の職場でのヒール着用『パワハラになりうる』厚労相」による。

答弁のうち、「署名を受理した。一人一人の労働者が働きやすい就業環境の整備は大変重要だ」、「それぞれの業務の特性があるので、社会通念に照らして、業務上必要、かつ相当な範囲でということなんだろうと思う。パワハラにあたるかどうかは、その範囲を超えているかどうかがポイントだ」という、ある意味で抽象的な美辞麗句の部分だけを切り抜いているのである。

そして、根本大臣は「ハイヒールなどの着用を求めることは社会通念に照らして、業務上、必要で、相当な範囲にとどまるべきで、それを超える場合にはパワーハラスメントになりうるという認識を示しました」というのである。

これでは、意図的なフェイクといわれても仕方のないレベルであろう。根本大臣答弁の最も重要な部分である「女性にハイヒールやパンプスの着用を指示する、義務付ける。これは、社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」と明言しているところを省いているのだから、意味が完全に逆転している。

また、NHKは、根本大臣がパワハラの例として挙げた「足をけがした労働者に必要もなく着用を強制する場合」も用心深く除いている。

このような報道をするようでは、御用マスコミと呼ばれてもしかたがないのではなかろうか。


4 意識を変えられない古い大臣でよいのか?

(1)根本大臣の発言の問題はどこにあるのか

ア 人権感覚の欠如

根本大臣の発言の最大の問題は、人権感覚の欠如である。ハイヒールやパンプスの強制を止めて欲しいと言っている女性たちの、主張の理由は靴擦れや外反母趾などの怪我や健康上の理由なのである。

それに対して「女性にハイヒールやパンプスの着用を指示する、義務付ける。これは、社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」と言い切る根本大臣の人権感覚のなさである。

仕事のために怪我をすることが「業務上必要かつ相当な範囲」であるという社会通念が日本には存在しているのだろうか?それとも、大臣の頭の中には、そういう社会通念が根強く存在しているのだろうか?

イ 女性の能力活用についての勘違い

次に問題なのが、女性の職業能力についての勘違いである。根本大臣は女性がハイヒールやパンプスを履くことが職業上必要だと考えているようである。すなわち、女性の職業能力とは、外見が重要な要素だと考えているわけだ。

確かに、極端に礼儀を失するような服装をすることは問題かもしれない。しかし、TPOさえわきまえていれば、踵の低い幅広靴を女性が履いたとしても、いまどき誰も気にしないであろう。むしろ、十分な専門知識があり、確実に仕事をすることの方がよほど重要である。

職業能力とは、外見ではなく知識、経験、やる気、聡明さなどなのである。また、足の痛みに耐えながら仕事をしていたのでは、職務の効率も上がらない。

はっきり言って、大臣は女性の職業能力についてとんでもない勘違いをしているのである。

ウ 他人の痛みを理解できない人物が厚生労働という悪夢

そして、最大の問題は「厚生労働」という、「人」についての職務を預かる大臣が、人の痛みを理解できない人間だということである。

「当該指示が社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲を超えているかどうか、これがポイントだと思います。そこでパワハラにあたるかどうかということだろうと思います」というが、それは違うだろう。

ポイントは、パワハラをされる側の「人」の「痛み」や「辛さ」ではないのか。「業務上必要かつ相当な範囲」なら、女性たちがどれほど辛い思いをしていてもパワハラに当たらないとでもいうのだろうか。

大臣がパワハラの例として「例えば足をけがした労働者に必要もなく着用を強制する場合」を挙げるのは、女性の痛みや辛さが理解できていないからである。怪我さえしなければ、辛い、痛いなどは我慢しろという意識があるからである。

そんな当たり前のことも理解できず、女性にはハイヒールを履いて欲しいという頭の古いオジサンの"願望"を、大臣と言う公的な仕事に持ち込まれては困るのである。

安倍・菅自民党・公明党政権が悪夢であることの証拠が、またひとつ増えたようである。


(2)安倍政権は終わらせる以外にない

今回の根本大臣の答弁は、図らずも大臣が"古いオジサンの意識"に縛られた人権意識に欠如した人物だということを露呈したようである。こういってはなんだが、女性たちに辛い思いをしていても、ハイヒールを履いて欲しいという願望があるのだろう。

だが、こんな頭の古い、女性の職業能力についての理解がない人物が大臣をしているようでは、女性が能力を発揮して活躍することなど困難であろう。人口の半分が能力を発揮できないようでは、我が国の発展は望めまい。

まあ、政権のトップが「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」と主張するような人物を「杉田さんは素晴らしい」と言ってみたり、別な議員が「セクハラとは縁遠い方々」などとツイートして炎上したりと、女性の活躍を必死になって妨げようとしている例には事欠かない。

やはり、こんな政権は終わらせる以外に、我が国の発展を図る道はないだろう。