土砂投入停止の署名


2018年の知事選の後、2019年当初に辺野古新基地の是非を問う沖縄県民投票が実施されました。

この本稿は、その際に行われたホワイトハウスへの署名を呼び掛けたものです。




1 はじめに

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筆者:柳川


(1)安倍政権による沖縄の民意無視の暴挙

本年9月30日に投開票が行われた沖縄知事選では、辺野古移設反対を公約として掲げた玉城デニー氏が、沖縄県知事選史上最高得票数を得て新知事となりました。これが何を意味するかは明らかです。沖縄県民は明確に普天間基地の辺野古移設に"ノー"を表明したのです。

ところが、安倍政権はこの沖縄県民の意思を無視し、10月17日には防衛省沖縄防衛局が沖縄県の埋め立て承認の撤回処分に対して執行停止の申し立てと不服審査請求を行いました。そして、わずか2週間後には国土交通大臣が一時執行停止を決定してしまいました。防衛省と国土交通省は同じ政権の機関ですから、同じ人間が裁判の原告と裁判長を兼ねているようなもので、茶番劇としか言いようがありません。

そして、1箇月も経たない12月14日には土砂の投入を始めました。いったん土砂を投入してしまえば、原状復帰は困難です。国土交通省が不服審査請求に対する弁明書の提出を沖縄県に求め、沖縄県が11月19日に弁明書の提出を行うなど、不服審査請求の手続きが進む中での土砂の投入は、暴挙としか言いようのないものです。


(2)国が不服審査請求を行うのは国民主権の否定だ

そもそも行政不服審査などというものは、行政による不当な処分に対して国民の権利救済をするための制度です。すなわち、強力な権力を有する国家が、不当に国民の権利を無視したり侵害したりすることがないようにするための制度なのです。これを国家(政府)が国民を抑圧するために用いるなど近代国家においてはおよそ前代未聞のことです。

最近、ある市民団体からの質問に対して、自民党の三鷹市の市会議員である石井良司氏が「我が国の主権者は安倍総理である」と言い放ち(※)ました。また、杉田議員が悪質な差別発言を行い、国民の側から抗議の声が上がったとき、安倍総理の応援団である小川榮太郎氏や松浦大悟氏は、この国民の声に対して、杉田議員の言論への抑圧だと批判しました。

※ 三鷹市の自民党の市議会議員である石井良司氏は、市民からの「我が国の主権者は誰か」との質問に対し、主権者は国会の長であると答えた。国会の長とは誰かとの再質問に対し、安倍晋三だと回答している。もちろん安倍総理は行政の長であって国会の長ではないし、しかも主権者はあくまでも国民である。行政の長は、主権者としての国民の僕であると同時に、国民に対峙する面を有しているのである。安倍晋三が主権者の訳がなかろう。なお、この石井議員と市民とのやりとりは、ピープルパワーTVの「え~ 主権者は安倍晋三 ? Good Bye バビロン 三鷹自民党 #安倍晋三 #主権者は誰に音声が記録されている。

冗談ではありません。日本国憲法を読めば明らかなように、我が国の主権者は、安倍総理ではなく我々国民です。また、言論の抑圧とは、権力を有する側が国民の声を封殺しようとすることを言うのであり、権力を有する側の杉田議員の発言に対して抗議の声を上げるのは、まさに国民の言論の自由の発露であって言論への抑圧などとは無縁です。

政府が、不服審査請求を行ったのは、まさに石井議員や小川氏の主張と同じレベルの低劣な話であり、国家と主権者の立場を逆転しようとするものです。こんなことが許されるなら、国家は国民に対して好き放題なことができてしまうでしょう。まさに、国民主権を否定して"安倍主権"にしようとしているとしかいいようがありません。


(3)安倍政権の暴挙は、国民の利益を損なう

安倍政権は、この12月に入ってからだけでも、外国人の人権の問題に背を向けて強行した出入国管理法の改悪、国民の生命・健康を脅かすのではないかとの危惧を持たれている水道法の改悪、「護衛艦」いずもの空母化をめざす防衛大綱の閣議決定など、いずれも反対派の声に耳を貸そうとせずに推し進めました。しかし、主入国管理法、水道法、防衛大綱など、いずれも日本という国の在り方や、外国人の人権、国民の生命健康に重大な影響を与えるものです。

このような国の重大な問題に対して、十分な議論もなしに国会で可決してしまったり、また、出入国管理法の検討に当たっては技能実習生に関しての重要な情報を隠したり、幼児性丸出しの政権が次々と重要な事項を決めていくのは、我が国にとってきわめて危険な状況であるとしか言いようがありません。

そして、安倍内閣は、ますます国民の声を聴こうとしなくなっているようです。河野外相が記者会見において、日ロ関係についての記者からの質問に対して「次の質問をどうぞ」と無視したのもその表れでしょう(※)。三鷹市の石井議員と同様、安倍総理とその閣僚は自分が主権者だと思っているのかもしれません。

※ 河野外相は、2018年12月11日の記者会見で、記者の質問を4回続けて無視した。翌12日付朝日新聞によると、菅義偉官房長官は、河野外相のこのような態度に対して対応を指示したり改善を求めたりはしなかったという。

最近、行政が障碍者雇用率の水増しをしていたことが話題となりましたが、安倍総理は幼児性人格障害として障碍者の一人に数えられていたのではないかと皮肉を言いたくなるほど、安倍総理のやることなすこと、子供が駄々をこねているような印象を受けるのは私だけでしょうか。

自分を積極的に肯定してくれる人間の言うことだけを聞き、対立する側の人間の声は聞こえないようです。これでは、政治を誤って国民の利益を大きく損なうのではないかと思えます。


2 辺野古への土砂投入を止めさせよう

(1)辺野古への土砂投入のために何ができるか

しかしながら、政治を変えるためには、選挙のみならず様々な方法があり得ます。小選挙区制という欠陥法のために国会で多数を占めてしまったこの政権の暴走を止められないようでは、我が国は近代的な主権国家に値しないというべきです。

先ほども述べましたが、杉田議員が悪質な差別発言を行い、これに対して国民の側が抗議の声を上げたとき、藤岡信勝氏、八幡和郎氏、森清勇氏、小川榮太郎氏、松浦大悟氏など安倍政権の擁護者たちは、批判の声を上げた国民に対して"杉田議員の言論への抑圧だ"などと罵詈雑言を加えました。これは逆から言えば、厚顔な政権もやはり国民に批判の声を上げられるのは嫌だからなのでしょう。

すなわち、国民が声を上げることには大きな効果があるということを、安倍政権の擁護者たちは我々に教えてくれているわけです。政権が国民の権利を損なうようなことをするのであれば、国民は声を上げていくことが重要であるということが、安倍政権の擁護者たちの態度からも分かるわけです。


(2)米国のホワイトハウスへの署名

米国への署名サイト

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国民が声を上げる手段の一つとして、現在、米国のホワイトハウスのサイトにおいて、辺野古への土砂投入の一時停止を求める署名活動が行われています。これは、ハワイ在住の日系米国人のロバート・カジワラ氏が12月8日に始めたものです。

この署名の制度はオバマ大統領時代に創設されたもので、13歳以上であれば外国人で米国外に居住していても署名することが可能なので、日本人でも署名は可能です。

10万人集まれば米国政府は、60日以内に内容を検討し、何らかの説明を行う法的な義務が生じることとなります。

この署名は18日の午後3時過ぎに10万を突破し、本稿執筆時点ではすでに16万近い人数となっていますので、米国政府に説明を求めるための数としては十分なのですが、さらに、数が多ければそれだけ大きな効力があることとなります。トランプの忠実な僕である安倍総理に対しては、これも効果的な方法だといえるでしょう。


(3)署名の内容

署名の表題は「Stop the landfill of Henoko / Oura Bay until a referendum can be held in Okinawa(辺野古 / 大浦湾の埋立てを、沖縄の住民投票まで停止されたい)」となっています。すなわち、辺野古移転なしで普天間の返還を求めるものではありませんが、住民投票まで埋立てが停止されれば、その後は住民投票の結果を尊重するということになろうかと思います。

具体的な内容は次の通りです。

Stop the landfill of Henoko / Oura Bay until a referendum can be held in Okinawa

辺野古 / 大浦湾の埋立てを、沖縄の住民投票まで停止されたい

President Trump:

トランプ大統領:

Please STOP the landfill work in Okinawa until a democratic referendum can be held.

沖縄の埋立て作業を県民投票まで停止してください。

Earlier this year the Okinawan people overwhelmingly elected Gov. Denny Tamaki on the premise of STOPPING the construction at Henoko / Oura Bay.

本年、沖縄の人々は、辺野古 / 大浦湾における建設の中止を公約した玉城デニー知事を大差で選びました。

The Bay is a CRUCIAL part of the Okinawan ecosystem.

湾は沖縄の生態系にとって重要な部分なのです。

However the Japanese government & U.S. military have so far IGNORED the democratic will of Gov. Tamaki & the Okinawan people.

しかしながら、日本政府と米国軍隊は玉城知事と沖縄の人々の民意を無視しています。

The irreversible part of the construction is set to begin on Dec. 14 (JST).

現状に戻せなくなる工事は12月14日(日本時間)に開始されます。

If this is allowed it will surely incur strong anti-U.S. sentiment among Okinawans & will forever strain U.S.-Okinawa relations.

もし、このようなことが許されるのであれば、それは確実に沖縄県民の強い反米感情を招き、米国と沖縄の関係を永久に歪ませることとなるでしょう。

Please order a HALT to the construction & ensure that democracy prevails.

工事の中止を要請(オーダー)し、民主主義を優先させてください。

Please show Okinawans that America is indeed an honorable and GREAT nation.

アメリカが真に尊敬すべき偉大な国家であることを、沖縄県民に示してください。


(4)署名の方法

米国への署名サイト

図をクリックすると拡大します

署名は、2019年1月7日まで行うことが可能です。署名するにはメールアドレスが必要となりますが、時間は1分とはかかりません。先ほどのURLをクリックして、ブラウザに表示される画面右側の3つの枠に、名、姓及びメールアドレスを入力するだけです。

入力したら、その下にある「Sign Now」と書かれた緑色のボタンをクリックしてください。

しばらくすると米国政府からメールが送付されてきます。そのメールの中に「Confirm your signature by clicking here.」という部分がありますので、そこをクリックすれば署名は完了です。これをしないと署名としてカウントされませんのでご留意ください。

最後に、もう一度、ホワイトハウスのサイトを閲覧して、「You’ve successfully signed the petition below.」と表示されていることを確認しましょう。


3 ホワイトハウスへの署名の効果

ホワイトハウスへの請願署名をしたからと言って、それだけで辺野古への土砂投入が止まるとは限りません。しかし、この署名は世界的にも注目されるようになっています。この署名の数がさらに多くなれば、さらに世界の注目を集めることとなるでしょう。12月22日の琉球新報によれば、米ロック界のヴァン・ダイク・パークス氏や日本の脳科学者の茂木健一郎氏なども署名したとSNSやブログで報告したとのことです。

この署名活動には多くの賛同があり、我が国の芸能界のローラ氏やりゅうちぇる氏も呼び掛け、一般のマスコミも報道をするようになってきています。

このような署名などの積み重ねが、政治を少しでも動かしてゆくためには重要であると考えます。ぜひ、署名についてご検討いただければと思います。