労働衛生コンサルタント試験 2019年 労働衛生一般 問25

労働衛生保護具(全般)




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合格

 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問25 難易度 労働衛生保護具に関する基本的な問題である。本問は落としてはならない問題である。
労働衛生保護具(全般)

問25 労働衛生保護具などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)保護クリームは作業に就く前に塗布し、作業終了とともに完全に洗い落とすべきものである。

(2)耳栓には低音から高音まで遮音する1種と、主として高音を遮音し会話域程度の低音は比較的通す2種とがある。

(3)レーザーを取り扱う作業では、レーザー用の保護めがねを使用する必要がある。

(4)ふく射熱の著しい作業場では、化学防護服を防熱衣として使用する。

(5)鉛等有害物を含有する塗料の剥離等作業を狭隘で閉鎖された作業場で行う場合、労働者に電動ファン付き呼吸用保護具等を着用させる。

※ JIS T 8161:1983 が JIS T 8161:2020に改訂されたため、(2)は意味のない肢となっている。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。保護クリームは作業に就く前に塗布し、作業終了とともに完全に洗い落とすべきものである。ただし、保護クリームは保湿の役には立つが、皮膚保護対策としては限界がある。

あくまでも、皮膚への接触防止のため、保護メガネ、保護手袋で保護されていない皮膚部分に塗布(※)するべきものである。

※ 職場のあんぜんサイトの災害事例「有機溶剤を使用する作業に従事していた作業者に発生した肝機能障害」の対策の項を参照

実務においては、「職業性皮膚疾患の防止」(Safety Management December 2005)に、「保護(防護)用クリームを手に塗れば保護されるといまだに信じている企業も数社あるが、これは、このような保護クリームの性能に疑いを投げかけている多くの調査について無知なのである。HSEが次のような声明を発表し、これらの調査結果を裏付けている(※)とされていることに留意すること。

※ 「化学物質への皮膚のばく露に起因する業務上のリスクの評価と管理」(HSEブック、ISBN 0-7176-1826-9 、HSG205)によると「作業前に手に塗布するクリームを皮膚の予備的防護方法として信頼することはできない。クリームの化学物質浸透率にかかわる情報がないからである。またクリームを塗り忘れる部位がよくあるため、手全体を完全に被覆することは保証できない。クリームによる防護効果がすでに完全になくなっていたり、弱まっていたりしても、必ずしもそれが明らかにはならない。これらの理由により、作業前に手に塗布するクリームは個人用保護具と見なしてはならない。クリームは手袋と同水準の保護を提供できないため、適正に選定した個人用保護具の代用として使用してはならない」とされている。

(2)意味のない肢である。出題当時のJIS T 8161:1983には、表1に耳栓の分類として「低音から高音までを遮音するもの」(1種EP-1)と「主として高音を遮音するもので、会話域程度の低音を比較的通すもの」(2種EP-2)の2種類が定められていた。このため、出題当時は正しい肢であった。

JIS T 8161:1983 がJIS T 8161:2020に改訂され、耳栓の製品ごとの性能の測定方法が規定されるようになり、それぞれの現場の騒音の状況に応じた製品が選択できるようになった。このため、現在では意味のない肢となっているが、現実には1種、2種の表示のある製品の販売も行われており、現在でも必ずしも誤りとはいえない。

(3)正しい。「レーザー光線による障害防止対策要綱」により、レーザー機器のクラスにもよるが、レーザーを取り扱う作業では、レーザー用の保護めがねを使用する必要がある。

(4)誤り。あり得ないことである。化学防護服を防熱衣として使用してはならない。

(5)正しい。「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」において「区域内で作業や監視を行う労働者については、電動ファン付き呼吸用保護具又はこれと同等以上の性能を有する空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスクを着用させること」とされている。

  1. (1):例えば、房村信雄「作業環境改善」「原則として保護クリームは、作業前に塗布し、作業後は完全に洗い落とさなければならない。また、保護クリームを塗布したことによって、有害物質の取扱いが不注意になったりしては、かえって危険である。塗布剤の効果を過信してはならない」とされている。
2019年12月08日執筆 2022年05月26日改訂