起動しないパソコンのデータ救出法




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パソコンを見てショックを受ける

Windowsパソコンが起動しなくなったとき、リカバリをするとデータが失われてしまいます。

リカバリの前にデータを救出する必要がありますが、本稿ではその方法を解説しています。




1 最初に(パソコンが壊れた)

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ある日突然、愛用のNEC製ノートパソコンが起動しなくなった。無理はないかもしれない。なにしろ、5年以上使用しているものである。Windowsは8.0だったものを8.1、10とアップグレードしている。とくにWindows10についてはメーカーの保証がない状況でのアップグレードだった。

まあ、使用していた期間を考えると故障したこと自体はやむを得ないのかもしれない。実を言えば予兆はあった。まず、動きが極端に悪くなったことがあった。タスクマネージャーで確認すると"ディスク"がほぼ100%になっているのである。これはいくつかのソフトをアンインストールしたりバックグラウンドでの動作を停止したりすることで、いったんは治った。しかし、ウイルス対策ソフトがアップデートすると、とたんに動きが悪くなり、Windowsがアップデートすると解決するという奇妙な現象を繰り返していたのである。

また、突然、スタートメニューのアイコン類の配置が乱れ、ドラッグしても動かなくなるという、ネットで調べてもあまり見かけないような不都合も生じた。

しかし、両方ともいろいろと対応することで一応は解決したこともあり、データのバックアップをとらなかったのである。

常識的に考えれば、パソコンの調子がおかしくなったときはデータのバックアップをとるというのが鉄則である。しかし、パソコンが子供との共有で、バックアップのためのデータのコピーをする時間を確保できなかったこともあり、1日伸ばしにしていたのだ。

しかし、何よりも、これまでパソコンが壊れてデータがなくなったという経験がなかったので、こんどもなんとかなるだろうと甘く見ていたことが最大の原因だったと思う。

そのような中で、ある日、パソコンの動きが悪くなったので再起動をかけてみたのである。すると、その後、ロック画面までは進んだのだが、そこから、クリックしても、Ctrl+Alt+Deleteキーを押しても、パスワードを入力する画面に進まなくなってしまったのだ。

最初に思ったのは、もし、このままデータが失われたら困ったことになるということだった。なにしろ最後にバックアップをとったのが1か月半ほど前だったからだ。

この後、データを救出するために様々な努力をしてみた。結果的には、バックアップの際に必要な確認を怠ったためにデータのほとんどを救出することに失敗した。しかし、データ救出の方法とその失敗の経験は、一般の方の参考になるかもしれない。そこでこの一連の経緯を記録の意味も含めてアップしておこうと思う。


2 とりあえず、起動させるための努力

実を言えば、パソコンが起動しなくなった時点では、それほど深刻には心配はしていなかった。ロック画面が出るのだから、少なくともハードディスクは回転しているのである。これが、メーカーのロゴが出た画面で止まってしまうようだと、かなり深刻な状況だといってよい。ハードディスクのモータが回転していない可能性があるからだ。

【参考】ハードディスクが回転しなくなったら

ハードディスクが回転しなくなったとしても、まったく絶望的というわけではない。その場合は、ハードディスクのモータを動かしてやればいいわけだ。モータは起動時に最も大きなトルク(回転させようとする力)を必要とし、いったん動き出しさえすれば、そのまま回転していることが多い。そこで、とにかく動かして、動いている間にデータのバックアップをすればよいのである。

モータを動かす方法には次のようなものがある

  • ① ノートパソコンなら、本体を空中で小さく円運動をさせるように動かすと動き出すことがある。デスクトップパソコンではハードディスクを本体から取り外して(ケーブル類はつないだまま)同じようにしてみればよい。
  • ② また、絶縁油が固まったためにモータが動かなくなっている可能性もあり、その場合はドライヤーでハードディスクの中央部を温めると絶縁油が柔らかくなって動き出すことがある。
  • ③ ①、②で動かなければ、ハードディスク本体を分解し、内部のディスクを指で動かすという方法もある。これは最後の手段であるが、ほかに方法がないのであれば試してみる価値はあろう。
  • ④ この他、同型のハードディスクが手に入るなら、基板を交換するという方法もある。ただし、これも最後の手段に近い。

今回の場合、ハードディスクは回転しているようなので、そこまで深刻ではない。なお、データはなくしてもパソコンだけ救いたいというのであれば、リカバリをすればよいので簡単なことなのだが、Windowsはリカバリをするとデータも消えてしまうという、あまりユーザーにとってありがたくない仕様になっている。それだけは避けたいところである。

昔のパソコンであれば、Windowsやソフト類のCD-ROMが添付されていたので、ハードディスクを交換してWindowsなどをインストールすれば、後でゆっくりと元のハードディスクからデータを救い出せるのだが、最近のパソコンでは、予めリカバリ用のCDを作っておかないと、この方法を用いることは難しい。そして、リカバリ用のCDは作っていなかった。


(1)セーフモードを試す

まずは、セーフモードで動作するかどうか試してみる。セーフモードで立ち上げる方法は機種によって異なるが、WEBかマニュアルで調べてみればすぐわかる。私の(NECの)パソコンでは、次のような方法で行う。

【セーフモードで立ち上げる方法(機種による)】

  • 1 まず、パソコンの電源を入れた後(または再起動後)のメーカー(この場合はNEC)のロゴが出たところでF2を連打すると、「BIOSセットアップユーティリティ」が起動する。起動したら、カーソルキーで「Exit」タブに移動する。なお、この時点ではWindowsは起動していないので、マウスは動作しない。
  • 2 次は、かなり分かりにくいのだが、この「Exit」の画面で、かなりの勇気が必要な操作を行う必要がある。「HDD Recovery」を選択して、"Enter"キーを押すのだ。すると「Execute HDD Recovery?」と表示されるので、「Yes」を選択して"Enter"キーを押すのである。このような表示は、かなりの疑問も感じる。
  •   私は、この操作を行うとき、説明が書かれていたNECのサイトがフィッシングではないかと疑って、他のサイトで確認してから行ったほどだ。
  • 3 すると、再びNECのロゴが現れ、運が良ければだが「オプションの選択画面」に切り替わる。
  •   私のパソコンでも、ここまでは動作した。そこで、「トラブルシューティング」⇒「詳細オプション」⇒「スタートアップ設定」と移動する。そして、「スタートアップ設定」で「再起動」をクリックする。すると再び、NECのロゴが現れてから「スタートアップ設定」が起動する。
  • 4 このスタートアップ設定画面で、メニューから「4)セーフモードを有効にする」をクリックすればセーフモードで立ち上がるのである。しかし、「セーフモード」では、外付けハードディスクを操作できず、データの救出は無理なので、「5)セーフモードとネットワークを有効にする」を選択してみた。

しかし、私のパソコンでは結果的に、「セーフモードとネットワーク」はおろか、「セーフモード」でさえ起動しなかった。


(2)システムの復元とスタートアップ修復

次に、「システムの復元」と「スタートアップ修復」を試してみる。不具合の発生の原因になると思われるようなことはしていなかったので、あまり意味はないとは思った。しかし、やってみるだけの価値はあるだろう。

基本的な操作は、先ほど説明したセーフモードを有効にする方法とほぼ同じである。異なるのは、詳細オプションの画面で「システムの復元」か「スタートアップ修復」を選ぶことである。

しかし、予想した通りではあるが、システムの復元でも状況は改善せず、スタートアップ修復も同様であった。


3 ハードディスクを他のパソコンで読み込む

(1)ハードディスクの取り外し

ここまでやってだめなら、ハードディスクを他のパソコンで読み込むという方法がある。実は、データの復旧についてそれほど心配をしていなかったのは、この方法が使えると思っていたからである。

なお、ほかに使えるパソコンがなく、LinuxというフリーのOSのCDを入手することが可能なら、LinuxのCDで起動して、CドライブのデータをUSBメディアに書き出すという方法もある。

実は、今回も、この方法を使っていれば、データの救出に成功していた可能性は高いのである。

【参考】Linuxで起動する方法

  • 1  CDは誰かに作成してもらうか、雑誌の付録などを利用すればよい。誰かに作成してもらうのであれば、まず、Ubuntu Desktop 日本語 Remixからubuntu-ja-18.04.3-desktop-amd64.iso(ISOイメージ)をダウンロードする。Windows10であれば、ダウンロードしたISOイメージファイルをダブルクリックして「ディスクイメージの書き込み」を選択する。「Windowsディスクイメージ書き込みツール」が表示されるので、書き込みたいCD-Rの挿入されたドライブを選んで「書き込みボタン」をクリックしてやればよい。
  • 2 出来上がった CD から Ubuntu を立ち上げるには、まず、データを救出するパソコンのBIOSで、ブートするドライブの順番を、CD/DVDがHDDよりも先に来るようにする。その方法は、パソコンによって異なるので、マニュアルを見るしかない。
  • 3 次に、先ほどのCDをドライブに入れてパソコンを起動するとUbuntuが立ち上がるので、「Ubuntuを試す」を選ぶ。インストールをする必要はない。
  • 4 しばらく待つとUbuntuのデスクトップ画面が開くので、「ホームフォルダ」のアイコンをクリックし、救出したいデータの入っているフォルダを開く。次に、USBに適当なメディアを挿入すると自動的にそのフォルダが開くので、ドラッグアンドドロップで、必要なデータを移してやればよい。

ノートパソコンのハードディスクを外すのは簡単である。デスクトップパソコンの場合もそれほど難しくはないが、ケーブル類を外す前に、どのように繋がっていたかを記録しておくとよい。

NECのノートパソコンはハードディスクを外すのが難しいなどといわれることがあるが、実際にやってみると意外に簡単である。最近はハードディスクをSSDに換装することが多いので、簡単に外せるようになっているのだろう。

外し方は、まずパソコンの電源を外し、裏向きにしてからバッテリーを外してしばらく待つ。しばらく待つのは内部のコンデンサが放電するのを待つためである。次に、2つあるカバーのうち、小さいほうを外してみると、ハードディスクがある。指を引っ掛けるための部品がついていたので、コネクタと反対側にずらすと簡単に外れた。


(2)ハードディスクの他のパソコンへの接続

次にSATA ハードディスクドライブをUSBに接続するツールを用いて、他のパソコンに、取り外したハードディスクを取り付ける。なお、このツールは市販のもので、パソコン部品を販売する少し大きな店なら必ず置いてあると思う。

するとあっさりと外付けドライブとして認識された。データも特に破損していないようである。まずは、一安心だ。

ここで、マイドキュメントにあるフォルダにアクセスしようとすると、「許可がない」と表示される。管理者の権限でWindowsにログインしていれば、次のような方法でアクセスできる。

【外付けハードディスクのマイドキュメントを読み込む方法】

  • 1 フォルダを右クリックして、プロパティを選び、「セキュリティ」タブの「詳細設定」をクリックする。
  • 2 詳細設定で、「追加」または「変更」の青文字をクリックする。変更の場合は3を省略して4へ進む。
  • 3 そのフォルダのアクセス許可エントリで「プリンシパルの選択」をクリックする。
  • 4 ユーザーまたはグループの選択で「詳細設定」をクリックして、さらに「検索」をクリックする。
  • 5 検索結果から、今、起動しているユーザーを選択してOKをクリックする。
  • 6 もう一度「OK」をクリックする。
  • 7 基本のアクセス許可の「フルコントロール」にチェックを入れてOKをクリックする。この後、2回OKをクリックすればよい。これでフォルダにアクセスすることはできるようになる。

(3)データのコピー

あとは普通に外付けのハードディスクなどにデータをコピーしてやればよいのである。

ただ、Windowsのドラッグアンドドロップでは、フォルダとファイルの名前の文字数の合計が長いものはコピーできない。これをコピーできるようにするため、私は、フリーソフトのFastCopyを使っている。

なお、コピーの作業をしたのは夜である。コピーにはかなりの時間を要するので、就寝前にコピーの操作をして、眠ってしまった。

翌朝、パソコンを見ると普通にコピーが成功しているように見えた。いつも行っているバックアップのときと同じだったので、ここでバックアップができていることの確認を怠ってしまったのである。これが、バックアップに失敗した最大の原因だった。


4 パソコンのクリーンインストール

そして、ハードディスクを元に戻して、Windows8をクリーンインストールして初期化し、さらにWindows10にアップグレードした。さらに、ウイルス対策ソフトを入れてみたが、以前のような動作の重さもなく、スタート画面も正常になって、とりあえず、快適に使用できるようになったのである。

ところが、その時になってから、データがバックアップされていないことに気づいたのである。

原因として考えられることは、SATA ハードディスクドライブをUSBに接続するツールの不良である。子供から借りたものだったのだが、有名なメーカーのものではなかった。おそらく電源の容量が不足していて、通信が不安定になったため、途中でバックアップが止まったのだろうと思う。有名メーカーのツールを購入しておけばよかったと思ったが、「覆水盆に返らず」である。

何よりも、コピーした後の確認の不足が原因であった。

今回は、それほど重要なデータはなかったことが不幸中の幸いであった。パソコンが破損する直前に、かなり大きなコンテンツをWEBにアップしていたので、書きかけのコンテンツはなかった。また、偶然ではあるが、メールのデータについてはバックアップに成功していた。

今回の失敗は、今後の教訓にしたいと思う。


5 事後談

(1)起動不良パソコンのその後

パソコンは、いったんは快適に動き出したのだが、1週間ほどたった時に、今度は画面が乱れるようになってしまった。起動時のメーカーのロゴのときにも同様な症状が出るので、ソフトではなくハードの故障である。残念ながら、新しいパソコンを購入するしかなかった。

それにしても、故障の順序が逆だったら、リカバリなどすることもなかったので、データは救われただろうとは思ったが、考えてみてもしようのないことである。


(2)新パソコンの不具合

今度は、有名メーカー製の(BTOに近い)デスクトップパソコンを選んだのだが、これにもおかしな不具合が出るのである。まず、Officeにサインインして認証手続きの操作を行っても、認証ができていないようなのである。これは、マイクロソフトのサポートに電話を入れたところ、認証のためのファイルが破損していることが判明し、解決した。

また、Wordが10分おきくらいに動作を停止するのである。しかもWordの再起動した後のファイルを見ると、各ページの最下部にあるはずの脚注がなぜかすべて文章の最後に移動している。

マイクロソフトサポートに電話を入れみたところ、古いWordで作成したファイルだとそのような現象が発生する可能性があるとのことだった。

その場合の解決策として、「互換性モード」の変換をする方法と、新たに作成したWordファイルで、不具合のでるファイルを読み込むという方法の2つを聞いた。両方とも、やってみたのだが動作を停止する間隔は伸びたものの、やはり不具合は発生するのである。それならと、古いファイルをテキストファイルに落として、これをWordで読み込んでみたのだが、あまり効果はなかった。

そこで、Officeをアンインストールして、再インストールしてみたところ、その後はこの問題は発生しなくなった。

どうやら、マイクロソフトの問題ではなく、メーカーの側がOfficeをインストールした時に発生した問題だったようだ。

また、このパソコンを購入した時に、同じメーカー製のディスプレイも購入したのだが、そのディスプレイに添付されていた「HP My Display」というソフトをインストールしたところ、パソコンの起動後にこのソフトが必ず動作を停止するのである。

こちらは、マイクロソフトに尋ねるようなことではないので、メーカーに問い合わせをしたところ、そのソフトは私のパソコンでは使用できないという回答が返ってきた。だったら何のためにソフトを添付しているのかと思ったが、BTOだと、そういうことはよくあることなのだそうだ。本当だろうかという気がしないでもない。





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