スレッド:経皮吸収の蒸気について
経皮吸収の蒸気について 投稿者:急ごしらえ 投稿日:2017/08/17(Thu) 19:17:47 No.98
お世話になります。質問です。

経皮吸収の有害性がある場合、一般的には直接の皮膚接触等を避けなければならないことは分かるつもりです。

では、経皮吸収の気体状態(有毒ガスの)のときの有害性は
直接接触と比べてどれぐらいのリスク低減と考えてよいのでしょうか?

Web検索で見つけた労働研究所の多田治氏の論文(1978)の最後には
「なお,有機溶剤蒸気の経皮吸収について,一般にその
程度は小さいと考えられているが,未だ資料に乏しい。」

という記述は見つけたのですが
なにぶん、古いですし
その後の知見等があればご教授願いたいです。
(当方、化学に疎いです)

本質問のきっかけは
 一般的に防毒マスクの着用が難しいとき
 短時間であれば仮に呼吸を止めて作業をすれば
 経皮吸収の有害性の程度はどれぐらい軽減できるのか
 を知りたいと考えたからです。

よろしくお願い致します。



Re: 経皮吸収の蒸気について 投稿者:柳川行雄 投稿日:2017/08/17(Thu) 20:22:22 No.99
申し訳ありませんが、ご質問の趣旨がよく分かりません。従って、的外れになるかもしれませんが、3点だけ回答します。

なお、これは私の受けた印象ですが、労働衛生対策をとる上で、やや問題のある方向での検討をしておられるように思えます。

失礼ながら、もし現実の工場で化学物質へのばく露防止対策を担当されているのであれば、きちんとした機関の行う基礎的な研修を受講されることと、ばく露防止対策について専門家に相談をされることの2点を強くお勧めします。


1 

防毒マスクの着用が難しいからといって、(たとえ短時間でも)呼吸を止めて作業をするようなことはしてはなりません。
あくまでもそれを前提としてですが、呼吸を止めたからといって、経皮ばく露のリスクが低下することはありえません。

2 

有機溶剤について、液体に直接触れることと、蒸気に触れることではどの程度、経皮ばく露のリスクが異なるかということについて、

これは状況にもよると思いますが、一般には液体に触れるほうがリスクは高いでしょう。

ただ、そのレベルがどの程度かを示す実験結果や論文は見たことがありません。また、そもそもそのようなことを比較してもあまり意味はありません。それぞれ個別の状況について、対策をとる必要があるかどうかを判断することが必要です。

3 

経気道ばく露と経皮ばく露で、健康影響を受けるリスクは経気道ばく露の方が高いということは定説になっています。多田先生の論文はそのことを指摘しておられるのだと思います。

福井県の膀胱がん事案でも、調査の過程で、経皮ばく露だけでこのような障害が起きるとは考え難いとの感想を持たれた専門家もおられるようです。

ただ、そのことは経気道ばく露さえ対策を取っておけばよいということを意味しません。少なくとも法令に基づく経皮ばく露を行う必要があります。

Re^2: 経皮吸収の蒸気について 投稿者:急ごしらえ 投稿日:2017/08/18(Fri) 15:51:00 No.101
ご回答ありがとうございます。

想定は、皮膚への直接接触を避ける対策は実施した上で
吸入のみを排除する対策(短時間少量なので息を止めるとか、
風上での作業などで)をすれば防毒マスクを使用しなくとも
現実的な対策かなとの素人考えです。

ただし、蒸気の経皮吸収の危険度が分からず、先生なら
最新情報をご教示頂けるのではと思いました。


実際には 屋外、建設業の水道用塩ビパイプの接着工程で
有機溶剤業務の適用除外レベルを想定していました。
これらの作業は実際に何度も目にする機会はあったのですが
防毒マスクを装着している現場は見たことも聞いたこともない
というのが実態です。
しかし、リスクアセスメントを実施してみると
SDSには有機ガス用防毒マスク、不浸透性手袋、有機溶剤対応型ゴーグル
長袖作業服 等の記載があり
この中で 防毒マスク着用の対策徹底のハードルは決して低くない
という意見が相次ぎました(CRAの社内講習会にて)

福井県の膀胱がんの件は厚労省の報告書を今回再確認いたしました。
それによると、やはり直接接触の可能性が高いということだと思います。しかも工場内での定常的な長時間作業だと思いますので
建設業の場合とはちょっと違うのかなと思いました。

当然、タンク内作業の場合や塗装作業などで換気が悪く長時間等であれば全体換気+適正な保護具着用はマストかなと思いますが

具体的には エスロン接着剤№83Sホワイト 1ヵ所あたり1.5g
1回10秒程度 1時間に40か所程度 1日最大320か所 年間最大20日
程度なので
 十分に 有機則の適用除外レベル(労基署からの認定は得られるものとして)と考えていました。

いずれにしても、本件の論文やデータは存在しないということが
わかりましたので
安全サイドの対策となるよう指導していきたいと考えています。

当社は建設業関係団体には一切所属しておらず、
またWeb等情報を探しても建設業での対策の実態が見えてこず
「現実どう指導・徹底すればよいのか非常に迷っている」状態です。

この辺りの参考情報などの紹介が頂けると
有難く存じます。

ご回答ありがとうございました。




Re^3: 経皮吸収の蒸気について 投稿者:柳川行雄 投稿日:2017/08/19(Sat) 11:24:44 No.102
詳細な情報のご提供、ありがとうございます。

ご使用しておられる接着剤について、積水化学が公開しているSDSを見てみました。
有害性はそれほど低くはないようですが、屋外であることと、使用量がそれほど多いとは言えない(とはいえ、0.5kg/dayですから、かなりの量ではあります)ことを考慮すると、経気道ばく露のリスクはそれほど高くないようには思えます。

しかし、シクロヘキサンが20~30%含まれており、この管理濃度が20ppmで、接着剤そのものの発がん性区分と生殖毒性区分が2ですから、屋内用の簡易なリスクアセスメントツールでアセスメントを行えば、リスクは高いという結果になると思います。

安心のためには(「息を止める」というのは、やや過激です)、別な方法できちんとリスクを確認しておく方がよいと思います。

典型的な作業を行うとき、個人サンプラー(パッシブ方式のバッジ)を作業者(複数)につけてもらい、これを分析機関に送付して分析すると、1件当たり数千円程度の費用で分析できます。
そしてそれらの測定結果の「平均値+(3×標準偏差)」の値が、管理濃度より十分に低ければ、この作業についてのリスクは低いと判断するという方法が、現実的な方法の中では最も理想的ではないかなと思います。

なお、サンプラーの着用の方法(必ず8時間着用)や、サンプラーをつけてもらう作業者の数をどの程度にするかについては、予め分析機関に尋ねておいた方がよいと思います。

サンプル数にもよりますが、数万円程度のコストになります。安くはありませんが、CSRを考えると、この方法でリスクは低いということを確認しておけば、安心できるのではないかと思います。


なお、建設業の化学物質のリスクアセスメントについては、建災防が解説書を公表しています。

https://www.kensaibou.or.jp/data/pdf/leaflet/chemical_substance_handling_work_risk_assessment.pdf

ただ、これは簡易なシステムの解説なので、これを用いると、御社の場合、ややリスクが高めに出るかもしれません。


また、経皮ばく露防止対策としては、適切な保護手袋の着用をお勧めします。
Re^4: 経皮吸収の蒸気について 投稿者:急ごしらえ 投稿日:2017/08/19(Sat) 17:44:28 No.103
ご回答ありがとうございました。

建災防の資料は(建設業におけるある意味唯一の公な解説書だと思っています)様式など社内的に大いに参考にさせて頂いています。

あとは、○島○設さんの講習会資料や○菱令○さんのSDS資料などは
拝見したことがあります。

BIGDrは(有料になっても)継続して利用登録していますが
利用実態はほぼ皆無です。(CBは使い物にならないと考えています)

ですが、一度やってみようかと考えていたことは事実です。

また社内の衛生管理者(作業環境測定士)に実際に測定するときは
よろしくとも伝えてあり、快諾はいただいていますので
その方向での(安心)対策も進めていきたいと考えています。

> また、経皮ばく露防止対策としては、適切な保護手袋の着用をお勧めします。

貴重なご助言ありがとうございました。






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